[LTspice]雷サージ試験対策回路について②

こんにちは。
お仕事の都合などで電気回路の設計などをしているため、空いた時間にいろいろ回路について考えることが多いです。
今回は雷サージ試験の対策回路をLTspiceを使って考えていたのでその内容を個人的なメモとして書いておきます。

以前の記事で、雷サージ対策としてTVSダイオードや比較的大容量のコンデンサが有効であることを確認しました。

今回はインダクタを追加した場合のフィルタの効果について確認していきます。
なお、LPFとして使用されるRCフィルタは非常に損失が大きくなりやすく現実的ではないため検討していません。

最初に、コンデンサの一部(20uF)にインダクタ1.2uHを追加した場合が以下の結果になります。TVSダイオードで吸収される電流がやや矩形波状になり、それに伴いピーク電流と電圧が小さくなっています。
ピーク電流125A程度あったのが100A以下になり、vout電圧も56Vから50V程度に下がっています。共振周波数32kHz程度のLC回路で電流を緩やかに吸収できています。

LC共振回路の効果

デメリットとしては、片振幅90A程度の電流を流せるインダクタが限られること、部品サイズが大きくコストも高くなること、インダクタンスや静電容量のばらつきでピーク電圧が変化しやすいことです。この程度の効果であればTVSダイオードを並列で付けたほうが安価かつ安定してピーク電圧抑制できそうです。

また、インダクタやフェライトビーズをシャントではなくシリーズでつけたくなることもありますが、副作用もあるので注意が必要です。
次の例では1uHのインダクタをシリーズに配置した例です。この場合はvin電圧は56V程度である一方、vout側は67Vまで上昇しています。なんとなくインダクタで電流を抑制できると思いがちですが、C11とC6の電流を比較しても有意な効果はみられません。

インダクタを配置した例

インダクタを配置した場合はダイオードで起電力を抑える必要があります。ダイオードがある場合はvout電圧の上昇はほぼなくなっています。

インダクタにダイオードを追加した例

LCフィルタはインダクタに流れる電流が大きいため、不可能ではないものの費用対コストが良くないものになっています。
有意な効果が出せそうなパラメータを調整したところ、かなり大きな静電容量、インダクタンスで20kHz程度の共振回路を構成するとピーク電圧は52V程度まで抑制できました。しかしインダクタやダイオードがかなり大きくなってしまい現実的な選択肢にはならなそうです。

LCフィルタで大きな遅延を加えた例

ここまでのシミュレーションで確認できたことは、

  • インダクタを使用した雷サージ対策は、部品サイズや特性のばらつきの問題で効果的な使用は難しい

  • インダクタやフェライトビーズを置かなければいけない場合はダイオードによる起電力対策が必要

実際の製品開発には部品サイズ、コスト、特性のばらつきなどを考慮してパラメータを調整する必要があります。
次はさらなるピーク電圧抑制のためMOSFETを使ったロードスイッチ回路の効果も調べてみようと思います。

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