interludo 1
3Dスキャンフィギュア登場以前に自分がペイントを考えることになったきっかけとして絶対はずせないファクターがある。
林浩己さんだ。
所謂リアル系女性フィギュアというジャンルを確立した人、と言ってもいいだろう。
林さんの名前はもう随分前から知っていたけれども、意識して塗ったのは某SFオリジナル作品のモデルそっくりさんフィギュアから。
それだって知人のイベント土産に買ったものだった。
まあ、そんなだからあんまり大きな声で「熱烈なファンです」と言いにくいんだよ察してよ。
や、今はファンというか尊敬する先達という感じですはい。
閑話休題。当時、林さんの造形は良くも悪くも増女のようで。
色んな塗り方を許容してくれるので、どんな表情にも変化するなあと。
まあそっくりさんはともかく、他のオリジナルフィギュアはそういう感じだった。実際それを試させてもらえた仕事もあったしね。
それでいてディテールのデフォルメはかなり控えめ(リアルより)だから太陽光の下で撮影するととても自然な影ができる。
語弊があるかもしれないが、林さんのフィギュアはきれいな肌色で塗って屋外で撮影すれば上手く塗れた気になれる。目とか細部をきっちり描いてあればそれでOKみたいなところがある。
しかも細部ほど筆先を誘導するように彫刻されていて、ほとんど迷うことがない(余計なことを考えなければw)。
ある意味フィギュアペイントの先生みたいな造形だと思ったよ。
ただそれに気付かないといつまでも上達しないっていう恐ろしいフィギュアでもある。
その林さんの造形に甘えて、いろんな塗り方を試した時期があった。
塗った物を撮影して「見る」というのは凄く怖いことで、自分の仕事を冷徹に客観視できてしまう。
で、上手く塗れてないなと思う写真を見ながらふと。
陰影を塗らなくてもいいんじゃないか。
影は造形に依存していいんじゃないか。
と思ってしまったのだった。
だって、影の塗りが上手くいってないところだけ異常に目立ってしまうんだよ…。上手く塗れないなら、塗らずに済むほうがいい。
ただ実際に単色でベタ塗りしてみたら、これがやっぱりイマイチで。
さてどうしたもんだべかーと迷走が始まった。オノレ。
さて「質感表現に特化する」というのは後にまた別のところから拝借してきたアイデアだが、造形と塗装の関係性とか陰影の必要性なんかを考えるきっかけになったのは林さんのフィギュアだったというお話。
こんな迷宮に踏み込む羽目になったのはみんな林さんが悪い。ありがとうございます。