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25年前のオアシスか? 正面突破していくケンブリッジ発6人組 Sports Team『Deep Down Happy』
KKV Neighborhood #34 Disc Review - 2020.08.12
Sports Team『Deep Down Happy』(Island)
review by 小倉健一
It was Blur Vs Oasis, and we were Oasis.
2020年6月12日付けの全英アルバムチャートでは、25年前のBLUR対OASISさながらの熾烈な争いが繰り広げられていた。今回の対戦カードは、前週に続きトップの座を狙うLADY GAGAと、今作がデビュー・アルバムとなる一般的にはおそらく無名のギター・バンド=SPORTS TEAM。冒頭の一文は後者のツイートからの引用だ。
It was Blur Vs Oasis, and we were Oasis. Took it closer than we had any right to. Will be paying back the IOUs well into our forties but fuck it. What a ride. Love you all. pic.twitter.com/3bCLi67JHj
— Sports Team (@SportsTeam_) June 12, 2020
惜しくも結果は25年前と変わることなく終わったが(相当な僅差だったようだ)、ともかくバンドは全英初登場2位という記録にも記憶にも残る鮮烈なデビューを飾り、翌週にはあっさりとランキングから姿を消した。新譜というものはリリースからひと月も経つと、その聞こえ方や感じ方が変わることもしばしばである。しかしこのアルバムは、未だ針を落とす度に変わらぬ熱を帯びて迫ってくる。それは当然ながらチャートの順位で測れるようなものではない。
ケンブリッジ大学で出会い結成された6人組は、2018年に新興レーベルNICE SWANよりデビューEP『Winter Nets』をリリース。このEPは当時の私にとって完全なるカウンターであった。PULPとPARQUET COURTSが正面衝突したような恥ずかしいくらいにストレートなギター・サウンド、そのバンド名、個性あふれるメンバーのキャラクター。一瞬の戸惑いもすぐに興奮へと変わった。バンドはデビューEP以降もコンスタントにシングル・リリースを続け、しかも毎回必ずMVまでしっかり作るという素晴らしい行動力。加えて彼らはレーベルHOLM FRONTの運営も行っており、自身の作品のみならずこれまでにUGLY、PERSONAL TRAINER、WALT DISCOといったバンドをリリース、若手バンドのフックアップにも一役買っている。
昨年末ロンドンへ行った際に、彼らのライヴを観ることができた(というかほぼ彼らを観るためにスケジュールを組んだようなものだ)。今回の渡英では、他にもFAT WHITE FAMILYやBLACK COUNTRY, NEW ROADなど、タイミングよく連日ライヴを観る機会に恵まれた。その中でもベストに挙げるにふさわしい強烈な印象を残したのは、やはりSPORTS TEAMだ。その日は彼らのUKツアー・ファイナル。会場はO2 Forumというスタジオコーストくらいのキャパだろうか、バンドにとっても過去最大規模の会場であった。外には開場前から長い列ができており、他のライヴと比べとりわけキッズの姿が目立っていた。会場入口ではプチオーケストラがバンドの楽曲を演奏してお出迎え。ライヴそのもの以上に重要とも言える物販も、レコードからマーチャン類までこの旅行中に見たバンドの中でダントツの品揃えだ。そしてROBBIE WILLIAMSの“Let Me Entertain You”をバックにメンバーがステージに登場。爆発の派手な演出もあったりと、演奏自体はもちろん、あらゆる面で彼らのギラついた野心を感じさせる、そんなショーであった。
そして2020年、メジャー・レーベルであるアイランドとサインしリリースされた本作は、冒頭の通り全英初登場2位を記録。文字通りインディペンデントからメジャーへの殴り込みとも言えるが、それはともすればどちら側からも標的とされやすい微妙な立ち位置でもある(実際手厳しいレビューを書かれたりもしている)。しかし先頭に立つというのはそういうことなのだと彼らは自覚しているのだろう、正面突破していく逞しさと潔さがこのアルバムにはみなぎっている。言いたい奴には言わせておけばいい、そんなリーダーの姿勢に己を奮い立たせ、わたしは締め切りに遅れたこの原稿をなんとか仕上げるのであった。