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「海図」のころ

 「同人誌「海図」総目次」をアップした。

同人誌「海図」総目次
https://note.mu/klage/n/n60afce97ddd2

 少し前に「海図」と「柑」の山が発掘された。ふたつとも私がかつて参加していた同人誌です。「発掘された」というと嘘があって、発掘は数年前の話でそれ以降、割と手の届くところにあった。「出てきて数年放置していたのをやっとひらいた」というのが正しい。

 興味のある人がそんなにいるとは思えないけれど、目次作成をしていたらいろいろ気づいたこともあるので自分用メモをかねてこの記事を作成します。

「海図」のはじまり

 「海図」は短歌人の結社内同人誌のひとつ。1992年4月から1996年1月まで刊行。結社内同人誌というのも謎といえば謎の言葉だが、基本、1つの結社の中で有志を募って出す同人誌のこと。刊行中に退会等、諸事情により同人に結社外の人が入ることはある。

 「海図」は藤原龍一郎さんに選歌を受けている人が中心になって作られた同人誌。もっと言えば、「黄昏詞華館」※に投稿していた人に声をかけて作られた。フジワラ選歌・詞華館投稿の片方にしかあてはまらない人もいた。
 5号から長江幸彦さんが参加していることからもわかるように、大会で会った人に声かけたりしており、途中からは必ずしも「藤原シスターズの機関誌」ではありません。

※「黄昏詞華館」は雑誌「小説JUNE」の詩歌コーナー名で、藤原龍一郎さん選で投稿作掲載枠があった。このnoteの他の記事でもときどき出てくる言葉なのでおぼえてくれるとうれしい。

 創刊号の「編集後記」によると「藤原シスターズの機関誌みたいなの、出したいねぇ」と水上杳さんが言ったのがそもそものきっかけだそう。
 ちょっと前段階の話をすると、藤原さんが編集委員になって詞華館から短歌人に入会する人が出て、それまで文通しかしていなかった人たちが歌会等で交流を持つようになったのです。当時、一部の人からフジワラ選歌の人たちは「藤原シスターズ」と呼ばれていたのです。プロレスにちなんで「フジワラシスターズ」という表記の場合もあった。もしかしたら呼んだ、なのかもしれません。最初が自称か他称かを知らないのです。「シスターズ」といっても「長女」と目されていたのは川本浩美さんであり、性別関係ないです。
 私は創刊時にはいなかった(当然「藤原シスターズ」の名称ができたころもいない)のでこのへんは伝聞です。詳細不明。ちがっていたらすいません。

 目次を見てもらえればわかるだろうけど、数名をのぞいて文章を書きなれていなさそうな気配がする。タイトルがぎこちない。もちろん私もそのひとりで、他人の短歌に批評文を書くこと、短歌についての文章を書くこと、選歌なしで十首(以内)載ること、題をつけること、詞書をつけること……これらを私は「海図」ではじめて体験した。

 短歌を書き始めて半年ほどで同人誌に参加しているのだから、今思うと怖いもの知らずだったとしか言いようがない。ただ、「短歌人」入会前から「海図」同人の何人かとは文通していたので、お誘いも「短歌人にようこそー、「海図」もどお? みんないるよー」くらいのノリ。「知らないところへ行く」というカンジではなかった。

「海図」の内容

 本文が16ページから54ページと幅があります。内容も号によって増えたり減ったり。
 当初の編集意図はともかく、下記のような企画がレギュラーとしてあった。

・「自作自解」がつく巻頭作品
・通常作品(10首以内)
・誌上歌会
・同人紹介
・ブックレビュー
・リレーエッセイ
・一首評
・前号批評
・お便りコーナー(おたよりコーナー)
・編集後記

 厳密に毎号すべての企画が掲載されていたのではなく、休みの時もある。巻頭作品は10首超えることも。

 単発企画(1~2回程度)は下記。

(単発企画)
・リクエスト再録(創刊号のみ)
・夏の会レポート(2回)
・ブックレビュー特集
・ティータイム(詩の紹介コーナー)(1回)
・特別作品(1回)
・終刊特集

 「ティータイム」は1/2ページで特に説明なく山村暮鳥の詩を掲載するという囲み記事。埋め草と思われる。

 創刊時にはみな会員で掲載歌数も少なかった。結社内同人誌というのは結社誌でできないことをするもんで、10首というのはそのあたりから決まったのではないかと思う。

 今読むと「誌上歌会」がおもしろい。「誌上歌会」は無記名の詠草が郵送されてきて、それにコメントつけて青柳さんに返送(もちろん手書き)。青柳さんが歌ごとにコメントが並ぶようにワープロ入力しつつとりまとめるというやり方でした。今思うとすごい労力です。
 親しい人たちでやっているので、「こういう物言いで通じるだろう」というレベルでやっている。そういうザツな部分に勢いがある。内輪の掲示板歌会でも、もう少していねいにやるんじゃないだろうか。
 当時の私は歌評を書くなんてやったことなかったので、こういうところだからまだ書けたんじゃないかと思います。

 「海図」は校正などなく、原稿出したら後は藤田さんにおまかせでした。当時の同人誌で自分たちで版下を作っているところはそういうところが多かったと思う。原稿の誤字脱字もそのまま誌面に出ます。編集時の誤字脱字もあったけれど、自分の原稿に関しては「私が悪かった」ということばかりです。
 ここからは推測も含みます。おそらく1冊内で統一をとるということをしてなくて、かなり「原稿と一致」の方針が強かったみたいです。ある号で改名した人が同じ号内で改名前の名前で記事を書いていたりする。たぶん原稿提出時の名前のとおりなんだと思います。

「海図」の刊行頻度

 裏表紙に「季刊短歌同人誌〔海図〕」とある。このカッコ〔 〕って玲瓏の人が好きなヤツなんじゃ……と思ったら玲瓏はこっちのカッコ[ ]だった。

 季刊だったのです。1月、4月、7月、10月刊行でスタート。1月と7月は短歌人の全国大会あわせです。編集委員への贈呈は手渡しでした。
 実際の刊行は下記ペースです(発行日ではなく表紙に表示されている月を記載)。

vol.1  1992.4
vol.2  1992.7
vol.3  1992.10
vol.4  1993.1
vol.5  1993.4
vol.6  1993.7
vol.7  1993.10
vol.8  1994.1
vol.9  1994.4
vol.10 1994.10
vol.11 1995.11
vol.12 1996.1

 9号まではきっちり出しています。10号が9号の半年後の刊行。11号が10号の13ヶ月後の刊行です。12号が11号の2ヶ月後の刊行なのは、1月刊行にもどしたかったからではないかと思います。この年の新年歌会に間に合わせたはず。

「海図」の執筆者

 私の記憶では誰が執筆者で、誰がゲストなのかよくわかっていなかったのですが、藤田さんがちゃんと編集後記で新同人の紹介をしていました。これにより、柚木圭也さんは8号から同人として参加なので、5号執筆時にはゲストだったことがわかります。
 同人は、創刊時15名、途中参加6名です。短歌やめた人やお休みに入った人がいらしたりして、「いつまで」の部分は不明。同人とゲストの名前を一覧にします。

(創刊同人)
青柳守音
秋山裕子
迦楼羅院妃見(吉名萬記)
烏丸右子
川村廣実(河村廣実)
川本浩美
志生野香夜
篠宮千秋
橘夏生
時田とくる
水城よしの
水沼典子
水上杳(藤田景子)
南沢和美
山本奈於子
(2号から参加)
花笠海月
(5号から参加)
長江幸彦
(6号から参加)
木戸浅一
(8号から参加)
柚木圭也
(9号から参加)
香月桐子
館石正男
(同人別名義)
高山いずみ
吉田夏紀
(ゲスト)※アンケートだけの人も入れています。
泉慶章
宇田川寛之
小木晶羽
小池光
仙波龍英
高瀬一誌
鶴田英之
藤原龍一郎
三井ゆき
八木博信

 「同人別名義」は今となっては何を根拠にしているかは証明のしようがないのですけれど、当時そのように聞いていたということです。「短歌人」を調べてもこの名義の人はいないはず。1回しか書いていない人たちですけれど、ゲストとは別枠にしました。

「海図」の読者

 私が発行人ではないので部数など不明です。寄贈していたのだろうか。社内活動は編集委員全員に寄贈のルール(って明文化はされてませんが)があるので、そこはしていたと思うけれど、外部はどうだったんだろうか。オフセットになってからはしていたかもしれない。コピー誌時代はほぼ結社内で終わっていたと思います。
 終刊特集でアンケートをとっていて、回答しているのが結社内で買ってくれていたり、寄贈していたりした方々。この方々が唯一目に見える読者といえるのかもしれません。

「海図」終刊号

 終刊号である12号は私が編集しました。しかし、どうして編集することになったのか記憶にありません。青柳さんから頼まれてやったような気がしますが、その前に何がしかの打診というか根回しというか話し合いがあったはず。そのあたりは不明です。本当に私が知らないのか、記憶がないだけなのかがよくわからない。

 これは後に作った本もそうなのだけど、とにかく本として見るのがキツい……。当時の自宅プリンタの性能に限界があるのでそこはいいとしても、レイアウトがレイアウトじゃない(見ればわかる)。

 表紙と裏表紙は同人の川本浩美さんが創刊号から担当。プロなのでそこはちゃんとしてます。ただ、素人編集が版下を作成をしている状態(途中まではホチキスどめのコピー誌だし)でデザイナーの意図をどこまで再現していたのかは不明。

 後記によると11号と並行してやっていたらしいです。

 内容はレギュラー企画をなくさない方向でやったのではないかと思います。企画まわりは私がひとりでやったのではなく青柳さんと典子さんといろいろ話し合ってやったような気がする。版下ををどうやって作ったのかはほぼ記憶ななく、座談会のテープおこしが大変だった記憶しかない。作品原稿が一番遅かったのは柚木さんで、直接手渡しで受け取ったのはおぼえている。
 アンケートのメンバーも今となっては謎メンバーで、どうやって依頼したのかわからない。歌会で根回ししたんだろうか。今このメンバーに書いてもらおうと思ったら(故人はともかく)、内容とタイミング次第でできないことはないだろうと思うけどむずかしい気がする。

 私が把握しているかぎりで同人2名、ゲスト2名が故人。ほんとうにかなしい。


くぎりせん


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