20240107

 朝方から雨が降ったが、午前中には止んで曇りがちな空模様だった。小川和也監督の映画『Pink SUBARU/ピンク・スバル』を観た。今まさにイスラエルによる虐殺が行われているテルアビブとイスラエルとパレスチナ国境近くのタイベを舞台にした日本制作の映画。とは言え、主人公はじめ登場人物はパレスチナ国境近くの貧民街にルーツを持つイスラエル人という設定で話す言語もヘブライ語やアラビア語だ。ただ、主人公はテルアビブのすしレストランのシェフで日本語も嗜む程度に話す。日本人の俳優も出演していて英語と日本語とイスラエルが混じる会話も交わされる。主人公がスバルのレガシィを納車し、翌日盗まれることから話は始まる。妹の結婚式を四日後に控え、新車で乗りつける予定だったが一日で絶望する。妹も見かねて車が発見されるまで結婚式はしないと花婿に宣言する。主人公は盗難車のディーラーである友人たちと裏ルートで盗まれた新車を探すコメディ。
 一〇年以上前に公開された映画なので、もちろん現在とは随分状況が違うが、イスラエルによる民族浄化政策はずっと行われていたわけで、印象的だったのが、物語の後半にパレスチナの国境を超える時に、移民に来たイスラエル人を装えば大丈夫だとユダヤ教のキッパーを被る場面で、カジュアルにそういう会話が出てくるところにリアルさがあった。また、小市慢太郎が演じる日本人の男はパレスチナの給水塔建築支援の事業をやっていて、二〇一九年にアフガニスタンで銃撃され殺された中村哲医師のような日本人を想起させた。もちろん、ここにはそういった政治的描写は全くない。それでもそういう文脈を読み取ってしまうほどの悲劇が続いているときに何ができるのか、改めて考えた。そして、エンディングテーマに流れる谷村新司の「昴」がやはりいい。彼も昨年亡くなってしまったことを思うと、時の流れを感じる。

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