2024教養生物学1 第4週第2限 ダイナミックな細胞膜2

 対面講義の方はどうしても遅れがちになりますが、6.3膜輸送についてに入ります。

 拡散(Diffusion) は平衡状態へ向かってのランダムな動きの過程のことで、下の実験のようにビーカーの中にインクを垂らすと、水のように何も障壁がなければ最終的には均一な濃度の平衡状態になります。生体膜を通しての拡散は、その生体膜の特性(透過性)の影響を受けます。

 リン脂質二重層を物質が透過する場合、透過性はその物質の性質に依存しますが、生体膜は単純な脂質二重層ではなく、流動モザイクモデルで表されていたような複雑な構造をしています。そこでは膜を貫通しているタンパク質が重要な役割を持っています。3:07の下の動画を見てください。

下の図は人工的に作った脂質二重層の膜透過性を表しています。

 下にある右の図は透過性を縦軸を対数目盛(2違うと100倍)で表したものです。リン脂質二重層の内側は疎水性の性質を示すため、さまざまな分子に対する透過性が異なります。

 脂質二重層はもともと水の透過性が非常に高いことが分かります。それにもかかわらず下のコラムにあるように、さらに水をすばやく通過させるために動植物を問わずいろいろな生物は水チャンネルを持っていることが分かりました。

[コラム1]Aquaporin(水チャンネル)は膜の水透過性を増加させる

 細胞膜などに多量に存在するある種のタンパク質は全く機能が分からず 長い間 Major Intrinsic Protein(s),(多量に存在知る内在性のタンパク質)と呼ばれていましたが、下に示すような1992年の実験により水チャンネルタンパク質であることが証明され、アクアポリンと名付けられました。アクアポリンの発見者(Peter Agre と Roderick MacKinnon の2人)は2003年にノーベル化学賞を受賞しました。

受動輸送と能動輸送

 エネルギーを必要としないで濃度勾配にしたがった(拡散方向の)輸送を受動輸送、エネルギーを使って濃度勾配に逆らって輸送する方を能動輸送と呼びます(ナレーションは英語ですが、字幕で日本語を選ぶと日本語字幕で動画を見ることもできます。4:34と6:12の長さです。)

6.3 受動輸送について

 アミノ酸や糖質などの極性物質およびイオンなどの帯電した物質は容易に膜(脂質二重層)を通して拡散しません。しかしこれらの物質は2つの方法(キャリヤータンパク質と結合して、あるいはチャンネルを通って)で(中央が)疎水性のリン脂質二重層を受動的に(エネルギーを消費することなしに)通過します。
 制御チャンネルタンパク質は刺激に応じて開口します。刺激物質(リガンド)が結合部位に結合すると、孔が開いて親水性の極性物質が通過できるようになります。

6.4 能動輸送について

 次は能動輸送についてです。ユニポート系、シンポート系、アンチポート系に分けられます。

 動物細胞で細胞内外のイオン濃度の調節に重要な役割を持つNa-KポンプはATPの加水分解エネルギーを使って細胞内から3個のナトリウムイオンを細胞外へ輸送し、カリウムイオンを2個、細胞外から細胞内へ輸送します。

下の動画は2分弱あります。NaとKをナトリウム、カリウムというのはドイツ語由来で、英語ではソディウム、ポタシウムです。

 能動輸送にはNa-K pumpのような一次能動輸送と、それによって作られた Naイオンの濃度勾配を使ってグルコースを濃度の低い側から高い側へ輸送するような二次能動輸送があります。小腸内腔から小腸上皮細胞内部へのグルコースの取り込みなどに使われています。内腔から上皮細胞内への取り込み時には二次能動輸送、反対側での上皮細胞から細胞外への輸送は受動輸送です。

 一次能動輸送、二次能動輸送の説明は次の動画です。

6.5 大きな分子の膜を介しての輸送

 今週2限目の最後は大きな分子の細胞膜を介した出入りについてです。英語の説明ではBulk Transport と呼んでいました。細胞内で粗面小胞体表面に結合したリボソームによって合成されたタンパク質は小胞体内部に溜まり、ゴルジ体を通って分泌小胞として細胞膜まで運ばれ、細胞外へ放出されることは先週習いました。タンパク質、多糖、核酸などの高分子はサイズが大きいことや、大きく荷電していたり極性が高かったりすることによりそのままでは生体膜(細胞膜)を通過することができません。その一方で細胞はしばしば大きな分子を取り込んだり、細胞外へ分泌したりしなければなりません。そのため、小胞を介して輸送します。エンドサイトーシスエクソサイトーシスと呼びます。下は4分の動画になります。

 さらに細胞内への取り込み系として受容体依存性エンドサイトーシスという特異な方法が存在します。クラスリン小胞などが有名ですが、この講義では覚える必要はありません。

[コラム2]タンパク質の配送先を決める”郵便番号”

 細胞質で合成されたタンパク質がどこへ輸送されるかは「シグナル配列」によります。下に示すアミノ酸配列がそのシグナル配列として知られています。タンパク質のN末側にあるもの、C末側にあるもの、タンパク質の途中にあるものなどがあります。

 下のパネル12-1に示すのはシグナル配列についての研究を紹介するものです。合成されるタンパク質にシグナル配列を付加すると細胞内での局在(輸送先)が変化します。

 

 第4週第2限はここまでです。対面講義に出席しなかった人は、学習確認のために、今日、初めて知ったこと、理解できなかったこと、質問など(3行以上)をオンラインテキストに書き込んでください。

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