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かかりつけ海

彼は、海あり県育ち。
彼は言う。僕が死んだら勾玉をふたつ作ってね。
私は訊く。なぜふたつ?
彼は困ったように言う。君は失くしそうだし、失くしたらきっと死ぬほど気に病むだろうから。残りは海に撒いてね。
私は納得いかないままで、うんと言う。
私より先に死ぬつもりなのね。
私があなたの勾玉失くすと思うのね。

私は、海なし県育ち。
かかりつけの海がいるあなたとは
死への恐怖がさっぱり違うのよ。

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