戯曲「(タイトル未定)」(2016)
(タイトル未定)
作:立夏(獣の仕業)
配役・人数:指定なし
台詞割:指定なし
場所・時:指定なし
*
私はあなたに会いたい。昨日会ったばかりなのにおかしいって思うけど。
(窓を閉める)
窓を閉めてはいけない。
(歩く)
歩いてはいけない。
昨日会ったばかりなのにおかしい。私はこんなのは自分ではないって思う。これはもしかして私、あの人のことどうにかしてしまいたいって思う。そうでなければ私が首を吊るか腕を引っ掻いてどうにかなってしまいたいけど私はそういうのはできない。そういう度胸はないから以前はそういうものに憧れていたけど私はそうはならなかった。ごめんなさい。
あやまってもだめ。
外の光が明るかったのにいつの間にか夜になっている。
(口づけをする)
やめて。
あれはなんなの。どうしてそうしたの。何でそんな言い方しかしないの。あなたは自分の気持ちが自分で話せないの。私はあなたの世話はうんざり、本当に。つまりそれは私が私自身の世話をすることを心底嫌になってしまったのと同じくらい。ほら、悲しそうな顔をしたりにやつくだけで何かを伝えようなんてあなたは何て怠慢なんだろう。言葉を使いなさい。学校で覚えたでしょう。うんざり、本当に嫌になる。あなたの話よ。私じゃない。私の事じゃない。
いいえ、君は君の話をしている。許さない。
私がここに立っている。私がここに立っているのは私がみんなを呼んだから。メールをして電話をして呟いて顔と顔を見合わせて本を書いて、それで集まったのがこの人達。今日は最初の日。明日はすぐに最後の日。今日と明日で合計4回。100人。もうちょっと調子が良く伸びたとしても200人。ねえこれはとても多いと思う? それとも少ないと思う? あなたはどう思うだろう。ねえ、あなた。みんなってあなたのことよ。あなたの判断をして、あなたの意見を聞かせて。判断して。レビューをして。
違うまずは君が自分の話をすることだ。先に君が。
自分の話。私はもう言葉を尽くして同じテーマをずっと繰り返しているだけじゃない何年も何年もずっと。それが真実だと思わない?私はいつまで先出しを続ければ良いんだろう。後出しじゃんけんでみんなは何だって言いたい放題なのに。しかもそれは私が望んだことなのだ。そしてそれはサービスと言われる。ああ、ねえ、私は大切にしているたったひとつのことだけがあって同じテーマを、海辺にして病院にして家の中にしたり親子にしてみたり恋人だったり手を品を変え続けてタネを100年前に明かした手品をずっと披露しているような気持ち。ねえ、もう一度キスさせて。
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