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令和6年6月読書③

『永田鉄山~昭和陸軍「運命の男」』 早坂隆 (2015/06) 文藝春秋

「陸軍の至宝」「永田の後に永田なし」とまで言われ、日本陸軍史上最高のエリートであった永田鉄山の評伝。

「東條ではなく、この男だったら太平洋戦争は止められた」と言われるほどの能力、そして人望もあり(後輩である東条英機もも慕われていた!)、軍の要職についていた永田であったが、ある日、陸軍中佐、相沢三郎に襲われ、斬殺される。

本書では、その事件の背景にあったものが、永田生涯を通じ、記されており、当時の軍人たちのイデオロギー、派閥関係、戦前を日本を包む空気感を鮮明に感じ取ることができた。

自分としては、今までイマイチ理解がよく出来ていなかった、陸軍の「統制派」と「皇道派」違いが、しっかりと分かり、すっきりした。

【目次】

第1章 諏訪時代

第2章 陸軍軍人への道

第3章 国防への意識

第4章 総動員体制の構築を目指して

第5章 満洲事変への対処

第6章 派閥抗争(統制派と皇道派)

第7章 揺れる陸軍

最終章 暗殺

エピローグ


『同性愛の謎 ~なぜクラスに一人いるのか』 竹内久美子 (2012/01) 文藝春秋

動物行動学者である著者によって語られる同性愛の謎とその解。
何故、同性愛者は子を残しにくいはずなのに常に一定の割合を保ち続けるのか?
その答えが巻末に記されており、感心した。生命は面白い。

【目次】

第1章 男性同性愛者は超男性か、超女性か

(まずはペニスサイズを測定する;女性ホルモンに、女性的に反応する脳;「今夜、いっしょに過ごしませんか?」―スラッシュ小説とボーイズ・ラヴ;汗の“匂い”は性フェロモン?―三島由紀夫と聖セバスチャン)


第2章 遺伝子

(双子の兄弟の一方が同性愛者なら他方は?―ベイリー&ピラードの調査;どうやって同性愛遺伝子を増やすのか―ヘルパー仮説を検証する;同性愛の世界史―同性愛は本来、どんな社会でも当たり前だった;同性愛遺伝子はどこにある?)


第3章 脳(男と女:右か左か?;触れ合うだけで幸せになれる―愛と癒しのホルモン:オキシトシン;脳を調べる)


第4章 謎が解けてきた!

(天才たちとエイズ禍―オスカー・ワイルドからフレディ・マーキュリーまで;なぜ兄の数が多いのか―ブランチャードとボガートの調査;同姓婚の開拓者たち;プラクティス仮説―セックスには練習が必要だ;いよいよ本命仮説登場!)



『忘れる読書』 落合陽一 (2022/11) PHP研究所

メディアアーティスト、起業家、研究者等の多彩な活躍を繰り広げ、時代の先端を行くデジタル社会の寵児でもある著者の思考を形作ったのは、最新鋭の理論やテクノロジーではなく、古今東西の古典を通じての読書からだったという。

そして、その読書論と著者が特に影響を受けた書物が本書にて紹介されていた。

その読んできた本の中身は哲学、経済書、理工書、文学、宗教にまで及び、半端ない。そして、その読書遍歴の源は、どうやら、父親である作家の落合信彦にあるという。

「ニーチェを読んでいない奴とはしゃべれない」と父親にいわれ、仕方なく、ツアラトゥストラを中学生時に読み始めたというエピソードが載っていたのだが、自分も娘に同じようなことをやっていたので、笑ってしまった。

【目次】

第1章 持続可能な教養――新しい時代の読書法

第2章 忘れるために、本を読む

第3章 本で思考のフレームを磨け

第4章 「較べ読み」で捉えるテクノロジーと世界

第5章 「日本」と我々を更新(アップデート)する読書

第6章 感性を磨く読書

第7章 読書で自分の「熱」を探せ

「語り得ないものを語ろうとすると、どうしても詩的表現にいきつく」(本書115Pより)

『日本語のデザイン 文字から見る視覚文化史』 永原康史 

グラフィックデザイナーである著者が、古事記に使用された漢字から最新のデジタルフォントまで、日本語の文字の変遷を追い、豊富な図版とともにその考察が記されていた。

読後、最近、言語学に興味を持ち、オリジナルフォント作成を企画している娘にも手渡した。

それにしても、あらためて思う、ひらがなの美しさよ。

その美もさることがなら、機能、役割からも日本史上、画期的な発明であったといえるのでなかろうか。

活版印刷の時代を終え、デジタルフォント全盛の時代となったいま、ひとつひとつ独立した文字として、ひらがなを印刷するのではなく、江戸以前のように「連綿」と「散らし」を交えた崩し書き、つづけ文字を使用した印刷、ひらがなフォントの出現を期待してしまう。


目次

1章 日本の文字

2章 ひらがなの構図

3章 女手の活字

4章 画文併存様式の読み方

5章 近代活字の到来

6章 文字産業と日本語


『ゲームチェンジの世界史』 神野正史 (2022/04) 日経BP

ゲームチェンジとは従来の枠組み、常識、ルールが全く通用しなくなること。

世界史において、ゲームチェンジを人類に迫った15の発明、発見、そしてのその普及の変遷を追ったのが本書。

下記に記した15の項目がそれだが、最も興味深く読んだのが、「活版印刷と宗教改革―知の解放が招いた近世」だ。
なぜなら、この活版印刷の普及による知の解放が、その後の「中央集権体制」「産業革命」「フランス革命」を生み出したともいえるからだ。

そして、自分が最も関心をよせるのは「インターネット」および「AI」が人類に新たな知の解放をもたらすかということだ。

ただ、その前に、歴史は韻を踏むので、「革命」がもたらされるのは間違いないことであろう。

その革命がどのようなものであるのか、想像するばかりだが、
「血の革命」ではないことだけを祈る。

目次

農業―人類が人間になった
鉄器―重視されたのは耐久性と実用性
一神教―王権強化が生んだ対立
紙と冊子―人が作った記録媒体
キリスト教―民族宗教から世界宗教へ(1)
騎馬―速度が変えた戦略と戦術
仏教―民族宗教から世界宗教へ(2)
帝政―民衆の顔色を窺う支配者
活版印刷と宗教改革―知の解放が招いた近世
中央集権体制―主権国家が生んだもの
産業革命―消費社会はここから始まった
フランス革命―現代社会を築いた10年
総力戦―損得を無視する戦いへ
核兵器―テロとゲリラ戦の共通項
インターネット―国家を揺るがすSNS
アニメーション―軍事力から文化力へ


『百年前を世界一周』 村山秀太郎 (2023/08) 大和書房

海外に一度もでかけたことはないのだが、世界53都市をヴァーチャルに味わえ、また、100年前にタイムトラベルが出来るというのは、読書の醍醐味ともいえる。

副題には「写真で巡る憧れの都市の今昔物語」とあり、オールカラー395点の写真が収められておいた。

さて、100年後の我が国、我が街はどのような変遷をたどっているのであろうか。


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ぴんぱ
人の世に熱あれ、人間(じんかん)に光りあれ。