塚本邦雄『紺青のわかれ』電子版
※ネタばれを気にする方は読まないでください。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0B5RT2Z9L/klage-22
日記というか月記になりつつある日記の一項目にするつもりで軽く書いていたら、意外と長くなったのでnoteの記事として立てます。長くなったといってもたいした内容でないです。
電子版をきっかけに書いた記事というだけで電子版独自の話はないです。
DMM夏のスーパーセールで塚本さんの『紺青のわかれ』を買ったんです。電子版はべんり。
読むの何年ぶりだろーか。以前、青柳守音さんがあげておられて、「再読しないと」と思っていたもの。図書館もあるし全集もあるしで、特に探さなくても読める訳で。読む機会はいくらでもありました。
そういう訳でいったい何年放置していたんだーと思うけど、そんなもんなのです。
で、表題作の「紺青のわかれ」。「海」1970年10月号初出。
まず「おや」と思ったのがここ。
もちろんここから連想されるのは三島です。とはいえ『豊穣の海』4巻の発売前にこの小説は出てますから、言葉として「おや」と思うだけで関連あるものではないでしょう。たぶん。調べてないけど広告は出ていたでしょうし、「天人五衰」という単語を塚本さんが当時知らなかったのではという話ではありません。何か断言するにはもっと情報が必要です。
これは私は割とどーでもいいのでこの話はここまで。
次に「おや」と思ったのはこれ。
思惟との対談が掲載されており、「まことの男の愛は肉から生れて形而上学的に高められるといふ、牽強付会なソドミュートピア談義」(同書同ページ)※という内容だと書かれています。少なくともこの記事は男色を扱っています。
「獣帯」で男色といえば、「アドニス」50号掲載の別名義の小説「獣帯」が想起されます。「ソドミュートピア談義」なんて書かれなくても、思惟と穂丈が男色について語り合う関係であることが(ごく一部の読み手には)わかるようになっているのです。
男色についてはここでの匂わせに反応するまでもないことで、下記描写があります。
このあたりで穂丈と真昼が関係していることが割とはっきりと書かれています。
穂丈が旅に出たのと思惟はたぶん関係ないです。未央子の陰謀の範囲内という意味では関係ありますし、人間関係近いですから関係あるかもしれないけど、未央子の「夫にまとわりつく男どもがうっとーしーんですが?」という話のほうがここでは大事(そんな話だったっけ?というご意見は承ります)。悪いけど、そこまでの関係がはっきりわかるほど説明されていない(そこまで書くと下品だし、察しろということかもしれないが、この描写で察する必要がないということでもあります。そこは読者の自由)。ならばなぜこれをここで出す必要があるのか?
p.93に「おわかりになつた?」という未央子のセリフがあるんですが、これ、たぶん「私わかっちゃった」でもあるんです。たぶん。いや、あんなことしておいて知らないもなにもないんですけど、ここで男色の話をもういちど出すのがネタばらしのために必要な手続きというかそういうものなんだと思うんです。
それにしても「アドニス」50号って1959年ですよ。そこから11年経ってまた「獣帯」を使っているんです。ちなみに18年後の1977年に「獣帯通信」(初出「郵政」1977年10月号、単行本『断言微笑』収録)というものもあります。こちらは男色とは関係ない電報についての正かなづかいガチ勢っぽい短文です。天文の話とも関係ありません。タイトル未回収。
つまり、私が言いたいのは塚本さんなんでそんなに「獣帯」という言葉が好きなんでしょうかということです。それが今回読んで気になったことでした。
余談
この話、いまどきのBL小説(主人公視点)の構造で書いたものも読んでみたいです。今だったら未央子がだいぶ変わると思うので、昭和設定でないと苦しいと思います。その他いろいろ無理があるのは承知しておりますが、ほだひるのえろいシーンが読みたいです。
「陽をまともに見られぬ」(心理)とか書いている割には初手が外だったりして、むちゃくちゃ陽にあたってます(物理)。わかるんだけど! わからない! ……みたいな話を青柳さんとしたかった。「柑」が終わってからあまり電話しなくなったのが敗因です。ほんとうにかなしい。
トップ画像はラストシーンにあわせて空が写っている写真を7月撮影のものから選びました。さすがにロールスロイスが通っていそうな場所の関西の写真はなかった。
追記
https://twitter.com/hanaklage/status/1578690027944841216
https://twitter.com/hanaklage/status/1578690030922780674
20221008 追記的tweetをしたのでつけくわえました。