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【愛知県蒲郡市】竹島水族館と八百富神社

「あぁ、ここにしよう。」

たまたま。本当に偶然が重なって見つけた場所に、青春18きっぷ旅行の1日目に宿をとった。そこは、愛知県蒲郡市竹島町。三河湾の奥まった場所にあり、ごく近接して神社のある小さな島があり、橋を歩いて渡ることができる。

2024年の夏、行き先も宿もほとんど決めずに、青春18きっぷ4日分と衣類3日分と身の回り品、そしてカメラとパソコンを持ち、関西から東に向いて出発した。
始発から2本目の時間に大阪駅を出発したものの、京都駅を過ぎて滋賀県に入った頃には出勤・通学ラッシュと被ってしまい、全く座れず、眠れないままに大垣駅に辿り着こうとしていた。

寝不足。はっきり言えば、ほぼ徹夜であり、座れずにいたにも関わらずテンションはやや高め。
こういう時は、一刻も早く身体を休めた方がいい。体調不良での長距離移動は負担が大きく体調を崩しやすい。以前の北海道旅行で身に染みていた。
本当は静岡駅周辺まで移動して、翌日に山梨県に行きたいなという野望を持っていたがすぐにポイと捨ててしまった。
スッと取り出したのは、スマホの地図アプリ。なんてない初期からダウンロードされている普通のもの。これから乗るであろうJR沿線をスルスルと画面を手繰っていく。

「何か面白そうなものはないか。」
「聞いた事がある地名はないか。」

頭の中で想像しながら、ゆっくりと手繰っていく。
「このあたりで泊まって翌日の朝イチに出発すれば、朝日と海が見れていいな。。。。あれ?これなに?」
ふと気づいて手元の地図を確認すると、竹島水族館というランドマークと海に浮かぶ小さな小さな島、八百富神社。
「あぁ、ここにしよう。」
そうやって冒頭に戻るのである。

実をいうと、青春18きっぷでの旅は中学生の時以来である。その時は母先導の元、家族で利用したので特に長期の旅行というわけではなかった。
存在は知っていた憧れのきっぷ。一人で行けるところまで行ってみたかった。

電車が好きだ。
ひとり旅が好きだ。
街を歩くのが好きだ。
電車に長時間揺られて、毎日10キロ以上を平気で歩くような旅路になる。私のペースに付き合わすのが忍びないので、基本的にひとりで行動することが多い。
今回は、全国の友達を巡ることになったのもありがたかった。久しぶりに会えると心が躍った。

前書きが長くなってしまったが、今回は2024年9月4日から9月10日までの7日間。大阪を出発して東京までの旅先で出会った景色たちについて書き残しておきたいと思う。


【竹島水族館】

映えとは縁遠い、小さくて簡素な建物。まるで公民館のような佇まい。


愛知県蒲郡市竹島町に位置する市立の水族館。蒲郡駅より約1キロ東へ。駅からの道中もほとんど平坦で、大人であれば余裕で歩ける距離に位置する。
いわゆる【映え】とは縁遠いような、昔ながらの水族館。大型の水族館とは異なり、話題性のある人気の海洋生物は少なく、見どころが少ないように思えて、観光リストから外してしまいそうになる。それゆえなのか、その建物の中では、むしろ圧迫感なくリラックスしてゆっくりとした時間が流れていた。
都会の喧騒から離れて気ままに漂っていくひとり旅の需要とはマッチしていて、人間よりも海洋生物の方が多い薄暗い室内が心地いい。恐らく職員さんが書いたと思われる手書きの説明書の内容が、クスッと少し笑ってしまうようなコメントで、生物たちへの愛が感じられて、幸せのお裾分けをもらった気分。
アシカのショーもあるようだが、子供連れで混んでいたので今回は見送って、1時間程度ずっと展示を眺める。出口付近には実際に触れる展示などもあり、小さな子供たちが水に手を入れていた。愛知県に住む先輩も子供を連れていってよかったと話していた。大好きな先輩の言葉の通り、地元でとても愛されている優しい場所だった。


【八百富神社】

浜から橋を歩いて渡り、鳥居をくぐると綺麗な石階段が続く


竹島水族館からさらに5分ほど東へ歩いたところに、八百富神社がある小島へ通じる橋がかかっている。しかも予想していたよりもずっと立派な橋で、潮の満ち引きも関係なく渡れそうだった。橋の下を見ると、一部干潟になるほどの遠浅が島まで続いている。橋ができたのはきっと近年であろう。船が渡るには浅すぎて、昔は渡る時間は制限されていたのかもなとぼんやり想像しながら、どんどんと現実が遠くなる。
まったく調べもせずに訪れたのだが、あとでよく調べてみると、有名でご利益のある神社だったようで、日本七弁天の一つで開運・安産・縁結びの神様を祀っているそうだ。小規模な敷地内に5つの神社があり、全て回れば一度にたくさんの幸せがやってくると言われているとか。
私はというと、参拝はせず、写真を撮ることに夢中で島をぐるっと周回した。平日の昼間だったが、大学生くらいのカップル複数組と、一人で参拝している人たちがいるものの、波の声がかすかに聞こえる喧騒を離れた非日常空間を味わった。
夏の猛暑にもかかわらず、海から風が強く吹き、生い茂った木々の陰で覆われ少しひやっとした島内。日常の風景に紛れたような気がして心地が良かった。


愛知県は先輩がいるので何度も訪れているものの、蒲郡市は存在自体を初めて知った場所だった。本当に、たまたま地図で気になったから立ち寄った場所。
正直な感想は、フランクに行ってよかった。
「おっきな遊園地があるんだ。」「最高の景色が待っているんだ。」そんなキラキラしたものではなくて、普通の日常をそっと観察して、そこにある温かいものを充分に感じられた街だった。

それでは、また。
旅エッセイの1話目はここで終わり。


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