2021七夕の水葬物語
見てきました。
『水葬物語』と三島といえば、まず「文学界」1952年9月号のことが思い浮かぶと思います。この号には『水葬物語』から「環状路」10首が転載されています。
「環状路」というタイトルですが、『水葬物語』の「環状路」の章からの構成ではなく、いろんなところからとられています。6首までは少女と少年の出てくる歌で、後は虫だったり聖母だったり、オルガンだったりみたいなカンジ(ザツな紹介)。10首一連である程度一貫性をもって読めるように構成されています(短歌の雑誌に掲載される抄出だと「いい歌」「テーマに沿った歌」から選ばれることが多く、抄出が一連として読めるとはかぎらない)。
これが三島の推挙によるものだと塚本年譜にあります(年譜数種類ありますがとあえずゆまに全集版にて確認)。とはいえ、私の見た範囲では、三島の側から「推薦しました」みたいな文章出てないのです。もちろん私が知らないだけであるのかもしれませんが、まあ、つまりそういう程度の調査してなさ具合です。
こういう状況ながら、三島はどう読んでいたのかというのが私の興味のあるところでした。「文学界」の「環状路」にはいわゆる『水葬物語』でよくひかれる歌が入っていません(※)。推薦して掲載はいいとして、この10首の構成を誰が決めたのか。三島の意向は反映されているのか。
で、現物を見ての感想。
・帙入。写真で見ると外装がボロいけれど、本文はヤケがある程度で意外ときれい(年代と紙質からしてヤケはどうしても出ると思います)。
(ボロくなった後に保護されたということになので)帙は後年のものと思われるけれど、誰がつけたんだろう。掛け軸の一文字に使われるような模様の入った布が使われていて独特のムードがある。
・献呈署名はこのころはおなじみだった「女学生のような字」。『水葬物語』初版でも、筆文字だと署名時期は後のものの可能性が高いと思います。
・一番有名と思われる巻頭歌「革命歌作詞家~」の歌にチェックが入っていない。
・チェックは2種類の記号が使われている。2回チェックしている? いつといだろう(初読時と「文学界」用と考えるとキレイだけれど手がかりはないので、あくまでも推測)。
・チェックはだいたい2割程度か?(個人の体感です)
・チェックは続くかと思えば、ないページもけっこうある印象。「パソ・ド・プレ」はまったくチェックがない。
疑問に対する答えはわかりませんが、おそらく唯一のヒントな訳で。それをこうした機会に手に取って見ることができたのは、幸運でした。
https://meijikotenkai.com/2021/detail.php?id=46783
※このことはすでに指摘されている。たとえば、和田大象さんのブログ。
第10回 水葬物語
2019年11月16日
https://taizoo.com/?p=15325
https://twitter.com/taizoosesame/status/1193096167166398465