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音楽エッセイ『半年後、弟たちは…』ピアノ講師・高岡紀美子作品

 19世紀。ドイツの作曲家メンデルスゾーンは“4歳年上”の姉ファニーと仲が良く、ピアニストである彼女にいつも音楽的助言を仰いでいた。書きかけの草稿を手渡しながら、弟は言う。「このつづきは、姉さんが作曲してください。あなたの作り出す旋律はとても美しく、気品があり、その才能は僕の誇りです」。彼の代表作である『春の歌』や『ヴェニスのゴンドラの歌』など、48曲の“無言歌”の多くが、実は、姉の作曲だったとか…。

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 同じく19世紀。フランスでは、自分の魂を絵画で表現しようと、狂ったように描きつづける画家ゴッホがいた。「絵が売れない!」。彼は弟テオからの送金で、かろうじて食いつないでゆく。“4歳年上”の兄ゴッホを励まし、毎月、生活費や絵具代を送りつづける弟に、ゴッホは手紙で詫びる。「…すまない」。やがて、すべてに絶望したゴッホは、37歳の夏、麦畑に立ち、ピストルを自分の胸にあてて発射した。

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 38歳のとき、最愛の姉を脳卒中で失ったメンデルスゾーンは、激しいショックのため自らも脳卒中を起こし、“半年後”、あとを追うように息をひきとった。一方、ゴッホの自殺に正気を失った弟テオは、心身ともに崩壊。やはり“半年後”、精神錯乱のうちに帰らぬ人となる。2人の弟にとって、姉や兄は内面を語りあう唯一の相手であり、生きがいだったのか…。固い絆に支えられた姉弟の『無言歌集』から、切ないほどの優しさが伝わってくる。


                       2003年4月9日岐阜新聞掲載


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