「恐れ」のいちばん奥を見る
本当にやろうと思えばできなくもないことを、「自分にはできない」と思ってしまうことがあります。
例えば「仕事を辞める!」とか、「離婚する!」とか。あるいは、そこまで人生を大きく変えるようなことではなくても、「入ったことのない店に入ってみる」とか、「今そこを通りかかった人に突然話しかける」とか、ささやかなことかもしれません。
それをやらないことに自分で納得していればいいのです。
しかし「自分には無理」と思っているにも関わらず、繰り返しそのことが頭に浮かんでくるのだとしたら……それは自分が本当にやりたいことの一つです。
「今は無理」とすぐの行動は避けていたとしても、いつかはごまかし続けることができなくなるということを覚えておいてください。いずれあなたはそれをやるのです。
今は怖いと思うけれど、いつかは行動に起こすのだとしたら……その「恐れ」ができるだけ軽い状態で、来たるべき時に行動を起こせたら、一番いいですよね。
今というときは、いずれ行動を起こす「その時」の準備期間だと思って、恐れの抵抗を取り払うプロセスを進めておくことをおすすめします。そしたら、「今だ!」というときに「エイヤ!」と躊躇いなく飛び込むことができますから。
ということで、今回は「今抱えている恐れを取り払うためのヒント」をお伝えしたいと思います。
「やりたいけどやれないこと」について有用なのは勿論ですが、もしそれ以外のことでも、人生におけるあらゆる「恐れ」を軽くするのに役立つと思います。
まずはじめに「恐れ」というものは、おおよそ玉ねぎの皮のように、複数の層が重なった構造をしています。
たいていの人は、この恐れの浅い層だけを見てそのままにしてしまうので、いつまでも恐れを恐れのまま持ち続けてしまいます。
ですが、この層を一枚一枚剥がしていくことができれば、「恐れの根源」に値するものを見つけ出し、手放すことができます。
例を出したいと思います。
「恐れ」の第一層
ここで、自分がAさんだと考えてみてください。
あなたが「プロの歌手は無理」と考えてしまう理由は何でしょうか?
考えてみたとき、例えばきっと、はじめに以下のようなものが出てくると思います。
・めちゃくちゃ売れなきゃ、歌手だけでは食べていけなそう
・そもそも、もっと歌が上手くなきゃ歌手になることはできない
・自分にたくさんファンができる気がしない
・プロ歌手たちとの競争に勝てる気がしない
・固定給が支払われるまともな仕事じゃなきゃ、仕事にしちゃいけない
・いまやってる仕事辞めろってこと?お金なくなる
・家族への説得が難しい
他にもいろいろ出てくると思いますが、ここでのポイントは「現実面に即した理由から『無理』と判断している」ということです。
現実面に即した理由……これが「恐れ」の第一層になります。
多くの人は、この第一層にあたる部分が「自分の恐れの本当の理由だ」と思い込んでいますが、実はそうではありません。
自分の深いところで恐れていることを、「現実的な判断」にくっ付けて正当化しているだけだということに気づいてください。
とはいえ、この第一層を認識するということは、「恐れ」を深く見ていく際の入り口として、とても重要です。
何かしら漠然とした不安を抱えているときは、まずこの「恐れの第一層」を見つけてみてください。見つけられたら、次のステップに移ります。
「恐れ」の第二~第三層
次は「恐れ」の第二~第三層を見ていきましょう。このステップでは、二つの層をまとめて説明します。
第二~第三層を導き出すために、ここで先ほど見つけた“「恐れ」の第一層”を使っていきます。
引き続き、先ほどの例を使って説明します。
Aさんが“「恐れ」の第一層”の中で特に恐れていたことは、以下だったとします。
ここで再び、あなたはAさんになったつもりで、「もしその『恐れ』が実現したとき起こりうる、思いつく限りもっとも恐ろしい展開は何か」を考えてみてください。 ⇒これ(展開)が第二層です。
一体どんな最悪のストーリーが思い浮かびますか?そしてあなたは、その現実を受けて何をどう感じますか? ⇒これ(感情)が第三層です。
例えば、Aさんには夫と子供がいるとします。
すると、こういう想像をしてしまうかもしれません。
自分のことじゃないのに、書いてるだけで気が滅入りますね。これが自分のことであれば、もっとしんどい作業です。
ほとんどの人は、この具体的な「最悪」を想像するのが嫌で嫌で、見ないふりや気づかないふりをします。ですが、見ないふりをしていても、この恐れは確実にあり続け、場合によっては肥大化していきます。
なので、この作業がすんごく大事なのです。
ここまできたら、第二~第三層はあと少しで解体完了です!
あなたが想像した、この「最悪な事態」における“状況~感情のハイライト”を見つけ出してください。
上記でいうと、例えばこんな風に。
とりあえずこんな感じで、「最悪の状況」と「それに伴うネガティブな感情」をピックアップできたら、第二~第三層は完了です。
いやあ、がんばりましたね。
辛くなったらお茶でも飲んで一息ついて、それから次行ってみましょう。
「恐れ」の第四層
「恐れ」の第四層は、先ほどの第二~第三層の工程より視点を高くおいて見ていきます。なので、そんなにつらくならなくて大丈夫です。
このプロセスでは、先ほどの第二~第三層でピックアップした“状況~感情のハイライト”を使って、自分の持っているビリーフ(信念、観念)を見破っていきましょう。
ひな形として、下記の○○に適切な言葉を入れるとやりやすいかもしれません。
さきほどの例を使ってやってみます。
・私の自分勝手な行いによって、夫が腹を立て感情的に私を責める。
⇒悲しい、罪悪感、劣等感…
・私が好きなように生きようとすると、私は家族に見限られ捨てられる。
⇒惨め、情けない、愛されないショック…
あくまで一例ですが、この場合、こんな風にまとめるとよいかと思います。
導き出せる観念は一個だけじゃなく、たくさん出してOKです。
出せば出すほどいいかもしれません。
また、第二~第三層の「最悪の想像」を使ってもっと細かいところを見ていくと、結構色々出てくると思います。例えば……
こんな感じです。
大切なことは、導き出したこれらの観念にはいずれも、「いい」も「悪い」もないということです。
「こういう風に思ってるから私は成功しないんだ」とか、「こういう風に思ってるからいつまでも変われないんだ」とか、ジャッジの材料に使うものではないということを覚えておいてください。
「なるほど、私はこういう風に思い込んでるんだなあ」くらいに軽く頷くくらいでよいです。
こうすることで、抱えていた思い込みをよく見えるように並べて、机の上に置いたみたいな状態になりました。
次は癒しに着手します。あともうちょっとで完了です。
第四層のビリーフ(信念、観念)を柔らかくする
掲題はあえて「柔らかくする」と書きました。
いわゆるブロックを手放すとか、書き換えるとか、癒すとか、昇華するとか、そういう工程になります。
ここで「ブロックを手放す」というような表現をすると、「手放せたか手放せてないか」というゼロかイチかみたいに考えてジャッジに入っちゃう人もいるので、ここでは「恐れを緩和する」イメージで捉えてください。
先ほど机の上に広げて置いた観念を、上から先入観なく眺めてみてください。グーグルマップで天空から現在地を見るような感じです。
すると、あなたのもっている観念の中には「それって、必ずしもそうか?」と思えるやつがあるはずです。
下記の項目とかは、「必ずしもそうか?」がわかりやすいかと思います。
あなたは今、グーグルマップで天空から現在地を見下ろしているわけですから、「そうじゃない例」だってあらゆる観測可能な地点に、いくらでも存在するとわかりますよね。
デビューしてすぐに爆売れする歌手もいるし、働かずに裕福に暮らしている人も山のようにいるし、移動しながら暮らしている人もいれば、砂漠や山の中とかで笑って暮らしている人もいます。
このように言うと、「その人たちと私は違う」と否定したくなる人もいるかもしれません。でも、その人たちとあなたは必ずしも違いますか?そこに根拠はありますか?その根拠も思い込みではないですか?
あなたという人は、いつどこにいたって、あなたの思っている「普通」にもなり得るし、あなたの思っている「例外」にもなり得ます。
かといって、すぐに「私はデビューしてすぐに爆売れする歌手になるわ!」と力んで、勢いよく決めてかかる必要はないのです。あなたはデビューしてすぐに爆売れするかもしれないし、すぐには爆売れしないかもしれないのです。別にどっちでもいいのです。
「どっちに転ぶ可能性もある。だから今この瞬間に問題はなく、深刻になる必要もない」ということをわかっていてください。
これができるだけでも、恐れが少し和らいでいることがわかると思います。
上記の項目については、自分以外の人物が関わってくる以上、「必ずしもそうか?」と思うのが難しいと感じるかもしれません。
ましてや、実際に現実に「お前が働かなければ迷惑だ」なんて言われていたら、「疑いようもなく迷惑に決まっている!だって本人が言っていたんだもの!」と思ってしまうでしょう。
ですが、先入観から離れて、もう一度よく見てみてください。
夫が「お前が働かなければ迷惑だ」と言ったのは、今ではなく、過去のことなはずです。
ということは、今この瞬間には「迷惑だ」と思っていないかもしれないし、あるいは今は迷惑だとしても明日には迷惑じゃなくなっているかもしれません。
つまりこのケースについても、どっちに転ぶ可能性もあり、深刻になる必要がないということです。そう思えるだけで、恐れは少し緩和します。
「恐れ」が「恐れ」として存在する原因の一つは、「正体が見えない」ことにあります。
漠然とした「(こうなったら)なんか恐ろしいことが起こるんじゃないか」というのを、「ああ、私はコレとコレとコレが恐ろしい。OK。」と確認できれば、少し安心できます。また、そこから別の見方や現実的な突破口を見出すこともしやすくなるのです。
ちょっと別の例を挙げると、例えば漠然と「お金がない」と思うより、「お金が何の支払いにいくら足りない」とわかっていた方が安心できると思います。
「夫に迷惑がられるのが怖い」と思うなら、その漠然とした「怖い」の内部構造を分解し確認しておけば、恐れは軽くなります。
「自己愛」の強化が、すべての層を癒す
この「恐れの緩和」のプロセスの中で、一番大事かつ最強なプロセスをここに書いておかねばなりません。
ここをばっちりやるだけで、第一~第四層までゴッソリ癒せると思います。
先ほど、第二~第三層“状況~感情のハイライト”より導き出した、下記の観念がありましたね。
実は、「恐れ」の根源を深く掘っていくと、たいていすべての場合において一番奥に「(こうであっては)愛されない」というのが出てきます。
先ほどの他の観念と合わせて見ても、「恐れ」となっている思い込みは「愛されるかどうか」という要素を色濃く含んでいることがわかります。
このような「(こうであっては)愛されない」という思い込みは、幼少期につくられることが多いです。
例えば『働かざる者、食うべからず』という観念は、子供の頃に「家のお手伝いをすると両親は褒めてくれたけど、しないでいるとそっけない対応をされた」とか、一見ささやかな経験から始まっていることもあります。
「自分は家庭という共同体の中で、歯車となって働く意思を見せなければ、親から愛してもらえない」という観念を生んでしまうのです。
「(こうであっては)愛されない」という観念は、自己愛を育むことで癒していくことができます。
こうやるといいよ~という、私のおすすめをお伝えします。
以下のことを、心に決めてください。
自分で自分のすべてを肯定します。
弱いところも、情けないところも、醜いところも、ズルいところも、汚いところも、関係ありません。すべてをどこからどこまでも全肯定します。
たとえ世界中…いや、宇宙中に極悪人認定され、ただの一人もあなたの味方がいなくなったとしても、あなた以上にあなたの情状酌量の余地を理解している人は他にいないのです。
それがわかっているあなたは、ありとあらゆる言い訳を駆使して、傷つきやすい自分自身を過剰に愛してあげてください。自分で自分の最強の味方になるのです。
そうすると、例えばこんな風に。
こうしてネガティブもポジティブも何もかもをバカ褒めまくってると、だんだんとあなたの心が安定してくるのがわかるはずです。
何をしてもバカ褒めしてくれる最強の味方がずっとくっついてるので、いままで落ち込んでいたようなことが起こってもあまり落ち込まなくなった自分に気づくでしょう。
こうなれば、今まで怖かったものが怖くなくなってきます。
先ほども書きましたが、たいていの恐れの根底にあるのは「(こうであっては)愛されない」です。
でも「無条件に自分を愛する自分」が存在する世界になったとき、その方程式は崩れ去ります。自分以外の誰に愛されようが愛されまいが、大したケガはしませんから、そうなればあなたは今まで以上に軽快に、「やってみたいこと」に挑戦できる自分になっていくでしょう。
このバカ褒め戦法は薬にはなっても毒にはなりませんから、気に入った方は普段の生活に取り入れてみてくださいませ。以上、私のおすすめでした。
ということで長くなりましたが、読んでいただきありがとうございます。
なんか尻すぼみな感じがしますが、今日はバテたので終わりです。また色々書いていきます。
もし参考になるところがあればお役立てください。