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北米アニメ研究所2|日本のアニメファンとのカルチャーの違い&NFTについて思うこと 

本社を香港に構えながら、開発はカナダ、デザインはロンドン等、世界中のネットワークを使ってサービスの展開を行なうベンチャー企業、KLKTN(コレクション)。そんなKLKTNが発信する本noteは「北米アニメ研究所」と題し、グローバル市場での事業展開の中で築いたネットワークを生かして得た知見をもとに、北米に住むアニメファンの実態に迫るインタビューシリーズを展開します。これまで把握が難しかった海外のアニメファンの実態を、「統計情報」ではなく「エピソード」を交えてお伝えすることで、是非多くの国内のアニメ業界関係者の皆様には、グローバル市場における「日本のアニメ」の新たな価値を掘り起こし、新サービス・プロダクトを検討するきっかけを作っていただければと考えています。

前回に引き続き、「北米アニメ研究所1」でインタビューをしたメンバーが参加しているカナダの名門大学・ブリティッシュコロンビア大学(UBC)にあるアニ研(アニメクラブ)ディスコード(※アメリカ発のゲーマー用チャットサービスとして登場したコミュニケーションツール)チャンネルのモデレーターを務めるチョッキーさんにお話を伺いました。3年間にわたって同クラブの役員を務めた経歴もあり、今ではSFU(サイモン・フレイザー大学)のアニ研にも所属するチョッキーさん。バンクーバーの大学のアニメコミュニティを引っ張ってきたキーパーソンともいえる彼女のインタビューは必読です。
 

チョッキー
サイモン・フレイザー大学4年生。
好きなアニメ:『おそ松さん』『日常』『BEASTARS(ビースターズ)』

UBCアニメクラブのディスコードに、日本語チャンネルもあるのはなぜ?

あのチャンネルは、メンバーの日本語の勉強にも役立つかなと思ってやってるんだ。どのアニメクラブでも、日本語の勉強をしている人って割と多いから。ほとんどは初心者だけど、中には流暢な人もいるよ。
「JLPT」っていう日本語能力試験があるんだけど、その5段階評価でいったら一番易しいN5レベルの人もいれば、一番難しいN1レベルでかなりしっかり喋れる人も。私は、N3くらいかな。実際にテストを受けたわけじゃないんだけど、大学では日本語のクラスもとっているから、そこでだいたいのレベルが分かるの。一生懸命日本語を勉強した学生の中には、卒業後は日本で就職する人も多いよ。

日本語や日本の文化に興味津々の北米アニメファンはやはり多い。

アニメはいつも、何語で見てる?

まずは日本語音声を英語の字幕で見て、よっぽど気になったら英語版も見るかな。子どもの頃は英語で見てたけど、10代を過ぎてからは日本語の声優の声が入ったオリジナルを楽しむのが好き。だから今は最初から英語版を見ることはほとんどないんだけど、大好きな『おそ松さん』だけは別格!英語版も見てみたよ。
 
ドラマCDも持ってるって言ってたけど、それも日本語版なの?
うん。ドラマCD(音声や効果音、BGMが収録され、聞けば内容が分かるオーディオドラマ)とかそういう関連商品はほとんどオリジナル言語のものしか出てなくて、英語やほかの言語でも展開されるケースはほぼないよ。ちょっと残念だけど、仕方ないよね。

チョッキーさんの本棚には漫画など、日本語のもののコレクションも並ぶ。

キャラクターの声が違うと、だいぶ作品の印象も変わるよね。

これについては、昔から海外アニメファンの間でよく話題にのぼるよ!大半は「日本のオリジナル版の方がいい」っていう意見で、私もそう思う。日本の声優たちって、アニメファンにとってはまるでムービースターみたいな感じで、いろんな人が活躍している。だけど海外では、アニメ業界の市場が日本ほど大きくないから、声優の数も限られるの。そうすると何が起こるかというと、同じ声をいろんなところで何度も聞くんだよね(笑)。有名で、すご腕の声優...と、もてはやされている人もあまり聞かない。
日本語版を見た後で英語版の吹き替えを見た時に、あまりに声の感じが違ったりするとがっかりしちゃうことも…。
あと、声だけでなくって、翻訳の問題も大きいと思う。オリジナル版では、日本特有のジョークなんかがたくさん出てくるでしょ。それを英語に意訳すると、全然違うニュアンスになってしまうことがよくあるの。たいていの場合は、表現がセクシーだったり残酷な感じに寄り過ぎちゃう…。そうした細部からも作品の印象って変わってくるから、吹き替えって難しいよね!

じゃあ英語版の声優で好きな人はいない?

英語版でカラ松の声を演じているレイ・チェイス(Ray Chase)っていう声優さんが好き。実は、アニメイベントで会ってサインをもらったこともあるんだよね!なんと彼はもともと私のツイッターのフォロワーで、私のことを見て彼の方から気が付いてくれたの!私がアップしたカラ松のビデオとかアートを見つけて、嬉しくてフォローしてくれたんだって。 

そのほかにも、日本と海外のアニメファンの間でカルチャーの違いを感じることはある?

日本と海外のアニメファンって、すごく分断されてるなって感じるかな。海外のファンは、「日本のファンとももっと交流したい」って思ってるんだけど、言葉の壁や文化の壁があるから、なかなか難しいんだよね。それに日本のアニメファンは、私たちみたいな熱心なファンが海外にもこんなにいることをまだ知らないような気もするけど、どうなんだろう。
あと、海外のアニメファンの中には、日本のアニメスタジオとか制作者をサポートしたいと強く願っている人が結構いるよ。でも具体的なやり方が分からないのが、大きな課題かも。ブルーレイDVDや公式グッズを買うことはもちろんできるんだけど、それ以上に何か直接的に貢献できたらいいなって思っているの。海外でグッズを買ったところで、実際にはどのくらいの利益を制作者側に届けられているのかも分からないし…。

大好きな「おそ松さん」の漫画やスタイルブック、イラストブックなども日本語のものがズラリ。

率直にいうと、私みたいな海外ファンはただ寄付をしたいの。だから、「パトレオン(Patreon)」みたいなクリエイター向けのクラウドファンディングなんかも、北米ではすごく人気。好きなクリエイターが新作を作りたいなら、喜んでパトロンになって支持したいんだよね。だって、新作を早く見たいもん!海外のクリエイターとならこの「パトレオン」みたいなプラットフォームでつながれるけど、日本のアニメクリエイターとこんな風につながれる仕組みは、今のところないと思うから。「スケブ(Skeb)」とかも出てきたけど、「パトレオン」ほど直接的じゃないように見えるかな。
サブスクの定額視聴サービスも、もっといい仕組みがあればいいよね。好きな作品のすべてが公式ストリーミングサービスを提供しているわけじゃないから、見たくなったらまずはどこのプラットフォームがプロバイダーになっているのかを調べるのがいつもの流れ。だけどそこでほかに見たいものがなかった場合、たったひとつの作品を見るためだけに毎月の購読料を払い続けるのはあまり納得がいかない。「ネットフリックス」くらい幅広い作品群から選べるならいいかもしれないけど、それほど選択肢が用意されていない場合は、みんなもっと効率的にお金を使いたいし視聴したいと思うはず。
それで海賊版に手を出すような流れが蔓延しちゃうんだと思うけど、実際にはもっと効率的で納得できるサービスがあるなら、多くの人はそっちを利用すると思うな。ただお金を払いたくないという理由だけで違法なものに手を出すわけじゃないと思うんだよね。
とにかく海外のファンはみんな、制作側を応援したいと思ってる。機会さえあれば、もっと制作者たちとコミュニケーションもとりたいな!作品についてはもちろんのこと、制作現場のこととかももっと知りたいの。どうやって作っているのかとか、現場の労働環境とか。スタジオトリガーは以前カナダのイベントに来てくれたことがあるけど、もっとたくさんのスタジオの話を聞きたい!

 NFTについてはどう思う?

個人的には、私は手を付けたくないなって思っちゃう。ルートボックス(Loot boxes)とか、ビデオゲームにおける「デジタルでユニークな収集物」にまつわる技術はNFTが出てくる何年も前からあったでしょ。だから、「これからの流れは仮想通貨でなくちゃいけない」とは思っていないの。むしろ、今みんなが一斉に「NFTがこれから来るからトレンドに乗らないと!」って意気込んでいるのを見ると、違和感を持っちゃう。
メタバースも、好きじゃない。「VRチャット(VRChat)」みたいなところで既に完全無料でもっといいサービスが使えるんだから。カスタマイズ機能にも優れてて見た目も何倍もいいし。あれは、無料でオープンソースなのが本当に素晴らしいと思う!

でもNFTには、クリエイターにもっとダイレクトに大きな対価が支払われる側面や可能性もあるよね?

それもよく言われるけど、逆にいうとAIチャットボットが許可なく誰かのアーティストの作品を盗んでマネタイズするケースもある。この誰でもNFTを使ってミント(スマートコントラクトを使って、NFTを新たに作成、発行すること)できてしまうみたいな特性が、危険じゃないかなって思っている。アーティストがより儲かるといったって、そもそも彼らがNFTを発行するのにもお金がかかるわけだし。
これはあくまでも現時点での私の見解にはなるんだけど、暗号資産とかNFTのシステムには、ユーザーを詐欺から守るためのセキュリティシステムがあまり確立されていないように感じるんだよね。日本はどうか分からないけど、北米では実際にここ3年くらい、NFTにまつわる詐欺とかよくない話がたくさん出回ったの。ラグプル(出口詐欺)とかパンプ&ダンプ(価格操作)、ポンジスキーム(あたかも資金運用によって生じた利益を出資者に配当しているかのように装う投資詐欺)やハッキングが広く行われてきた。
私は、過去に銀行のフィッシング詐欺に引っかかりそうになったこともあったから、特にこういうリスクには敏感なの。私が被害に遭った時は、銀行の詐欺防止システムのおかげですぐに解決して、実際にお金を失うことはなかったんだけどね。
そんな背景もあるから、「儲けるためには、とにかくほかの人よりも早く買わないと」っていうような今のNFTのカルチャーには疑問を感じる。トレンドに置いていかれたくないからって、よく考えたり調べたりもせずに急いで大金を投資したくなってしまうような危険性をはらんでると思うから。
私自身、グラフィックデザイナーとしてアート活動もしているし、ほかのアーティストをサポートすることも大好きなの。だから、なるべくファンとクリエイターの中間点で発生する手間やリスクの心配をすることなく、直接的にクリエイターを支援したいんだよね。例えばスケブとかでは、見てる人が何か気に入った作品があればアーティストに送金の申請をして、作り手が認めれば取引が承認される。そうすれば詐欺みたいな余計な心配もいらないし、NFTを使わなくてもやり方はあるんじゃないかな。

過去のインタビューでも日本のクリエイターをサポートしたいという声が上がりましたが、今回はNFTに関する率直な意見とともに、改めて、北米アニメファンの想いが聞けた回でした。次回はいよいよ、そんなチョッキーさんがアニメにハマった理由や、好きな作品・キャラクターに迫っていきます。4月中旬公開予定です。

今後も更新情報をお知らせするので、KLKTNのTwitterや、noteのお気に入り登録をお願いします。また、KLKTNでは、アニメファンがお気に入りのアイテムをデジタルで共有・収集できる新しいアニメキュレーションプラットフォーム「Weebox(ウィーボックス)」のリリースを予定しています。「Weebox」に興味があるアニメ関係者の方や、「北米のアニメファンの実態をもっと知りたい!という方は、以下のフォームからご連絡ください。


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