人生邂逅 ・まなび編  ◆体験談から ー12ー3)

個性派ぞろいの特約店さんとの想い出 

なんといっても名古屋の商売は「三叩きの文化」に象徴され、それはえげつない。
それだけに学ぶこともたくさんあったということです。

ここでの生活は、高々2年間でしたが、私にとってはその数倍に感じられるほど濃厚でした。
すでに、宝飾店での監禁めいた話やプロダクションでの「誠意を見せろ!」のクレイマーの話はお伝えしましたが、それ以外にも寿命が縮まる話はいくらでもあります。

それでも、なんとかこの2年間を乗り切ることができたのは、苦楽を共にするメンバーがいてくれてこそです。

それぞれで担当する個性的な特約店さんといかに一体感をもって活動できるか。
一筋縄ではいかないつわものが揃っており、所員は顔では笑顔を振りまきながらも悔しい思いを押し殺し、涙を隠しながらやっていてくれたように思います。

もちろん、とても紳士的な特約店さんもおられました。

人格者の社長さんで、一時期経営が悪化し倒産寸前まで行ったことがあり、辛酸をなめながら、どうにか立て直しをされたとか。                    朝はだれよりも早く出社し、毎朝掃除をすることを日課になさっていたました。

この社長は、わたしがお付き合いした方たちの中ではもっとも人間的な魅力に満ちていたように思います。

後継者育成のためご子息を丁稚奉公としてソニーの営業で経験を積ませました。この経験と人脈を糧にその後数年をかけて代替わりを果たすのですが、深慮遠謀とはまさにこのこと。                     どの特約店さんも、創業社長からの代替わりでご苦労される中にあってまさに秀逸な社長交代劇を実現されたケースでした。

後継者を育てるとはこういうことなんだと思わされた事例でした。


個性派ぞろいの特約店さんで最後まで腹の内が見えないままに終わった例もありますが大方は、腹をくくって正面で受け止めることで、そこそこの関係は築けたように思います。

東海地区最大手の特約店さんと「保証金」をめぐって対峙したことがありました。
取引の規模に応じて、特約店さんに保証金を納めてもらう。という会社都合の方針を半ば強引に迫ったのです。

当然、反発は必至。 交渉がこじれるケースも多くありました。

三叩きの文化ですからたやすく承知してくれるはずはありません。

兎に角、1社1社できるだけ丁寧に説得して回りました。

その中で、忘れられないのが、
先ほどの東海地区一番の特約店さんでした。

社長さんに事の次第を説明したところ、「うちに保証金を要求するのか、いい度胸をしてるな!」
と、開口一番でした。

地元の盟主。歴史と伝統もお持ちで、安定した経営を続けて来られた誇りをお持ちですから、当然のご発言です。

この後を想像するとこちらは、冷や汗ものでしたが、つぎに出た言葉は。「よし分かった、1億円を即金で積んでやる」
でした。 

何が起こったのか一瞬頭が真っ白になりました。

保証金の全額は約1億円でしたが、通常はこれを分割で数年をかけて積んで行ってもらうのです。

未だによくわかりませんが、怖いもの知らずで正々堂々と切り込んできたことへの社長さんなりの落とし前のつけ方だったのでしょう。(?)

逃げずに正面突破。 

いつもいつも通用するわけではありませんが、私にとっては忘れられない
経験でした。

もちろん忘れてはならないのは、この特約店さんをひとりで担当してくれ 社員の皆さんから厚い信頼を勝ち得てくれていた担当者の貢献があったればこそです。                               土日返上で、寝る間もないほどに打ち込んでいてくれていた彼のことが思い出されます。

  それにしても、名古屋にはたくさんの想い出があります。

   また経験したいかと言われると、ノーサンキュー ですが。


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