音楽で華やぐクリスマス・イブ 熊大吹奏楽部定期演奏会開催!
12月24日、熊本大学体育会吹奏楽部による第50回定期演奏会が開催された。
節目となる50回目の定期演奏会には、ゲストとして世界的サクソフォーン奏者の須川展
也さんに加えハープ奏者の園田真理子さんを招き、OB・OG の方も交えた演奏を披露した。
司会には熊大吹奏楽部第 45 代主将にして、NBC ⾧崎放送アナウンサーの住吉光さんが務めた。
以下、元吹奏楽部サックス奏者の弊社記者による感想も交えた演奏会レポートをお送り
する。
【第1部】
第1部では吹奏楽の中でもクラシックなコンクール曲や協奏曲、古典に属するとされる
ような曲が披露された。指揮は今演奏会で引退する小池凌人。
遥かなる歌 / 保科洋
遥かなる歌は熊大体育会吹奏楽部の創部20周年を記念して保科洋さんに作曲された曲。第16回の演奏会では作曲者保科自身が指揮を行ったという。
今回演奏されたのは、改めて保科に依頼し改訂された50回記念の最新版。はるか遠くへの挑戦を感じさせるような起伏にとんだメロディーが印象的。学校の鐘のようなチャイムの音階の後にファンファーレが始まる。クラリネットやサックスによる低く探るようなフレーズと、ラッパ類と打楽器による映画音楽のような荘厳なフレーズが繰り返される(自然とドキドキしてくる展開だったと思う)。最後は華やかな盛り上がりをみせて、晴れやかな余韻を残す。打楽器が特に印象に残る一曲。
インテルメッツォ / 保科洋
2017年度の全日本吹奏楽コンクール課題曲。間奏曲を意味するが単体で作曲された。「うたごころ」をテーマに作曲されたという作品。
静かな始まりから、上品な洋風の踊りのようなフレーズ、次いで花が舞うような軽やかなフレーズへと続く。後半はセレナーデのように徐々にゆったりとした曲調となり、最後は眠るように静かで穏やかな終わりをむかえる。
全体的にとても上品で、華やかだがどこか一か所が目立ちすぎないような、均整の取れた一曲だったと思う。威勢がよく荒々しい曲よりも、こうした曲のほうがかえって難しいこともあり、苦労と努力がうかがえた。
BIRDS / 真島俊夫
“Swallow”、”Seagull”、”Phoenix”の3楽章からなる協奏曲。
須川展也氏、園田真理子氏が参入、バンドの前に立ち、ソロパートを披露した。軽やかな第一楽章、哀愁漂う第二楽章、そして天上を飛ぶ鳥を思わせる甘く優しい第三楽章。フルコースのような満腹感を感じる。
特に須川氏の技術が輝く一曲で、赤いアルトサックスから放たれる低音から高音までか
すれることのない美しい音と、熟練の指さばきから繰り出される超絶技巧に全身がしびれ
るような感動に包まれた。
また、第三楽章では軽やかに響く園田氏のハープが不死鳥の羽ばたきのようでとても麗
しかった。
アルメニアン・ダンス パートⅠ / A・リード
アルメニアン・ダンスは吹奏楽のクラシックでは定番の曲。A・リードの作品はかなりたくさんあり、熊大体育会吹奏楽部でも最も多く演奏されてきた作曲家の曲だという。5つの曲が組み合わせられており、緩急のある踊りの舞台のようであった。
ティンパニや大太鼓、タンバリンといった打楽器や、クラリネット、サックス、オーボエといった縦笛が活躍。太鼓や葦笛が響くにぎやかなお祭りを想像させる。ホルン・サックス・オーボエはソロパートがあり、部員の技術が輝いた。
その中でなお、須川氏の音は透き通って耳に届いてくる。業界的には「粒だった」と表現されるだろう氏の音は、本当に恐ろしいものである。
【第2部】
第2部ではポップミュージックが披露された。ディズニー・メドレーのほか、チアリーディング部やHIGO-PERAのメンバーも交えたパフォーマンス、ミラーボールや照明を活用
した演出に会場は大いに盛り上がった。指揮は藤井晶。
ディズニー・メドレー / 岩井直溥(編曲)
「ミッキーマウス・マーチ」「いつか王子様が」など、はなばなしく陽気で盛り上がる曲の数々。各所にソロパートが散りばめられており、部員の技術が光るとともに聞く側も飽きない演奏だった。
ヒットパレード 2023
今年はやった曲の大集成。チア部”BLAZES”とアカペラサークル“HIGO-PERA”のメンバーによる踊りと歌に加え、オタ芸などが披露された。
チア部”BLAZES”は「首振りダンス」が話題になった「オトナブルー/新しい学校のリーダーズ」、アニメ『推しの子』オープニングである「アイドル/YOASOBI)」のダンスを披露。キレッキレの踊りで会場を沸かせた。
アカペラサークル“HIGO-PERA”はNHK連続テレビ小説『らんまん』の主題歌「愛の花/あいみょん」、劇場版『名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)』の主題歌「美しい鰭/スピッツ」を独唱した。声量と美しい高音は圧巻だった。
第2部の終わりには、須川氏へのインタビューが行われた。どんなリード(息を拭きいれる部分に装着する薄い木の板。これが震えて音が生じる)を使っているかというマニアックな問いのほか、どうすれば練習を続けて須川氏のようなサックスプレイヤーになれるか、サックスのいいところとは、といった素朴な質問も出た。
【第3部】
第3部では、少し懐かしいともいえるような定番曲が須川氏、園田氏を交えて演奏され
た。指揮は野林蓮。
青春の輝き / 森田一浩(編曲)
カーペンターズの名曲を、サックスを主役に編曲したもの。
須川氏のソロ演奏と、部員サックスパートとのアンサンブルや掛け合いがすばらしく、本当に歌うかのようにやわらかに吹き上げられていた。トランペットとトロンボーンのメロディー演奏も素敵であった。
スペイン / 本多俊之・明光院正人(編曲)
チック・コリア作のジャズの名曲を、吹奏楽にアレンジ。須川氏がソプラノサックスとアルトサックスを駆使してソロ演奏を披露した。
須川氏が演奏するソプラノサックスの驚くべき細やかな音の運びと、バンドの華やかさ
との掛け合いが魅力的であった。チャカポコというウッドブロックの音と高下する旋律が
どこか異国情緒を感じさせ、非常にかっこいい。サックスの高音の清涼感も心地よい。
ボレロ / 岩井直溥(編曲)
クラシックの名曲にして、様々な曲調にアレンジされることで有名なラヴェルのボレロをポップスアレンジ。
密林を感じさせるボンゴ(打楽器)の導入から、徐々に様々な楽器が入ってきてにぎやかになっていく。その後は、どこか例大祭のお祭りの行列が練り歩くような感じのメロディーが、オーボエ、フルート、クラリネット、テナーサックス、アルトサックス、トランペット、ユーフォニアム、ホルン、トロンボーンというほとんどすべての吹奏楽用管楽器種のソロにより何度も繰り返され、そのたびに楽器の音色が現れたまったくちがう雰囲気を味わえる。
本編最後を飾るにふさわしい濃厚な演奏だった。
ボレロの演奏が終わると、会場からアンコールを求める拍手が沸き起こった。
すると、舞台袖から第1部の指揮も務めた小池凌人さんが登場し、指揮台の前で「クリスマスプレゼントを1曲お届けします」と一言。自分と吹奏楽部をこれまで支えてくれた人への感謝を述べた後、アンコール演奏が行われた。
アンコールとして、まず All I Want For Christmas Is You が演奏された。鈴の音が軽やかに響き渡り、会場はクリスマスの雰囲気に包まれた。次に演奏されたのは宝島。おなじみの曲に客も手拍子をしながら盛り上がった。
すべての演奏が終わると、観客席からは今日一番の歓声と拍手が沸き起こった。
部員のほかに OB・OG が参加することで通常以上にサウンドの厚みが増しており、全曲を通じて圧倒される演奏であったと思う。クリスマス・イブに素敵な夜を過ごすことができた。次回の定期演奏会が今から楽しみだ。