[LTspice]シングルエンド伝送におけるベッセルフィルタ適用について
こんにちは。
お仕事の都合などで電気回路の設計などをしているため、空いた時間にいろいろ回路について考えることが多いです。
今回はシングルエンド伝送におけるベッセルフィルタの効果を確認するためLTspiceでシミュレーションしたので、その内容を個人的なメモとして書いておきます。
ベッセルフィルタは群遅延が平坦なLPFとして知られており、信号波形を極力崩すことなく高い周波数のノイズやエイリアスの原因となる波形を抑制することができます。
どちらかというと高周波回路向けなイメージでこれまで使うことがなかったのですが、意外と実用的な結果が得られたと思っています。
今回はオープンコレクタ出力の100kHzのクロック波形に1.3MHzのノイズが印可された場合の効果を確認しています。
そもそもオープンコレクタで100kHzのクロック伝送は実用的には限界近い動作仕様になりますが、vinの波形に対してvoutは1~2us遅れで伝送できていることが確認できます。
ノイズが印可された直後のtrout波形はノイズが16Vp-pもの振幅になっているのですが、十分な効果があるといえそうです。
今回使用したベッセルフィルタは回路インピーダンス47.65Ω、1個目のコンデンサが1.53nF、1個目のインダクタが10uH、2個目のコンデンサが10nFとなっています。このベッセルフィルタの遮断周波数は736kHzです。
通常の100kHzクロックに対して736kHzのフィルタは、部品の誤差を考えるとギリギリなパラメータですが、ある程度シミュレーションで調整すれば問題なく使用できそうです。
調整する箇所としては、入力段のダイオード、スナバ回路、インダクタの逆起電圧対策ダイオード、ベース抵抗、スピードアップコンデンサとなります。
入力段ダイオード、逆起電圧対策ダイオードは応答が早く、接合容量が小さなスイッチングダイオードを選定します。多少順方向電圧があったほうがよいでしょう。
スナバ回路は、今回のベッセルフィルタで減衰量が小さくなる700k~1MHz付近を軽く吸収する程度に調整しています。ベース抵抗はベース電流が0.25mA程度と小さくなりすぎな程度に調整します。温度変化やトランジスタのばらつきを考慮してスピードアップコンデンサも少しだけつけておきます。
(2024/11/9 追記)
ここからさらにダイオードを追加して、強いノイズが印可されても絶対最大定格電圧を超えないような条件を追加検討しました。
下図のように接合容量が小さめなショットキーバリアダイオード、ツェナーダイオード、抵抗を配置すると振幅を抑えつつクロック信号を伝送でき、ノイズ耐性を高めることができました。
スナバ回路の位置をトランジスタ出力端側に移動したほうが大きなノイズに対して有効なようでした。
通常はノイズ電圧10V程度でシミュレーションするところ、75Vでも動作可能でした。周波数が低く部品の定格電流をうまく選べば300Vのノイズ印可でも動作する条件があるようです。
このような回路で、100kHzのオープンコレクタ出力信号でも数m程度は届きそうです。産業用回路ではわりと近い仕様の使い方が出てくるので応用する場面も出てきそうです。
信号のノイズ周波数が近い場合はRCフィルタでは対処が難しいことがあります。そのような場面でも効果的なノイズ対策回路を設計していきたいです。