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「創」1989年4月号

 知り合いが雑誌捨てる前にぬいていいよ、というので「創」1989年4月号(創出版)をいただく。

 特集「ベストセラーの研究」。
 当然『サラダ記念日』(俵万智、河出書房)の情報あるかも? という期待があってのことです。p.35に「88年 年間ベストセラー」という表があり、『サラダ記念日』は25位。『サラダ記念日』と同年12月に刊行された俵さんの『とれたての短歌です』(角川書店)は18位。

 『サラダ記念日』の売行きが1988年に入ってから勢いが衰えた……というか1987年の勢いはキープできてなかったのは知っていたので25位でも「こうなりますよねー」という感想。
 
(『サラダ記念日』ここまで。)
 
 「88年 年間ベストセラー」(p.35)で注目してしまうのは村上春樹。『ノルウェイの森(上・下)』が2位、『ダンス・ダンス・ダンス(上・下)』が6位。
 前沢直人「文芸書久々のミリオンセラーが生んだ"村上現象"」という記事があります(p.36-43)。この記事によると『ノルウェイの森』が31刷373万部(2/17時点)、『ダンス・ダンス・ダンス』が7刷96.5万部(1/31時点)だという。

 『ノルウェイの森』の部数の話になると必ず「でもあれ上下巻だから実質1/2でしょー」というつっこみを受けるのですが、半分だとしても180万部は超えてます。文芸書でのこれだけの部数というのは特異であると思います。しかも『ダンス・ダンス・ダンス』もある。

 「村上春樹は『ノルウェイの森』以前から売れてたのでは?」というつっこみも当時の記憶がある人からうけたことがあります。この記事中、「「村上さんの長編小説はいつも十五万部はいくんです」「各社きちんと同じ数字」とあり、『ノルウェイの森』は「二十万部を越えることが出版部と村上さんの目標だった」(p.37)とあります。文芸書で10万部越えるのならば立派なものです。『ノルウェイの森』以前から売れていたのは事実といえば事実なのですが、ケタが違います。『ノルウェイの森』で「文芸書としては売れている」から「売れている」になったということです。
 
 1987年のベストセラーの表はありませんが、おそらく『サラダ記念日』が独り勝ちだったはずです。文芸書(村上記事では歌集は文芸書の仲間に入れてもらえてませんが……)ましてや歌集でこの数字。『サラダ記念日』は世紀の、とまではいかなくても80年に1度の歌集であるとあらためて思いました。 

 


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