豊 麻衣(ユタカ マイ)
これは万里子さんと、僕の日常の話。 これは私の優しい記憶のお話。 謎のアンニュイ系美人の万里子さんと 隣人かつお目付け役の僕、基本的に この2人のお話を不定期更新で短く 幾つか書いていく予定です。 2019.1.14 現時点2話まで公開
桜が咲き切った頃、このご時世なので お花見をする事も無く終わりそうな時期に 大阪市の南の端っこに引っ越した。 京都の片田舎から片道1時間半掛けて 通勤していた職場が10分で行ける様になり、 商店街も賑わってて近くに町のお銭湯も 何件か見受けられる場所に暮らす。 引っ越して2ヶ月後に仕事を辞める事に なるのはまた別のお話。 持っていく荷物は最小限にして 業者さんにお願いして先に荷物を 運んで頂きこれから住む家にまで 移動する2時間弱でここ数年の映像が 頭に流れていた。 人生
海月と万里子さん 「水族館、新しく出来るんだって?」 部屋の本棚から海洋生物の写真集を 引っ張り出してきて、パラパラ見ている 万里子さんから唐突な質問をしてきた。 初夏にしては気温が暑く、室内には エアコンと写真集の音が微かに響いていた。 「来月末からみたいですね。 隣の市の海沿いにオープンする みたいですよ。TVで宣伝してましたっけ?」 「TVは見てないけど、何かポストにチラシが 入ってたからちょっと気になってね。」 「水族館、お好きなんですか
ナポリタンもどきを求めて 今も昔も美味しいご飯を食べるのが好きで ふと気付くとご飯にまつわる話が 多くて夕御飯にナポリタンを作っていたら ふと小話を書きたくなった。 子どもの頃、祖母が作ってくれたトマトベースの 甘めのスパゲティが1番のご馳走だった。 豚ミンチ と沢山の玉葱微塵切りとトマト、 少しだけウスターソースとお砂糖が入ったミートソースが 盛られたスパゲティがとても好きだった。 大人になって外食で始めて ボロネーゼを食べた時、全然甘くなくて 何なら
恋話と万里子さん 夏は薄手のブランケット。冬は着ぐるみかと 思う様なもこもことした毛布を纏って 大体年がら年中カタツムリに擬態しているが、 今みたいな春の中途半端な季節だと、 そんな万里子さんも部屋の中で少しヨレた ルームワンピースを1枚着て、 体育座りで僕の部屋に居る。 「どうぞ。」 「あぁ、ありがとう。」 氷を入れた水出し紅茶を入れたカップを 目線を合わせずスッと掴んで口に含んでる。 「少しずつ暖かくなってきたね。」 「もう4月半ばですからね。お菓子も
今月で三十路という人生で云う所の、 立派な大人と言われるであろう年齢を迎える。 立派な大人になったか?と聞かれると かなり怪しいけど、それなりに色んな経験をして 酸いも甘いも噛み、味わい、時にはそれを 吐き出したりを繰り返してきた。 付き合う前や、付き合った後のデートは やらかしてきた事も楽しかった事も 沢山有ったと思い出に耽ってみる。 思い返すと、好きになった人にはもれなく 全員に土下座をしたい気持ちになる。 今思うと、望んだ結果は別として、 どの人も相応に良い人達だっ
カレーライスと万里子さん 実家から大学までそう遠くは無かったけど 進学を期に1人暮らしをして早6年目。 始めて作ったカレーライスは散々だった。 母の手伝いで野菜の皮剥きを何度かした時に 横で見ていた筈なのに、出来たのはカレー味の 何とも言えないスープの様なモノだった。 食べれない事は無いけど、美味しく無かった。 おまけにご飯も炊き忘れるんだから、 カレーライスが成立しなくなった。 1人でワンルームの部屋で食べるのに 3日間程掛かって少しだけ寂しくなった。 あれから年月が