20230406
ムツゴロウさんが亡くなった。八七歳だった。わたしは子どもの頃から彼をテレビで見ていたので、もう一〇〇歳くらいにはなっていると思っていた。ライオンに右手の中指を食いちぎられたなど、話題に事欠かない野性的な人だというイメージだったが、追悼記事や彼を偲ぶ人々のコメントを読むとかなりインテリジェンスに溢れた人だったようだ。人はイメージではなにも分からないのだなと改めて思った。驚いたのは、戦時からバルザックやプーキシンを愛読していて(しかも原著の蔵書が書棚に並んでいて二重に驚いた)、小説も執筆していたことだ。そんな文学青年が結婚と子どもの誕生を経て、ある時子どもが虫に刺されて泣いたということから彼らに自然の中で過ごす必要性を感じたそうだ。北海道への移住、ムツゴロウ王国の誕生、三億の借金……波乱に見える人生でも最後までにこやかな笑顔はわたしがブラウン管の奥に見たそれそのままだった。彼のエッセイも面白いらしいので、ぜひ読んでみようと思った。合掌。