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沢野利也と日常の謎(連作短編)

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#小説

1.眼鏡屋の息子

 ランドセルにさよなら告げて、制服にはこんにちは。中学生になって一週間が過ぎた。
 第一中学は付近の四つの小学校の児童が集まって生徒になる。東校、西校、南校、そして、僕の出身である北校。だから、北校出身の連中ばかりとつるんでいた。大体みんな、そういうもんだろ。
 けれど、僕には話しかけたい奴がいた。授業中はずっとそいつの背中を見つめている。先に言っとくがそいつは男だ。そして、僕も男だ。けれど変な意

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2.答えは道の真ん中に

 如月郁美のあだ名は『ニガツ』である。
 小学校の国語の時間につけられたあだ名で、本人は全く気に入っていないらしいが、中学にもこのあだ名が持ち上がった。この名で呼ばれる度に、ニガツって言うな、と怒るので今ではクラス全員にその名前が馴染んでしまった。逆効果の典型である。
 そんな彼女は年度初めの委員決めで図書委員になった。じゃんけん大会に負けた僕も図書委員。そんなわけで、五月の連休が終わった頃には、

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