見出し画像

【紀行記】おいぬ様の山 3

おいぬ様の山 御岳山
前回の記事

5

登山口は、二手に分かれており、急坂ルートと平らな道ルートがある。
今回は、ロックガーデンまで行き、別ルートから戻る道のりなので、どちらの道へ進んでもいずれこの登山口に戻るというわけだ。
僕たちは、前回の僕が使った急坂ルートを進むことにした。 
ただひたすらに下るだけだ。
この道は、景色の変わり映えがない。

やがて水の流れる音がしてきた。
少しすると小川が見えてきた。
「川だ!」
浅田のテンションが急に上がって、歩くスピードが早くなった。
そんな珍しいものでもなかろう…
後に次いで野上も「どれどれ?」と僕を追い越す。
僕は、木の根っこに引っかかって転ばないか不安で二人を気にせず慎重に歩いた。
小川には、ほとんど水が流れていない。
前来たとき、こんなに水が少なかったかな?と思ったが、苔むした倒木と落ち葉そして静けさから、生命が眠る冬の到来を感じた。
僕たちは、各々写真を撮って景色を堪能した。

11月に撮影
下の写真と比べると静けさがある。
夏に撮影
勢いを感じる。

この小川は飛び石があって、その上を渡って対岸に行く。

さらに進むと、岩場となり滝が見える。
これが七代の滝である。
滝の下には滝壺、そこから流れる川が岩を侵食している。
滝壺へ行くには、侵食されて水路となった約50cmくらいの幅をピョンと渡る必要がある。
この周囲はしぶきで濡れており、滑るんじゃないかと不安になる。
滑落死亡事故発生!という看板もあるので余計に怖い。

僕は前来たとき、この水路で滑って転んで肝を冷やしたので、今回は滝には近づかなかった。
「来ないの〜?」と呑気に野上が言うが、さすがに今回も転んだらシャレにならない…「いや、怖いから待ってるわ〜!」と言って2人を眺めてた。
滝壺にはそれなりに人が居て、怖いもの知らずだなと思いながら待っていた。

浅田と野上は滝の近くまで行って水を触ったり、写真を撮ったりしていた。

余談
以前転倒した時、油断してたつもりは無いが、トレッキングポールがあったおかげで事なきを得た。 
体を支えてくれたポールは壊れてしまった。
トレッキングポールよ。ありがとう。
皆様も訪れた際はご注意いただきたい。

滝の写真じゃなくて看板だけ
こんなの見たら、滝壺には行けないよ…

七代の滝からは、そり立つ崖に備え付けられた金属の階段を使ってひたすら登る。
この階段も怖い。
角度が急なので鎖の手すりなしには登ることができない。
人生で1番怖い階段は?と聞かれたら、御岳山と答えてもいいかもしれない。
それくらい印象に残る。

大学生くらいの男の子達が前にいたが、体力の塊とも言える彼らでさえ、息を切らしながら登っていた。
途中、踊り場的な場所があって、彼らはそこで息を整えていた。

じゃあ、彼らの後ろにいた僕らおじさんたちはどうだったのか?
とんでもなく息を切らしていた。
「ゼェハァゼェハァ」
彼らの比較にならない…皆、無言。
ただ下を向いて一歩ずつ足場を捉える。
それを繰り返す。

誰がどう見ても、休まないといけないのは僕らの方じゃないか!
でも彼らを抜かして勢いで登りきってしまった。

浅田や野上と僕は、あのとき“登り切る!“と結託していたように思える。
でもシンドすぎた…膝が笑っていた。

今考えるとあれはなんだったんだろう?
大学生に対して見栄?
これが、若いものには負けないぞってやつ?皆アサラーだけどさ。

登りきっても、3人とも何も言わなかった。
だけど、僕は色々な意味で“やってやったぞ!“という謎の優越感があったから、2人も同じ気持ちだったんじゃないかな。
今思うと何に対して喜んでるんだか…

登ったところで「きゅうけー!」と僕は高らかに叫んだ!
飴か美味い。
すこし休憩をとって、先へ進んだ。

この階段を過ぎると天狗岩がある。
登れるらしいけど、誰も登りないなんて言わなかった。
そりゃそうだ。
だって足がプルプルしてるもん。

ここを抜けるとロックガーデンだ。
「ハラヘッタ…」野上がそれしか言わなくなった。
確かに12:30だ。
「もう少し我慢してくれ。ロックガーデンでご飯を食べよう」と伝え、歩みを進めるのであった。

つづく


いいなと思ったら応援しよう!