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手の中でたわむ頼りない肉

生物群

三河島に行った。

東日暮里の元映画館でPoltergeist展を観た。そのまま歩いて三河島の純喫茶に寄って休憩し、朝鮮マーケットで買い物をして帰った。なんかこういうあまり行かない場所を時間の余裕をもってぶらぶらできることに幸せというのは存在する。で、好きなタイミングで帰る。帰る途中に寄り道をしてもいい。

三河島朝鮮マーケット内の丸萬商店で買い物をした。ここの奥さんが狂おしくやさしく親切でかわいらしかった。お店の雰囲気は公式ウェブサイトの写真から伝わるかと思う。メディアにはけっこう出ているそうなのだが（孤独のグルメにも出たらしい）私はあまり知らなかった。

丸萬商店の前にいた猫

ポッサムは400gかたまり肉で1200円くらいだったと思う。結構塩がきいてるので一回で食べきらなくても大丈夫だが、食べきれるか不安な人は300gでもいい気がする。セットのキムチもすごくおいしかった。なんというかあの韓国唐辛子の味の深い感じがある。酸っぱさは少ない。少なめがよかったら300gかなと言って選んでくれたがめちゃくちゃおいしかったのでやや足りないくらいだったかも。
ポッサムを手渡されたときのビニールごしのプルプル、やわやわのあたたかい五枚肉の手の上でたわむ頼りない感じが忘れられない。できるだけ早急に食べなければと思ってしまった。

オリジナルの冷麺と冷麺スープ(ストレートタイプ)、夏限定のトマトキムチなども買った。水キムチも買いたかったな…。トマトキムチは、丸ごとのトマト（ヘタをとってくれている）ときゅうりの漬物のセットにヤンニョムのパックがセットしてあって、食べる前に切ってあえてねというスタイルで驚いたが、見た目通り美味しかったな〜。なぜそういうスタイルにしているかも食べてみるとわかる。その場であえて食べるのが一番おいしい。次行ったらもっといろいろキムチを買おう……。

済州島と交流が始まったころの荒川区のインタビューサイト。

買い物の前には日暮里の周辺をぶらぶらしてそこから三河島まで歩いた。
ここは東京で最古のコリアンタウンで、戦前、明治時代ごろからのオールドカマーの移民の人々が住んでいる。小さな家が立ち並ぶが表札に朝鮮姓が目立つ。済州島がルーツの人たちが多いのだと。
街中の純喫茶に入ってみる。やはり朝鮮半島ルーツの人がやっているお店で、内装はレトロだけどよく手入れされていて本当にすばらしい。照明がすごーくかわいい。装飾はちょっと物が多めで、おうちとお店の間くらいのあの感じ……。メニューにはコーヒー、ナポリタン、サンドイッチ、生ジュースなどが並ぶなかに冷麺が並んでいる。冷麺とアイスコーヒーとのセットを注文する。飲みものに伝統茶の項目があり、生姜茶、ゆず茶、なつめ茶なども頼める。以前は、メニューのなかに冷麺以外にもクッパやピビンパッもあったらしい。

カフェテラス ウィーン

店内には喫茶店のオーナーマダム（厨房）、ホールスタッフマダム（オーナーマダムと同世代くらい というか友達っぽい）、あと常連？家族？友達？の大阪弁の紳士が来ていてソファに座ってほがらかに話をしている。かなり居心地がいい。

おいしかったので冷麺のスープまで全部飲んだら、ステンレスの冷麺容器をさげにきたマダムの顔がぱあっと明るくなって「冷麺はスープが一番美味しいのよね。きれいに飲んでくれたのね。私もスープって全部飲んじゃう！」と話しかけてくれた。

9月号のPOPEYEに小さく掲載されていたらしくて、POPEYEをとってきてページを教えてくれながら手渡してくれる。

Twitterに書いたけど、アイスコーヒー飲んで本読んでいたら、ピンポーン　と入店音が鳴って、お客さんが来たのかなと思って入り口の方を見るも誰も入ってきていない…なぜ…？と思っていたら「ニャーン」と聞こえてきて喫茶店の猫がパトロールから帰ってきて自力で自動ドアから入ってきていた。マダムたちは普通に「おかえり〜」と挨拶していた。しばらく店内で休んでまた自力で自動ドアを開けて出て行っていた。猫の身長では自動ドアの前にいるだけではドアが開かないので、後ろ足で立ち上がって体を伸ばして前足で扉に軽くタッチして開けて大変かしこかった。安全な基地を見つけて気ままに出たり入ったりしている。

冷麺が出る純喫茶のマダムも、ポッサムを計って売ってくれた商店の奥さんもありえないくらい優しくて、なんというか、私だけにっていうのではないけれど、博愛に基づいた目の前の相手に向けての愛を感じる接客で、そんなこと言われてないのに「あなたが好きよ」とか「大丈夫だからね」と言われている感じがしてなんか多分ふつうに接客されているだけなのに涙がでそうになった。何これ？
もしかしてこれが「オンニ」（おねえさん）の概念か？

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