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等級制度の考え方

自社の人事制度改革をすすめていますが、教科書どおりの改革(理論に沿った改革)がいちばん納得性が高いし、自分のやっていることにも自信が持てるので、いろいろと文献や論文にあたりながらすすめているところです。入口は等級制度の見直しですが、超基本的なことをまとめてみます。

等級制度の種類

社員にどのような仕事をしてもらい、どのような責任をもってもらうかは、意味のある社員区分、つまり等級ごとに設計することになります。

等級には3つの考え方があり
・人を格付けする「職能等級」
・仕事を格付けする「職務等級」
・役割を格付けする「役割等級」

のどれかを適用することになります。

「職能等級制度」は新卒主体のメンバーシップ型雇用(会社に所属)の場合、いろいろな業務を組織都合でやってもらうには汎用的な能力で仕分けするほうが使い勝手がよく、異動もしやすい。また、能力は本人の努力によって向上できるという意味づけから能力開発努力も引き出すことができる。
ただ、降格ロジックがないのでいちばん上の等級が渋滞してしまい、在籍年数=能力が高いという見方にもなるので、生産性も上がりにくくなります。

一方、「職務等級」は”座る椅子”に価値がついており、どの椅子に座るかで報酬レベルが変わります。椅子には限りがあるので、厳密に運用するとなると、座れなかった場合は退社とならざるを得ません。別部門への異動となると職務スキルがゼロ評価なので事実上の退職勧奨にもなってしまいます。また人事側でもこまめに職務記述書をメンテしないといけないので手間がかかる等級制度です。

「役割等級」は組織における役割の大きさや重さで区分するものです。組織の意図として役割に価値をつけていますが、その役割を果たせるかどうかを能力でマッチングさせるので、本人のマネジメント能力の獲得努力も引き出すことができ、職能と職務のいいとこどりのようなイメージになります。

人事制度を見直すときにはこの「等級制度」をどう見直ししていくかですが、私の経験では以下が使い勝手がよいです。

・一般職は「職能等級」
専門スキルや知識に基づいて業務を遂行することが多いため、その開発度合いに応じて区分する
・管理職は「役割等級」
組織の成果やチーム全体のパフォーマンスに責任を持つことが重視されるため、役割の大きさや重さで区分する

そもそも管理職とは?

学術的にはドラッカーとミンツバーグの理論が基盤になると言われています。

ドラッカーによる定義
成果を上げる責任を持つ人。具体的には以下の3つの責任を果たす人
1.組織の目標を設定する
2.組織の成果を測定し、改善する
3.人材を育成する

ミンツバーグによる定義
実務的な観察によると以下の3つの責任がある
1.対人調整
顧客や社内に対する利害調整を行ったり、組織をまとめたりする
2.情報収集と分析
社内外の重要な情報を収集し、分析する
3.意思決定
問題解決や将来への投資など、組織を左右する重要な事項の意思決定をする

どちらにしても、管理職は職種によらず役割は共通であるため、「役割等級」は使い勝手がよい
つまり、営業であろうと生産であろうとバックオフィスであろうと、「直接的管理」⇒「階層を通じた管理」⇒「複数組織の戦略的管理」といったように難易度が上がっていくので、それに応じて等級設計していきます。

このように一般職と管理職の等級のコンセプトを分けて考えるのがよいのですが、もっというと一般職と管理職を別の職群にすると、さらにスッキリするように思います。

次はそれぞれの等級要件の設計になりますが、職能と役割では要件の考え方が大きく違うので、それらについてもまとめていきたいと思います。