20241124

 朝晩はずいぶん冷え込むようになったが、日の照る時間は少し暑いくらいに陽気で着るものに困る天候だ。とは言え、手足がかじかんで、朝布団から出られないくらいに寒くなるとこの時期がとてもありがたかったと思うのだろう。人はないものについていくらでも欲望するものだ。
 フジファブリックの「ないものねだり」という曲がある。いまは亡き志村正彦のメロディが切なく、生まれてきたことに対する「ないものねだり」のやるせなさを自嘲気味に揶揄した歌詞も秀逸だ。わたしは彼が生きているときは端から見るようにフジファブリックを熱心に聴いていなかったが、彼が亡くなってから随分と経ってロンドンにいる時、邦楽が凄く聴きたくなる時期があり、その時にまとめてフジファブリックのアルバムをiPod――書いていて思ったが、あの機器を知っている人の方が今や少ないのではないか?――に入れて道すがら聴いていた。同曲を収録したアルバム『CHRONICLE』がリリースされた二〇〇九年七月の四ヶ月後、十二月二十四日に志村は急死した。奇しくも志村の遺作となったこの作品にロンドンにいたわたしは救われた面がある。今年で彼がなくなって十五年が経つ。それでも彼の遺した楽曲はこうやって今日も誰かを救っているのだろうし、これからもそれは変わらない。それだけが救いである。

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