【紀行記】おいぬ様の山 2
おいぬ様の山 御岳山
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実は、僕は今年の6月にも一度登っている。
まさか、1年で2回も登ることになるとは思っていなかった。
もっと言うと、日の出山‐御岳山ルートだったと思うが、10歳くらいの時にも祖母に連れられてきたことがあり、これで3回目となる。
僕以外のメンバーは初めてだったので、案内役を任された。
登山口には、武蔵御嶽神社の近くまでの行くケーブルカーがある。
ケーブルカーのふもと駅である滝本駅には大きなリュックを背負った登山客と気軽な恰好の神社の参拝客でごった返していた。
10分くらい待ったが、列車が到着したのち入場が開始された。
今日は、混雑しているため増発便が出ているとのこと。
結構な人数が入場している。次の便かなと考えていたが我々を最後に入場が締め切られた。
「こんなに乗れるの?」
浅田が心配そうにしている。
「ぎゅうぎゅう詰めだろうね」
僕は答えたが、たしかに目の前にある列車に対して、この人数が乗れる感じはしない。
乗車が開始された。
最後尾にいた我々は、3つの乗車口で一番空いている先頭のところからの乗り込んだ。
やはり、ぎゅうぎゅう詰めだった。
我々は、扉の付近の僅かな場所に立つことになった。
大きなリュックを背負っているため身動きが取りにくいが、僕は何とか進行方向に向くことができた。
前面の車窓からは、壁のような坂がそびえたつ。
銀河鉄道999の出発シーンで鉄郎が「線路がない」とメーテルにいう場面が思い出される。
このケーブルカーは、それ以上の急坂な気がする。
鉄郎もびっくりだろう。
「これケーブルカーでも登れるのかよ」
半年前にも乗ったが、思わず言ってしまった。
浅田と野上も大きくうなずいた。
それくらい壮観。
出発のベルが鳴る。
ガタンと音を立ててゆっくりと動き出した。
約6分 標高差432.6m 最大勾配斜度25度
アナウンスがあった。
両側は、緑が広がり、時より黄色や赤色に染まった木々が顔を出す。
あっという間に山頂の御岳山駅に到着した。
駅から右手には売店と広場がある。
この広場からは、東京23区のビル群が見下ろせる。
また山が見え、調べたところ筑波山であるとのことだった。
「筑波って近いんだね」
野上が言う。
たしかに意外と近くに見える。
後で調べたら御岳山と筑波山は直線距離で100㎞くらい離れている。
全然近くない…
靴や服装を再度チェックして、参道を進み始めた。
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神社までは少し距離がある。
道中には、色とりどりの紅葉が見られる。
スマホで写真を撮らずにいられない。
しばらく歩くと宿坊や民家がある。
「ここはAmazon届くのかな?荷物届かないなら住めないな」なんて野上が言った。
「たぶん届くでしょ」と適当に答えたが、意外と重要だ!
届かないのは困る。
住めるか否かがAmazon基準とは、完全に生活に欠かせない存在になっていることに気がついた。
それくらい高く眺めがいい場所だし、ちょっと不便そうな場所に感じる。
雑談をしながら宿坊を抜けると急坂に出る。ここがなかなかシンドい。
おそらく最初の難関だが、両側はお土産屋なので、登山の準備運動だ。
「ここ住んでたら足腰強くなるわ!」
野上が言うが、僕と浅田は既に息が上がってうなずくだけだった。
お土産と食事処が並ぶ道は、お店の人が一生懸命に声がけをしていた。
「もう食べちゃうか!」と野上が言う。
11時を過ぎていたので、美味しそうなディスプレイに誘われてお店に吸い込まれそうになるが、リュックにはお昼ご飯がしっかり入っている。
「疲れたときに食べるのが美味いんだよ!それまで我慢!」強く言うが、かくいう僕も正直なところ、かなり心が揺らいでいた。
今ここで食べると、もう歩く気が起きなくなるんじゃないかと思って、足早に通り過ぎた。
すると神社に続く石段がある。
またまた息を切らして登りきると狛犬がお迎えしてくれる。
その先に山頂に建てられた立派な朱色のお社がある。
これが武蔵御嶽神社である。
参拝客の中にはワンちゃんを連れている人も多い。
流石おいぬさまの山!
参拝をして、登山の安全をお願いした。
石段を下り、登山口へ向う。
登山口にはヘリポートも兼ねた展望台があり日の出山と東京が見える。
空は澄んでいて、空気が美味しい。
リュックを下ろし大きく深呼吸をした。
「さぁいよいよ本番だ!」
ほぼ頂上の登山口から下って、苔むしたロックガーデンを目指す。
つづく