【紀行記】おいぬ様の山 4
おいぬ様の山 御岳山
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僕たちは、しばらく歩き、やがてロックガーデンにたどり着いた。
ほぼ勾配もなく歩きやすい。
先ほどの急登と比べると楽なので「ずっとこんな感じの道なら足痛くならないね」と浅田が言っていた。
僕たちは、大学生の男の子達を必死に追い抜いたため、足の疲労がピークを迎えていた。
確かに足には優しい道だ。
無理した僕たちが悪かったのだけど、意地ってやつだ。後悔はない。
ロックガーデンは、小川に縫うように置かれた石の上を歩くことができる。
小川の音が心地よく、苔むした岩が美しい。
しかし、初夏の訪問時より、セピア色というのだろうか、生命の隆盛はどこか落ち着いているように思える。
冬の到来が感じられる。
野上と浅田は、こんな川の上を歩くなんて珍しい場所だよねって話をしていた。
各々、写真撮影がはかどる。
スマホのカメラだけど…
浅田が「こういう景色見ると、カメラやりたくなるよね」とつぶやいた。
「確かにねぇ〜でもカメラって何から初めたらいいかよくわからん!」野上も同じことを思っていたようだ。
確かにこの景色は残しておきたいそう思える。
「じゃあ、このあとカメラ屋か電気屋いっちゃう?」なんて僕は言ったが、帰りの車ではみんな疲れてすっかり忘れていた。
でも、カメラは興味ある。
ロックガーデンには、アジア系や西洋系の外国の方もぼちぼちいらして驚いた。
日本に住んでる方なのかもしれない。
地理的に来やすい、山も難易度が低いこともあり、そういった点も人気の理由なのだろうか。
こと日本においては、四季がありそれぞれ見せる姿が異なる。
自然に触れたい、紅葉の美しさを感じたいというのは、世界共通だと感じた。
7
ロックガーデンも終わり、休憩所が見えてきた。
「人だらけだ」腹の減っている野上が残念そうに言った。
13時は過ぎていたが満席のため、僕たちは少し開けた場所に腰を下ろした。
落ち葉の絨毯になっており、ところどころに石がある。
少し落ち葉をどかして、シートを敷く。
重いリュックを下ろして、ジャンパーを脱いで背伸びをした。汗ばんた背中が冷えてシャキッとする。
「さぁ飯だ!」野上がうれしそうに昼ごはんをリュックから取り出す。
僕も結構お腹が減っていた。
僕の今日のお昼は、おにぎりとカップラーメン。
みそ汁も良いけど、今日はラーメンにした。
カップラーメンにお湯を注ぎ、蓋の上でおにぎりを温める。
カップラーメンができるまでに、体が冷えた。
動かなくなると、急に寒くなる。
脱いだジャンパーを再び着ることにした。
ちらっと時計を見て「3分経った」僕はカップラーメンのフタを開けた。
寒い空の下、疲れた体にラーメンが沁みる。
山歩きをすると、無性に塩分が欲しくなる。
食べ終わると、暑くなってきた。
ジャンパーを着たり脱いだりが慌ただしい。次いでおにぎりを食べる。
美味い。美味いに決まっている。
食後は、コーヒー。
インスタントコーヒーを熱々のお湯で溶かす。
これも寒いときに合う。
豆から引かなくても、インスタントで十分だ。
僕たちはコーヒーを入れて、贅沢な時間を過ごした。
8
「そろそろ行こう」
時間は14時であった。
冬の空は、14時でも日が傾いている感じになる。
夏なんて14時はこられからだ!って感じだけど…
僕たちは、片付けを済ませて先を急いだ。
そこからは、楽な道がつづく。
「変わり映えのない景色だね」浅田が言った。眼を見張る紅葉もなく、景色も変わらない。
ほんとうに楽な道のりなので歩く速度も速い。
七代の滝のあとの急登を登れば、大分上いることになる。
僕たちは、あっという間に登山口に戻ってきた。
「帰り早!」野上は驚いていた。
登山口で少し休憩をし、持っていた飲み物を飲みきった。
武蔵御嶽山神社を過ぎ、お土産屋の道を歩いていると人だかりができている。
なんだ?
皆、崖に向けて、スマホを向けていた。
僕たちも崖の方へ向くと、なんとカモシカが何かを食べていた。
たぶんカモシカだと思うけど、調べたけどよくわからなかった。
かなり人馴れしている感じがある。
見ている人はがやがやしていたが、カモシカは動じていなかった。
「東京にいるんだなぁ〜こんな大きな動物…」野上は少し怖そう。
「最後にいいもの見れたね」
浅田が、カモシカは神の使いと言われるらしいと言っていた。
御岳山も山岳信仰の対象であるから、カモシカに出会うことが、何か意味があることに思える。
安全に怪我なく登山がてきたのがよかった。
「いい山だ!また来よう」
そう皆で約束をして、御岳山をあとにした。
おわり