見出し画像

平英之「アイデアの一致をめぐって」時系列整理

前提

 まず前提として。

 アイデアの一致・類似について争うことは、基本的にはよほどの信頼関係が成立していないとむずかしいです。

 アイデアって「思いつき」の一種なんですけど。
 「思いつき」は誰にでもあることで、そして「思いつき」と「その人しか思いつかないアイデア」は境目がありません。人によって判断のブレが出るようなことは、客観的判断がむずかしい。
 著作権でアイデアは保護されていないという一点をもってしても、それはおわかりかと。

 価値観がある程度一致している、互いに理解しあっているという間柄でないと、アイデアの一致・類似について語り合うことはむずかしいと思います。
 もちろん、ざっくりした話、たとえば「『装飾楽句』と『土地よ、痛みを負え』ってパクリあってるんじゃないの」程度の話をすることはおそらく誰とでも可能です。しかし、一首ずつあげて話していくと、「別に似てないのでは」みたいに意見がわかれることは多々あるでしょう。
 歌の話と評論の話はちがうのではないかと思われるかもしれませんが、アイデアの話という意味では同じです。私が書いているような短歌史にかかわる事実と思われていることでもまったく確定的なものではなく、人によって認識がことなるあいまいなものであるということが共有できればよいです。

 なので。今回の件は私がどういう意見であるという話ではなく、客観的に見て各自が判断すべきと思います。
 意見がないというより、「各自が判断すべき」という意見であるというほうが正しいかもしれません。

今回の件とは

 今回の件とはなにかという話をします。下記2つの文章がありまして。

・桑原憂太郎「口語短歌による表現技法の進展 三つの様式化」
(「短歌研究」2022年10月号掲載/第40回現代短歌評論賞受賞作)
https://www.amazon.co.jp/dp/B0BG15XKNS/klage-22

・平英之「かつてなく老いた涙目の短歌のために」
(ウェブサイト「TOM」2020年6月19日公開)
https://tomtanka.tumblr.com/post/621355012442980352

 この上記2つの文章のアイデアに類似点があると、平さんは考えているのでそのようにnote記事で主張したというものです。

 平さんのnote記事。

アイデアの一致をめぐって|taira hideyuki
https://note.com/taira_hideyuki/n/ne049f9a0611b

 この記事によりますと、平さんはまず短歌研究編集部に問合せをされました。編集部は対応してくれて、桑原さんに確認をとりました。
 具体的にどういう文面のやりとりだったかは不明※ながら、「「平英之」の書いたものは読んでおらず、そもそも「平英之」という人物を知らない」という回答を得たとのことです。

※実際の文面が知りたいという話ではないです。文面+シチュエーションで話が変わってくるので、深追いしたいのではないです。
 平さんの問合せが、前後から不穏な雰囲気のものでないと推察されますが、いきなり受け取った側がどう思うかはわからないです。そのうえで、編集部がどういうタイミングで、どういうやり方が桑原さんに確認したのかがこちら(外野)からはわかりません。
 たとえば、「平さんの問合せ内容をそのまま桑原さんに送って簡単な文言で確認」と「編集部がやさしい雰囲気の作文をして確認」とでだいぶ受ける側の印象が変わると思うのですよ。
 つまり、「具体的にどういう文面のやりとりだったかは不明ながら」というのは、細かいことは外野は知らんがな、というのを共有するための文言です。

 ここに至って平さんは「書き手として私が自分で公に主張していくことだという話になりました。」という認識になり、記事の公開に至ったということです。

 それはいいんですけど。
 時系列がわからなくなってきたので、私の整理用にここにまとます。私の主観が含まれることをおことわりいたします。

 この記事中で「アイデアの一致をめぐって」と書いた場合、平さんのnote記事のことだと思って読んでください。頻出するのはこの記事の整理を行っているためで、以下、特に作者名や注記、リンクなく出します。


時系列整理(前段階)

2015年01月25日

 ブログ「桑原憂太郎雑記録」開設。最初の記事は「『夏にふれる』 野口あや子歌集」。「短歌人」掲載の書評転載。
 開設のご挨拶のようなものはないので、残っているなかでは、この記事がいちばん古いというだけかもしれないです。

2019年12月

 ブログ「桑原憂太郎雑記録」、この年の記事は9本。
 短歌の話題はどこかからの再録が基本だったのが、「歌会についての雑感」からブログ発の考察記事となっていきます。

・「穂村弘『水中翼船炎上中』を読む」3本(「かぎろひ」からの転載)(2018年からのつづき)
https://kazehouse.hatenablog.com/entry/2019/10/28/190002
https://kazehouse.hatenablog.com/entry/2019/10/28/190151
https://kazehouse.hatenablog.com/entry/2019/10/28/190406
・「穂村弘『水中翼船炎上中』にみる、オノマトペ技法の効用」
https://kazehouse.hatenablog.com/entry/2019/10/28/190854
・「歌会についての雑感」4本
http://kazehouse.hatenablog.com/entry/2019/12/22/094034
http://kazehouse.hatenablog.com/entry/2019/12/15/105418
http://kazehouse.hatenablog.com/entry/2019/12/07/212825
http://kazehouse.hatenablog.com/entry/2019/12/01/112808
・「短歌の「調べ」について」1本(2020年へつづく)
https://kazehouse.hatenablog.com/entry/2019/12/30/194624

 この変化に気づいて、tankaknatの「気になった記事、他(201912)」で紹介しています。

気になった記事、他(201912)|tankaknat
https://note.com/tankaknat/n/n3b0e7ce690fe


時系列整理(平さんの記事登場のもの)

2017年12月30日 「TOM」開設

・ウェブサイト「TOM」開設。
tumblr利用なので「ブログ」みたいな扱いとするべきではないのかとも思いますが、「Website「TOM」」という自己紹介をされているので、ウェブサイトとします。
佐クマサトシ「vignette」12首が最初の記事。
(ウェブサイト「TOM」2017年12月30日公開)
https://tomtanka.tumblr.com/post/169108542141/vignette

2018年02月 「TOM」twitter開設

・「平英之(TOM)」というTOMの広報用っぽいtwitter開設。
https://twitter.com/taira_tom
https://twitter.com/taira_tom/status/961215984802529280

2020年03月01日 土岐「作中主体ってなんのことです」

・砂子屋書房の月のコラム「ハヤブサが守る家から」(土岐友浩)の「作中主体ってなんのことです」の回更新。
2020年3月1日公開
https://sunagoya.com/jihyo/?p=1915

2020年05月12日 平「短歌にとっての〈語り手〉」

・平英之「短歌にとっての〈語り手〉」
ウェブサイト「TOM」2020年5月12日公開
https://scrapbox.io/FragmentsofFragments/短歌にとっての〈語り手〉

2020年05月12日 土岐・平のやりとり

・土岐友浩・平英之のtwitter上のやりとり
 視点、〈私〉、景などについて。

「アイデアの一致をめぐって」内にて紹介。
https://note.com/taira_hideyuki/n/ne049f9a0611b

https://twitter.com/icebergs31/status/1260176169124524035
https://twitter.com/taira_tom/status/1260202055953612802
https://twitter.com/taira_tom/status/1260202059665518592
https://twitter.com/taira_tom/status/1260202060949020674
https://twitter.com/taira_tom/status/1260202062198890498
https://twitter.com/taira_tom/status/1260202064061165569
https://twitter.com/icebergs31/status/1260211923817132037

※「短歌にとっての〈語り手〉」とこのやりとりが同日でどちらが先かまでは不明なのですが、やりとりが22時台と遅い時間でしたので、こちらを後にしました。

2020年06月05日 平「心内語」tweetその1

・平英之の「心内語」についてのtweet。その1。
2019年6月5日
「アイデアの一致をめぐって」内にて紹介。
URL貼りませんが紹介されている以外に前後のtweetもあります。気になる人はリンク先をみてください。
https://note.com/taira_hideyuki/n/ne049f9a0611b

https://twitter.com/taira_tom/status/1268574577015185409
https://twitter.com/taira_tom/status/1268892365999104002

2020年06月19日 平「かつてなく老いた涙目の短歌のために」

・平英之「かつてなく老いた涙目の短歌のために」
ウェブサイト「TOM」2020年6月19日公開
https://tomtanka.tumblr.com/post/621355012442980352

2020年08月29日 桑原「短歌の<私性>とは何か②」

・桑原憂太郎「短歌の<私性>とは何か②」
ブログ「桑原憂太郎雑記録」/2020年8月29日
https://kazehouse.hatenablog.com/entry/2020/08/29/114159

 リツイートされたこの記事によって、平さんは桑原さんの文章をはじめて知ったと「アイデアの一致をめぐって」のなかで書かれています。

 リツイートされたと思われるtweet。
https://twitter.com/kuwaharayutaro/status/1299537798446288897


2020年11月27日 平「心内語」tweetその2

・平英之の「心内語」についてのtweet。その2。
2019年11月27日
「アイデアの一致をめぐって」内にて紹介。
URL貼りませんが紹介されている以外に前後のtweetもあります。
https://note.com/taira_hideyuki/n/ne049f9a0611b

https://twitter.com/taira_tom/status/1199544051625648128

2021年07月 第39回現代短歌評論賞締切

・第39回現代短歌評論賞締切
2021年7月1日消印有効。応募作はこれより前に書かれものということになる。

2021年10月 第39回現代短歌評論賞発表

・桑原憂太郎「希薄な〈作者〉、濃厚な〈語り手〉 現代口語短歌の〈私性〉」(抄)
「短歌研究」2021年10月号に抄録掲載
第39回現代短歌評論賞応募作
(発売は2021年9月21日)
https://www.amazon.co.jp/dp/B09H2BNMBM/klage-22

2022年07月 第40回現代短歌評論賞締切

・第40回現代短歌評論賞締切
2022年7月1日消印有効。応募作はこれより前に書かれものということになる。

2022年10月 第40回現代短歌評論賞発表

・桑原憂太郎「口語短歌による表現技法の進展 三つの様式化」
「短歌研究」2022年10月号掲載
第40回現代短歌評論賞受賞作
(発売は2022年9月21日)
https://www.amazon.co.jp/dp/B0BG15XKNS/klage-22

2022年09月26日~10月12日 平氏問合せ

平氏問合せ。
平氏・短歌研究編集部、短歌研究編集部・桑原氏とのやりとりがこの期間に行われた。
「アイデアの一致をめぐって」内にて紹介。
https://note.com/taira_hideyuki/n/ne049f9a0611b

2022年12月02日 平「アイデアの一致をめぐって」公開

note「アイデアの一致をめぐって」(平英之)公開。

アイデアの一致をめぐって|taira hideyuki
https://note.com/taira_hideyuki/n/ne049f9a0611b


結論は出ませんが(1)

 結論は出ませんが、何かを主張するというのは膨大な情報を扱うことでもあるのです。
 平さんの主張、桑原さんの主張(というか、回答)はそれぞれ受け止めます。そこから各自がどう判断するかはこの膨大な情報を理解した後である、というのは確実に言えることです。

 それをかんがえるにあたって、平さんのnoteだけだと私のアタマでは整理できないな、と思ってつくったのがこの記事です。

 個人的ノートを公開するかという話ですが、時系列整理だけでつかれたので、同じ作業をする人の一助になればということで公開します。


結論は出ませんが(2)

 蛇足承知で書くと。
 「先行論文を知らないで文章書いたら、既発表のものと似たような主旨になっちゃいました」はよくあることです。私だって知らないことだらけのまま、短歌に関わる文章を書いています。知らないこと自体は悪いことでもなんでもありません。ウェブ掲載のものの場合はとくにわからないです。
 「知ってました?」「いいえ」というやりとりは何の問題もないです。

 先に発表していたほう(今回の場合は平さん)は、「似ていると思う」と主張し、見る人の判断にゆだねました。これもまったく悪いことではない。

 もっとも大事なのは「知らなかった」の後の話です。
 書いた人(今回の場合は桑原さん)は、この文章で受賞までしているのだから、短歌についての専門的な書き手としてみなされることと思います。

 自分なりのテーマで文章を発表したのにも関わらず、そのテーマに関わる先行する文章を知らなかったという事実を、桑原さんは真摯に受け止めるべきです。「真摯に」というのもあいまいな話なんで、すでに真摯に受け止めていらっしゃるのかもしれません。私が言いたいのは平さんに対してなにかしろという話ではないということです。
 私の言いたいことは、受賞作をどこかに入れる際にそのことを盛り込んだり、次に書くものはこの経験を生かして慎重にお書きになればよろしいかと思います、ということです。自分の知識で足りないと思えば、知っていそうな人に相談してから書くのもよいと思います。



 敬称略。いろいろ不統一だけど気にしないでください。

 

いいなと思ったら応援しよう!