吉川卓志

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なぜ人は写真を撮るのかという疑問に対する一つの意見

以下の記事はQuoraの質問「なぜ人は写真を撮るのでしょう?」に対して私が書いたもの。回答は写真という結果を得る必要性というよりは、写真撮影という行為そのものについてのものになる。 私も趣味で写真を撮るのですが、この質問を見たときには改めて考えてしまいました。 うーむ。これは難しい・・・ 何万年も前に描かれた洞窟の壁画が残っていますので、人間は元々、物質として視覚的な何かを作る性質を持っているのだろうなと思います。 そして仰る「見る」という行為ですが、これは「誰が」とい

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      • 真面目と不真面目

        随分と前の話だけど、TVでまだ毎週時代劇が放送されていた時代、「水戸黄門」は人気の番組だったようだ。私の父も楽しみにしていて、放送していた時は毎週見ていた。 番組名はマンネリの象徴のようにも使われていたけど、でも見てみると案外シーズン毎に工夫が有って、当時のドラマとしてよく出来ていたのではないかと思う。 プロデューサーは視聴者の声を丁寧に汲んで番組作りをしていたそうだ。それが人気の秘訣だったのだろう。 写真でもX(旧Twitter)に流れて来る写真はなんか、写真のコツをガッ

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          一枚ある皮の正体は何だろう?

          上手い下手というのは勿論有るし、一口に上手いと言っても「素晴らしく上手い」のもあれば「良くも悪くも上手い」というのも有る。 でもそういう切り口とは別に感じるものが有って、それの呼び方は良く分からないのでとりあえずここでは「皮を通しているか皮が無いのか」という事にしておく。勿論写真の話。 多分、その人の人以外の何かとのつながりを、その人を介さずに感じさせるかどうかなのだと思う。 これは「対象を素直に映している」というのとも違う。そうではなくて、写真を撮ったその人がそこに存在し

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          写真を見るのには時間がかかるという事

          写真にも色々な見方、見られ方があるのではないかと最近思った。 英語で、日本語でいう所の「見る」に相当する語としてsee,watch,lookが有るように、「写真を見る」体験にもいくつか種類がありそうな気がする。 以下は、今考えている範囲でのその3種類 その写真の意味およびそれが撮られた背景を知る。もしくは解説付きのアーカイブを読む。 本になった写真集を見る。もしくは展示会場で全体をざっとチラ見する。 展示会場で、写真を見る事に没入しプリントを繰り返し細部まで見続ける。

          写真を見るのには時間がかかるという事

          風景を写真に撮っても見た時の感動は再現されない事の理由と、そうした写真に対する考え方

          以下の文章は、Quoraに寄せられた「景勝地で感動した風景を写真で再現できないのはなぜか?」という質問に対して私が書いたものである。 基本的に本物の景色で得た感動を写真で再現する事は出来ないと思った方が良いです。その理由は技術と言うより原理にあります。 写真からはその場にいる時の音も風も気温も匂いも感じられません。それに加えて、画像を見る事そのものに限って述べても、写真を見る事と現実の風景を見る事の間には違いがあります。 現実の風景を見ている時、広大な景色を同時に見てい

          風景を写真に撮っても見た時の感動は再現されない事の理由と、そうした写真に対する考え方

          「私たちが正しい場所に、花は咲かない」の紹介

          小山幸佑氏の写真集「​私たちが正しい場所に、花は咲かない」をご紹介します。今御本人がWEBに公開されていますので、誰でも全文を読むことが出来ます。 イスラエル、パレスチナ双方を取材して写真を撮り、町の人から壁の向こう側にいる人にコメントを書いていただいてその手書きの手紙と共にポートレイトを載せるという構成の本です。 いかにも世界の人が読んで喜びそうな当たり障りのない事を書いている人もいれは、催涙弾を打ち込まれてヤダなと言うのからテロリストに刺されて死にそうになった人、イス

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          モノクロ、カラー、ステートメント

          最近読んだ書籍「おしゃべりな脳の研究」の中に興味深い一文があった。 これは、創作に関するメモ書きが大量に書かれた、ゴッホの残した手紙を元に話が進められる章の一節。 写真を撮っているとぼんやりと、「モノクロ写真は形を見るのに優れ、カラー写真は記憶に訴えるのに優れる」とは感じていたが、その差が脳内で形を処理するモジュールと色を処理するモジュールが別な事に由来するかもしれないと思った。 そして何より興味を引くのは、そのモジュール間を統合するネットワークに言語が絡んでいるという点で

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          フレームが意識されるとコンテストに受かるのではないかという仮説

          今住んでいる所の近くには浅川が流れていて、なかなか景色がよろしい。 引っ越してきたときにはその事が随分嬉しくて散歩に行っていた。今でもよく行く。 当然写真も撮っていて、そんな訳だから中には自分で見てもこれは傑作だわと思える写真も時たま撮れたりする。それで、引っ越してきた時に図書館においてあったチラシで知った「浅川写真コンクール」に出してみた。 落ちる落ちる。毎年行われているのでチャレンジしているのだが、佳作にも選ばれない。しがない写真屋とはいえ、一応写真は私の本職である。こ

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          自分が愛したものは死ぬの法則

          写真は好きかと問われれば、見るのも撮るのも好きだと答えられる。でも、好きなものをを好きなように撮っているかと問われれば、それはそうでもなくて、と言うと誤解を与えそうなのであえて書くがそれは嫌いではないが、でも自分が好きなようには撮っていないのは事実だ。 特に休みの日に自分の趣味で撮っている写真について述べると、これはもう完全に受け狙いだ。自分の好きは固く封印しているのである。なぜかと言えば、自分が好きなように撮るより受けを狙って撮る写真のほうが実際受けるし、それに自分で見て

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          モードダイヤルの意味

          新しく買ったカメラには、久々にモードダイヤルが付いていた。 この際、各モードについておさらいをしておこう。 P プロフェッショナルモード 変な拘りを捨て、効率重視で仕事をする時に使用するモード。 特にストロボと連帯した調光は割と優秀。 A アマチュアモード ここで述べられるアマチュアという語は日本語での所謂素人という意味ではなく「アマチュアリズム」、つまり純粋な愛好精神の意。 被写界深度を調整して拘りの描写を愛でるモードである。 T トランスモード 精神状態を変容させ、

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          人の独り言に対する形を伴った不完全な返答

          夕方に出かけたら、時刻が小学生の下校の時だったらしく、すれ違うかられの会話の断片が耳に入ってくる。 「そして、思い切って海に飛び込んでみたら・・・」と話している人がいたのだけど、続きはどうなるのだろう? 気になって仕方がない。 別に根拠はないのだけど、この手の聞き手にとっては一方通行のコミュニケーションとアートの間には、何かしらの関連があるような気がする。 人には自分自身の中で、誰にも伝わらない会話のようなことをしている時間が有ると思う。それは例えば、頭の中で死んだお

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          夏家々

          体内の細胞はそれぞれ生きているが体外では生きてゆくことが出来ない。人も地球を離れては生きてゆくことが出来ない。細胞は見ることが出来ないし、普段それが生きていることを意識することも無い。何かを思ったとしてもせいぜい臓器単位。近所のファミリーレストランが閉店するとなると少し寂しい。でもある時そのファミリーレストランのアルバイトバイトが一人辞めた事を、誰が知るだろう? ある一時期、ほんの少しの間集まって固まって、物たちは無秩序と混沌に向かって流れる時間の川に逆らい生き物になる。生