私の儀式〜嫌いな人に感謝する〜
社会人になりたての頃、10歳上の男の先輩と大喧嘩し、泣かしたことがあった。
誰に対しても文章の「てにをは」、本の並べ方からレジュメの向きまで事細かにいちいち注意してくるタイプだった。
新入社員になりたてで常識に猛烈に欠けていた私は直属の先輩であるその男性社員に日々猛烈に注意されていた。
しかし、ずっと裏で陰口を言って耐えていた。
そんなある日、受付の女性と飲んでいたとき、私はまた、その男の先輩の愚痴や陰口を言った。
共感して同情してくれるかな?
予想に反してその女性はハッキリとこう言った。
「そんなに腹が立つなら、ここで陰口言ってないで、直接本人に言ってみれば?」
予想に反する反応に、度肝を抜かれ、ついでに毒気もぬかれて呆気にとられた。
口でモゴモゴ言いながら、その言葉はずっと頭の中でひっかかっていた。
そんなある日、無理やりならされた社内旅行の幹事の仕事をしているとき、いつものようにその男性の先輩が聞こえるような大きな声で、こう言ってきた。
「あ〜あ、みんなが楽しみにしている社内旅行なのに、こんなに滞在時間短いプランにして」
そう言われた瞬間、堪忍袋の緒がブチっと大きな音を立てて切れた。
「てっめー!!!女性社員のほとんどが、裏で社内旅行行きたくないってこぼしてるから、敢えて滞在時間短めなプランにしとるんじゃー!!!そこに気を遣ってんのがわかんねーのか!!!🔥🔥🔥」
これまで積み重ねてきた日頃の恨みもあいまって、お昼休みの一時間、ずっと口論を続け、見かねた他の部の部長に2人小部屋に連れていかれ、喧嘩を仲裁してもらった。
後から振り返ったとき、それまで、どんなに怒りを感じても、裏で陰口や愚痴は言っても、本人に対して本音で怒りをぶつけたことは、一度も無かったことに気づいた。
産まれてきてはならないほどダメな存在の私が他人に対して直接批判や怒りをぶつけてはならない。
変な呪縛に囚われて、これまでの人生で一度たりとも本人に対して否定的なことを言えていなかったのだ。
その男性の先輩と初めて本音のガチでバトルさせてもらっていたのだ。
こちらで一方的に恨みをつのらせていたときには見えなかった相手の本音が、腹を割ったガチのバトルで、まるで謎解きのように見える瞬間にも、目から鱗がボロボロ落ちた。
不思議なことに、その出来事をきっかけに私は、どうしても我慢ができないこと、頭に来たことを、ほぼ、相手に伝えられるようになった。
その男性の先輩とも後日飲みに行くほど仲良くなった。
あの先輩のおかげなのだ。
※※※
先日、とうとう本音を伝えられないまま、遠いところにいってしまった私にとっての「嫌いな人の最後のラスボス」的存在のとある方に感謝の手紙を書いてみた。
新入社員になりたての頃、恩人でもある先輩社員と派手に大喧嘩して以降、さまざまなところでいろんな方と喧嘩しつつ、最後は腹を割って話せる関係性を作れるようになっていた。
そんな私にとって、最後まで本音を言えないままに関係性が終わった今回のラスボス的存在との別れという経験は、ある意味大きな挫折でもあった。
最初、恨み言から始まって、最後、心からの感謝で手紙を書き終えたとき
「嫌いとか、憎いとか、感情を揺さぶらせてくれる存在って、本当は私の人生に舞い降りた本当の私を教えてくれる天使なんじゃね?」
ふとそんな風に思えた。
今回の最後まで本音を伝えられないままに縁が切れた嫌いな人ラスボスの方から教えていただたいたことは本当に数え切れないほどあった。
そして、その一つに、時に誰とでも分かり合えるわけではないこともある。そうも教えてもらった。
そして、これまで喧嘩に付き合って同じ土俵に乗って下さった方々へのより一層の感謝の念がわいてきた。
そう思うと、そのご縁の切れてしまった方の楽しそうな笑顔が自然と頭に浮かんできた。
私にハッピーをくださったあの方が、どうか幸せでありますように。
今後、嫌いという感情を揺り動かす相手に出会うことがあれば、どんなハッピーを私に与えてくれるのだろう。
そう思えそうな気がする。
ららみぃたんさんのこちらの企画に参加させていただきました。
素敵な企画をありがとうございました✨✨✨
ここまでお読みいただき、ありがとうございました✨✨✨