20230128

 雲の多い天気。相変わらず寒い。今日は読書会で、フォークナー『八月の光』(黒原敏行訳、光文社古典新訳文庫)の第二回だった。序盤で登場人物が一つの事件を巡って勢ぞろいした感があり、前半から中盤となる6章から12章を読んでの参加だった。ここではもっぱら、〝クリスマス〟と名乗る人物の生い立ちが語られていた。彼についてはすべてが謎に包まれていて、ただ「黒んぼ」の血が混じっている白人という噂だけが先行していた。はっきりとは中盤を通してもその確証は記されないし、本人もそのことが原因で上手く社会で立ちまわれない葛藤が描かれている。アイデンティティーというのは厄介で、とくにこの物語が書かれた1930年代は南北戦争後、アメリカ南部という舞台で黒人に対する差別が色濃く残っている背景もあり、フォークナーはここに新約聖書の下地をもとに人物描写をおこなっている。読書会では、そういった背景があまり想像できずに読むのが難しい、等の意見もあった。しかし、日本においても同和問題や在日朝鮮人、華人、ミックスと人種や身分による差別の歴史はあり、今でもその問題は解決していないと言っていいだろう。学生時に韓国人や中国人の血が自分には混じっていると告白された経験があるという体験談を聞いて、やはりフォークナーは普遍的問題に立ち向かっている、と感じた。

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