2024教養生物学1 第2週第2限 生物を形作る物質

 (対面講義の方は時間が足りずにかなり遅れていますが)第2限では、生物に特徴的な高分子について学びます。ここでいう高分子とは数千以上の原子から構成されるポリマー(重合体)のことです。生命を作る低分子と化学については時間の関係で省略します。

 生体(生物の体)を構成する物質の主要元素は炭素、窒素、酸素、水素、リン、硫黄(CNOHPS)の6種類で99%を占め、地球上にありふれた元素です。しかし、分子構成で見ると生物体と無機の世界の間には大きな違いが見られます。
 「有機物(有機化合物)」「無機物」の有機物(Organic substances)とは炭素を含む化合物で、元々は生物に含まれている成分を表していました。

 生物体は水が70%を占め、イオンと微量の低分子を除くと無機の世界では見られない高分子の有機化合物が占めています。タンパク質、核酸、糖類、脂質の4種類です。これら4種の化合物は分子量が大きいため、生体高分子とも呼ばれ、それぞれがより小さい構成単位である有機化合物によって構成されています。
 ほとんどの高分子は縮合反応(脱水反応)によりモノマーから合成され、加水分解により分解されます。

 生命活動はこの4種類の生体高分子がさまざまな形で反応・変化・相互作用する結果の表れであるとも言えます。

まずはじめはタンパク質について見ていきましょう。

 タンパク質は20種のアミノ酸がペプチド結合で繋がったものです。

 下の図はアミノ酸を(A)構造式、(B)球棒模型と(C)空間充填模型で示したものです。側鎖(R)の違いでさまざまなアミノ酸になります。

アミノ酸は側鎖の性質によって4種類に分類されます。

アミノ酸は側鎖(R)の違いにより多数ありますが、生物がタンパク質合成に使っているアミノ酸は20種類だけです。そのうちの8種類はヒトは体内で合成することができず、必須アミノ酸と呼ばれています。

 タンパク質を構成するアミノ酸配列を記述するのに
メチオニンーアスパラギン酸ーグルタミン酸ーアスパラギン-
と書いていくと長い配列だとすごくスペース(場所)を取ります。これを3文字表記だと Met-Asp-Glu-Asn- と狭いスペースで書き表せます。1文字表記だとさらに短く MDEN の4文字で書けます。
 3文字表記のルールはアルファベットの最初の3文字が基本ですが、アスパラギン酸(Asparatic acid)とアスパラギン(Asparagine)、グルタミン酸(Glutamic acid)とグルタミン(Glutamine)のように最初の3文字だけでは区別できないものは Aspと Asn、 Glu とGlnのように区別しています。
 1文字表記も20種のアミノ酸を一番始めのアルファベットで表したいのですが、頭がAのアミノ酸にはアラニン、アスパラギン酸、アスパラギン、アルギニンと4つあり、アラニンにAを充てたので、残りの3つは余っているアルファベットのD、N、R を充てています。皆さんの進む学部学科によっては卒業研究で、ある遺伝子の機能解析を行うのに、DNAの塩基配列を決め、アミノ酸配列を決め、・・・、ということを日常的に行うかもしれません。とはいえ、今ではコンピューターがほとんどのことを自動で行ってくれるので、塩基配列からアミノ酸配列をノートに書き出すというようなことはないと思います。ただし、生体内で使用されている20種のアミノ酸を3文字表記でどのアミノ酸を示しているか位は(岡大生なのにアミノ酸の名前も知らないと言われないように)分かるようにしておきましょう。

 例題:Serは何? Hisは? Pheは? Leuは? Ile(アイエルイー)は?

新型コロナウイルスについて、変異株をアルファ株、ベータ株、、、と呼んでいますが、N501Y とは何でしょうか?

 N501Yは501番目のアミノ酸がNからYに変異したことを、E484Kは484番目のアミノ酸がEからKに変異したことを表しています。

オミクロン株はそれまでの株に比べ変異箇所が際立って多いことが分かっています。

 タンパク質はペプチド結合による直線的な1次構造から板状(βシート)、らせん状(αヘリックス)をとる2次構造、折ったり曲げたりされた状態の3次構造、生体内で機能を果たす最終形のサブユニット同士が集合した4次構造まで取ることができます。3次構造以上を高次構造と呼びます。

 生物においてタンパク質は多様な役割を担っています。次の表はタンパク質の種類と機能についてまとめたものです。

次は2番目の糖類についてです。

 糖類は炭水化物とも呼ばれます。

 糖類のヒドロキシ基は反応性が高く、単糖はグリコシド結合で重合体を形成します。

 多数の単糖が結合した重合体は多糖と呼ばれ、植物細胞の細胞壁セルロース、デンプン、グリコーゲンなどがあります。多糖はエネルギー貯蔵、構造材料を提供します。

次は3番目の核酸についてです。

 ピリミジン(六員環のみ)とプリン(六員環と五員環からなる)と呼ばれる2種類の塩基に糖が結合したものをヌクレオシド(nucleoside)、さらにリン酸が結合した状態のものをヌクレオチド(nucleotide)と呼びます。糖の部分がリボースなのか、デオキシリボースなのかによって、RNA(Ribo Nucleic Acid) 、DNA(Deoxyribo Nucleic Acid)が決まります。ヌクレオチドは塩基と糖とリン酸の3つの部分からなります。ヌクレオチドが重合して長くなってポリヌクレオチド鎖を作っていきます。

 2本鎖DNAの中でチミン(T)とアデニン(A)、シトシン(C)とグアニン(G)は水素結合により相補的にペアを作っています。

 細胞内に含まれているアミノ酸は20種類もあるのにDNAは4種類の塩基しか含んでいないため、遺伝情報を担っていると考えるには単純すぎると考えられていました。1953年にワトソンとクリックによってDNAの相補的二重らせん構造が発表され、これによりいろいろな状況証拠がすべて見事に説明され、ジグソーパズルの最後のピースがはまったように1枚の絵が完成しました。
 遺伝暗号の解読(Genetic code)などについては、機会があればお話しします。

4番目の物質 脂質についてです。

脂質に関しては2週後の細胞膜のところで説明します。

 第2週10月10日の第2限はこれで終了です。学習確認のため、数行で構わないのでMoodleのページにオンラインテキストで「今日初めて知ったこと、質問、感想など」の書き込みをしてください。また、1限のアルコール感受性に関するアンケートに答えてください。
 文字が小さいですが、英語版のまとめを置いておきます。Chapter 4.1 までが今日の内容です(残念ながらリンク切れです)。

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