20231231
「今年の汚れ、今年のうちに」というフレーズが今も通用するのか、よく分からないが、この時期には本当に刷り込まれるほどにクイックルワイパーのテレビCMで聞いたフレーズだ。別にその言葉に触発された訳ではないが、大晦日なので部屋を掃除した。窓の外の汚れも落とすと、野外でどれだけ汚れに晒されているのか、思い知る。もちろん、部屋の中だって汚れる。それは身体が毎日、細胞単位で生まれ変わっているという科学的見地や蜘蛛や蠅やゴキブリなど小さな昆虫たちが同じ空間で共存しているという自然の摂理などを人間の認知に改めて知らしめる。もちろん、そんな小難しいことを考えながら掃除などできない。無心になって作業を進めるのが一番であって、住職の一日が掃除から始まるというのは雑念を追い払うにおいても、とても理にかなった修行なのだろう。先人の知恵とはよく言ったものだ。
掃除を終えると、外に出る。三が日を前に人出は多かった。わたしも年始用にスーパーで買い物を済ませて少し小説などを進める。帰って、トッド・フィールド監督の『TAR/ター』を観た。世界的な女性コンポーザーとして名を馳せていくケイト・ブランシェット演じるリディア・ターが、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団とのマーラー公開録音でぞの名声の絶頂を極めていく。その一方で、かつて性的関係を強要しそれを拒否した教え子が自殺したことを知り、眠れなくなる。教え子が業界で働けなくなるよう関係者に送った証拠となるメールを削除するよう秘書に伝えていたが、彼女との関係も副指揮者指名問題でこじれる。やがて問題は彼女の勤務する音楽大学に知れることとなり、彼女の人生は転落していく。猜疑心で破滅していく様子をケイト・ブランシェットが見事に演じている。特に、前半で生徒とポリコレ的論争を行う場面が秀逸だった。そして、結局彼女の本質が徐々に明らかになってくことで見事にあのシーンが伏線として回収されていく構成も良かった。
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