『シンジケート』諸版について
この文章のいいたいこと
関係なさそうな文章が続いてわかりづらいですが、この文章でいいたいのは
と、いうことです。
『シンジケート』講談社版
発売されました。まずはこちらを見てみましょう。
透明カバーに4色で絵が入っています。帯は白。
カバーをとると1色のイラスト。コデックス装でひらきがよいです。
かつての栞文は本冊に収録。
「新装版に寄せて 書けなかった一行」(高橋源一郎)、「新装版あとがき」(穂村弘)が追加されました。
本文には楽しいしかけも(ピンぼけ写真です)。私が買ったのはレモンだったけど、他に2種類あるという。つまり、『シンジケート』講談社版は3種類あることになる。こちらもヒグチユウコさん描きおろし。
帯の裏表紙側は六首抄出。表紙側の大島弓子さんの帯文は沖積舎版からひきつがれましたが、裏表紙側の丸山圭三郎さん・高橋源一郎さんの帯文はなくなりました。
この写真だとよくわかりませんが、本体の裏表紙にも1色イラストがあります。
講談社版は電子版もあります。穂村さんの歌集の電子版は『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』文庫版に続いて2冊目です。
https://www.amazon.co.jp/dp/B093H153LK/klage-22
https://www.amazon.co.jp/dp/B00IJ29VCY/klage-22
『シンジケート』沖積舎版ざっくり分類
穂村弘さんの第一歌集『シンジケート』の沖積舎版は、おおまかにわけて3つの版にわかれると思われます(日付は発行日)。
書影で見る範囲だとどれも同じようなものです(装幀は藤林省三さん)。この文章は、この3分類が妥当かどうかを考えるものです。
・体裁から考える
(A)と(B)(C)はハードカバーとソフトカバーですから、実際に見てみると違うことが一目でわかります。版型はどれもA5で、表紙デザインや帯の表側の文言はまったく同じなので、モノクロの書影だと微妙です。
(A)はビニールカバーがあるものとないものがあるようです。ないものは写真がテカらないようにとられたものかもしれないし、元からないのかもしれません。
体裁で考えると
の2つに分けられます。
余談。
私は2006年のは「重版」だと思っていたのですが、国会図書館の検索で「新装版」としていることに気づきました。(B)と(C)ってあまりちがいがわかりませんが、ISBNがちがいますから別書籍扱いということになるのではないかと思って見てみると、古いほうの発行年が1990年。つまり(A)と(C)が登録されている。収蔵されている現物を閲覧してみたところ、(A)は「寄贈 穂村弘殿」とある。沖積舎さんは(A)も(B)も納本していませんでした。国会図書館的には「(A)の次に(C)」ということになります。
・発行日から考える
上では「いちばん早い発行日」は下記であるとして書きました。
「いちばん早い発行日」ってもってまわった言い方をしたのは「初版」とするとちょっと違うのではないかというのがまぎれているからです。
『シンジケート』奥付は重版とわからない書き方していることがあります。古い本は返品されやすいので、営業的理由かと推察します(その他社内的事情があるのかもしれませんが)。
現時点で確認できている発行日は下記です。
1998年の4刷の時だけ初版発行日と刷り数の記載があり、他はありません。「重版」と入っているものは初版ではないとわかりますが、他のものは「年月日発行」のみなで、初版情報はありません。データで知っているか他のものを見るまでは、手にしたものが初版と思ってしまいそうです。
「4刷」には初版の年月日がありますので、(A)からということになります。その場合、初版~4刷までは判明分で日付確定していることになります。
ただし、4刷から新装版までは8年ありますから、おそらく5刷以降も存在すると思います。
発行日の状況で考えると
と、いうことになります。
・ISBNで考えてみる
世の中(の一部)には「ISBNが同じなら別体裁でも同じ本」=「本文が同じでもISBNが違えば別本」という考え方があります。※
『シンジケート』の場合、私が把握しているISBNは3つ。3つのISBNが(A)(B)(C)に割り当てられていれば話は簡単なのですが。
まずおさえておきたいのが
……ということはISBN準拠だと(A)(B)が同一書籍として扱われることになるように思えます。(A)(B)同一の本ということでいいんじゃないのーと思いますが、ややこしいのが、(B)の途中でISBNが変わっているのです。ISBN準拠だと、
という分けになってしまいます。が、これは実見していると違和感のある分け方です。出版社は現場優先で、分類する人のことは考えませんからルールなどないというかどんどん変わっていきます。これが悪いという話ではないです。
・沖積舎版まとめ
読者感覚だと、(B)(C)の差異は、増補というほどでもなく加筆修正の範囲かと思いますので、「(A)」「(B)(C)」というグルーピングのほうがしっくりくると思います。しかし、(C)は版元が「新装版」としていますから明確に別物です。
と、いうことでこれらを総合して、最初に述べた「(A)」「(B)」「(C)」の3つに分けるのが妥当と現時点では考えています。
『シンジケート』各版写真と付属物
(D)を講談社版とします。(C)は手元にないので(A)(B)(D)の写真をアップします。
(A)
(B)
(D)
『シンジケート』諸版のまとめ
細かいところを見ていくとキリがありませんが、下記の図のようにまとめられると思います。
『現代の第一歌集 次代の群像』(編・田島邦彦、ながらみ書房、1993年5月刊)のアンケートによると『シンジケート』初版(つまりこの記事の(A))は1000部発行とのこと。その後の増刷具合は不明ですが、講談社版とあわせるとかなりの部数いっていると思われます。
(おことわり)
書いてないけれど、(A)~(C)の間に下記が変化していますが、煩雑になるのでこの文章では扱いませんでした。
おくづけ情報は下記閲覧にて得たものと下記の皆様より御提供いただいたものがあります。ありがとうございました。
@taqueshix 様
@mutsutom 様
@may_yensid 様
ご協力および図書館蔵書により下記の版を確認しています。ありがとうございました。
未確認の版をお持ちの方は情報お寄せいただけますとうれしいです。
(A)1990年10月30日
(B)1991年07月30日
(B') 1993年07月30日
(B')1998年10月20日
(C)2006年08月01日
(C')2012年11月12日
(C')2018年01月10日
(D)2021年5月21日(紫)
(D)2021年5月21日(黄)
(D)2021年5月21日(赤)