恋アスとコラボした理科年表2023を読む
2022年11月24日、『理科年表 2023』が発売されました。ここ数年の理科年表は毎年何らかの漫画やアニメの作品とコラボするようになったのですが、今年はなんと『恋する小惑星(恋アス)』とのコラボが展開されています。天文・地学がテーマの作品であるため数年前から多くの要望があり、ようやく実現したという流れのようですね。
豪華なデザインのブックカバーがお披露目され、Twitterではさっそく入手した人の喜びの声が溢れています。一方で、理科年表とはそもそも何なのか、何に使うのかよく分からないという声も散見されます。
購入してみたいけど、役立てられるのかどうか分からないという方の背中を押すために、本記事では理科年表の概要や中身を簡単にご紹介します。
理科年表とは
理科年表オフィシャルサイト「理科年表とは?」に詳しい説明が書いてあるので、ここではごく手短に説明します。
理科年表は、国立天文台が編纂する自然科学データの資料集で、毎年最新版が刊行されています。通常の書籍とは違い、データをひたすら羅列したページが連なっています。
データがたくさん載っている本と聞いても、見たことがない方はイメージしづらいと思います。理科年表編集室のTwitterに実際のページ画像が何枚かあったので見てみましょう。
理科年表の使い方
たくさんの科学データが載っている理科年表ですが、何に使うのかイメージが湧かないという方も多いのではないでしょうか?
一つには、何か実験や観測をするときの参考資料としての使い方があります。理系の大学生であれば、講義や実験のレポートを書くときに図書館の理科年表にお世話になった経験がある人も多いのではないでしょうか。Wikipediaなどインターネット情報より信頼のおけるデータ元として、理科年表は大いに役立つことでしょう。
理科年表自体を読み物として楽しむこともできます。ページをパラパラとめくるだけで、存在すら知らなかったデータの数々に出会うはずです。人類が積み重ねてきた自然科学の膨大な成果に思いを馳せることができるのです。
理科年表の価格
値段はいくらなんだろうと言っている方も見かけたので、価格についても触れておきます。
ポケット版(A6判)定価1,650円(税込)
机上版(A5判) 定価3,520円(税込)
理科年表プレミアム 個人版(電子版のライセンス) 定価4,620円(税込)
ポケット版と机上版はサイズが異なるだけで、内容は同等です。コラボで配布されているブックカバーはポケット版サイズなので、サイズにこだわりがなければポケット版を購入しておけば良いでしょう。
1,650円という価格を高いと思うか安いと思うかは人それぞれですが、紙の国語辞典などと比較しても、そこまで高額というわけではないように思います。
恋する小惑星コラボについて
筆者も含め、恋アスファンが一番気になる部分だと思うので触れておきます。なお、公式情報は丸善出版のニュースリリースでお確かめください。
オリジナルコラボブックカバー
理科年表2023の購入者向けに、恋する小惑星のイラストがデザインされたポケット版サイズのブックカバーが配布されています。ただし、対象の書店でなければ配布されない点に要注意です。買いに行く前に対象店のリストをよく見ましょう。
ブックカバーは、星空をイメージした背景に恋アスのイラストが散りばめられたデザインです。なお、アニメではなく原作側(芳文社)とのコラボであるため、イラストは原作の単行本や掲載誌のまんがタイムきららキャラットから採られているようです。恋アスのグッズの多くはアニメ関連が占めているため、貴重な原作絵柄のグッズとしても注目です。
さきに触れたように、理科年表には複数のサイズや形式があります。ポケット版以外にもブックカバーが付属するかどうかは、書店ごとに対応が分かれているようです(ポケット版のみの例・机上版やプレミアム版にも付属する例)。もしポケット版以外を購入予定でブックカバーを手に入れたい場合は、購入前に書店に質問しておくのが良いでしょう。もらったとしてもブックカバーを装着することはできないので、ポケット版を購入しておくのが無難だとは思いますが……。
しおり
秋葉原の書泉ブックタワーなど一部の書店では、恋アスデザインのしおりも配布されています。筆者は大学生協で購入したら付いてきませんでした😭
缶バッヂキーホルダー&アクリルスマホスタンド
アンケートに回答した人から、抽選で100名にプレゼントされるグッズです。理科年表の帯に記載されたクイズに答えなければ送信できない仕様になっています。
締切は2023年1月31日です。忘れないうちに送信しておきましょう。
理科年表2023のざっくり感想
買っておいて中身を全く読まないのもどうかと思ったので、約1200ページを一通りめくってみて気になった部分についてメモしておきます。筆者が天文ファンであるため、暦や天文関係への言及が多くなる点はお許しください。
歴部
理科年表は、暦に関する情報をまとめた「歴部」から始まります。天文ファン以外にあまり知られていないかもしれませんが、日本の暦の管理は国立天文台が担当しています。太陽や月の動きはもちろん、春分の日・秋分の日や二十四節気の日付も太陽の位置から算出されます。
暦の編纂を担当する国立天文台 暦計算室(れきけいさんしつ)のWebサイトには、暦に関するデータや解説が掲載されています。面白いのでオススメです。
歴部には、太陽や月、惑星、準惑星などの位置や出没時刻が載っています。こうしたデータは、星を見るときにはもちろん、日の出・日の入りに合わせて写真撮影をしたいときなどに活躍するかもしれません。
天文部
各天体に関するデータ,日食・月食の情報などが掲載されています。恋アスの大きなテーマの一つである小惑星についてのページもあります(天13「太陽系小天体」)。
天文部には、時間に関する記述もありました。つい先日「うるう秒が廃止される」というニュースが話題になりましたが、その理由の一つとして「地球の自転が速まっていること」が挙げられていました。天85「極運動と自転速度変動」には、観測で求めた1日の長さ(LOD)の24時間からの超過のグラフがあり、確かに年々超過分が減少して最近はマイナスになっている(=24時間よりも速く地球が1回転する)ことが読み取れます。
気象部
充実した気象の観測データが掲載されています。気象情報でいう「平年」の数値も載っており、現在は1991年から2020年までの平均値が使用されています。平年の値は10年おきに更新されるので、次の更新は2031年になってからです。
物理・化学部
単位系にはじまり、さまざまな定数や物性のデータが収録されています。物理・化学系の講義レポートで大学生がお世話になりがちな部分ではないでしょうか(偏見)。
地学部
地球に関するデータが集まっています。世界各地の山や川などの地形一覧、岩石の組成や特性などです。地理学も地学の一部として扱われているので、地59「日本のおもな都市の面積・人口」、地62「都道府県庁間の距離」といった表もあります。当然、国土百合院 国土地理院も関わっているわけです。
地学部の後半は、火山や地震などの災害に関するデータになっていました。恋アスでは、地学部員の七海悠(ナナ)が防災を志しており、最近の回でも防災科研(NIED)が紹介されるなどしています。災害のデータをしっかり読んで君も七海悠になろう(?)
生物部
生物の分類,測定値,生化学反応などが掲載されていました。イラストが多いのでめくっていて楽しいのではないでしょうか。序文によれば、今年は「シロナガスクジラの心拍数」(生68)などが増えているようです。これは2019年に出た"Extreme bradycardia and tachycardia in the world’s largest animal"という論文に基づくデータで、ここ数年に出た研究成果もしっかり取り入れていることが分かります。
環境部
気候変動や生態系など、地球環境に関するあらゆるデータが掲載されています。環境問題がニュースで扱われているのを見たら、理科年表のデータも参考にしてみると理解が深まるかもしれません。
あとがき
ここまで偉そうに書いていますが、筆者は中高生時代には『天文年鑑(誠文堂新光社が発行する、天文特化のデータブック)』の方を毎年買っていたので、理科年表をしっかり読んだのは今年が初でした。コラボに感謝ですね。
自然科学に関してここまで網羅したデータ本は世界でも珍しいそうなので、コラボに釣られて飛びついても後悔することはないのではないかと思います。購入に二の足を踏んでいる方に、少しでも参考になれば幸いです。