20230711

 暑い一日。もう涼しくなることはなくとも、もっと暑くなると思うと気が滅入る。ブッツァーティの『タタール人の砂漠』(脇功訳、岩波文庫)を読んでいる。「タタール人の砂漠」と呼ばれる荒涼地帯の間にある国境地帯の砦に警備で赴任した青年将校ドローゴが、初めのうちはすぐに町へ帰ろうと決心するほど退屈しながら、なぜかその場所に囚われるように心変わりを丹念に描く。ドローゴが退屈するように事件という事件は何も起きずに、何十年もその場所に囚われている人物たちの一風変わった会話や、幻想的な靄の立ち込めた荒涼地帯や、砦の習慣などを事細かく書いていて、初めは退屈するものの、段々とその世界観に引き込まれていく、ドローゴの心情を読者が追体験するかのようだ。少し前に読んだガルシア=マルケス『百年の孤独』とはまた別の趣がある。小説の自由さを改めて感じる。

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