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FOUR TOMORROWインタビュー中編

KKV Neighborhood #224 Interview - 2024.7.16
インタビュー、構成 林さやか

2024年7月、FOUR TOMORROWが15年ぶりとなる単独音源をリリースする。結成25年。結成からコンスタントに活動をしてきたが、ギターのヤマオカの海外赴任のため9年間の実質的な活動休止を経て、2023年帰国とともに活動を再開し、現在は再び精力的に活動している。今回、盟友でもある安孫子氏の声かけにより、配信及び7インチでのリリースとなった。
リリースに際して、FOUR TOMORROW活動初期から現場を目撃し幾度となく打ち上げからカラオケまで参加してきた友人でもある林さやか(フリーランス編集者/編集室屋上)が6時間に及ぶインタビューを敢行した。新譜にまつわる話だけでなく、「FOUR TOMORROWっていったい何を考えているバンドなのか?」を紐解く内容となった。読んでから聴けば、きっと聴こえ方が変わるはず!

インタビューは前・中・後編の3回に分けて掲載。中編となる今回は、音楽的な話からだいぶ離れて、FOUR TOMORROWのFOUR TOMORROWらしさとは何かを掘り下げる。バンドとしても、メンバー個人でも、自覚のあるところもないところもじっくり聞いてみた。

左からミツヤス、ヤマオカ、ナガサワ、ナオキ/品川にて

同じ方向を向いているけど、同じ船には乗らない(ミツヤス)

―でも本当にメンバー仲良く、25年続いてて。それこそ、中学生の頃から仲良くやってたバンドだって、みんなもめたり、やめたりするわけじゃないですか。

ヤマオカヒロキ(Gt) それはたぶんさっき言った「価値観の粒感」が揃わないとそうなっちゃうんだと思う。

―その揃えるべき「粒」をもうちょっと細かくいうとどういうところを見てるんですか?

ヤマオカ たとえば当時言ってたのは、まあ言いにくいけど「このレーベルから誘われても出さない」とか。

ナガサワノリアキ(Ba) あー、言ってたよね。「このレーベルからは出さない」「このライブは出ない」とかを共有してた。あとはちょっと違うけど、初期の段階から、ライブのオファーが来てもたとえば誰かの彼女の誕生日だったら断っていいってことにしようって言ってたんだよ。生活を前提にするから、たとえば結構でかいライブであっても、誰かの彼女の誕生日だったら断ってもいい。

―その考え方、すごい現代的ですよね。

ナガサワ そうなんだよ。19とかハタチの、最初のころからずっと言ってた。

ワタナベナオキ(Gt) バンドに対して一歩引いてるところはあって、どっかで入りこみすぎないようにしようっていうのは大事なのかなって思ってる。

ナガサワ あと誰かがメンバーがすごい借金とかになっても、お金で助けるようなことはしないようにしよう、みたいなことも言ってたんだよ。べたべたしすぎないってことなんだと思うんだけど。

ヤマオカ へー。ナガサワくん、よく覚えてるよね。

ナガサワ 最初の頃にヒロキくんから聞いてたそういう言葉が今でもちょこちょこ残ってるっていうのは、おれにとっては結構でかいんだよ。「そのくらいの感じの距離感なんだな」って思って。

ナオキ 難しいんだけど、職場の知り合いと地元の友達の間くらいというか。くっつきすぎず。

ミツヤスタカヒロ(Dr) 同じ方向を向いているんだけど、同じ船には乗らないんだよね。乗らないし、乗せない。

ナガサワ だから喧嘩するバンドとかって、同じ船に乗ってるから喧嘩するんじゃない?

2023年12月に結成当時からの憧れであるSPROCKET WHEELと初対バンさせてもらいその出番直前にそわそわするメンバー、写真はSakura(bedgravity)

―喧嘩、したことないですか?

ナガサワ ほぼない、ゼロ。一方的に怒られたことはあるけど、でも、超怒んないほうだと思う。おれ、単純な技術的な話とか、やることやってないとかいっぱいあるけど、怒られたことないもん。「まあまあ、そういうこともあるから、次がんばろう」って、それだけ。

ヤマオカ そういうことで怒ったりすること、ほかのバンドではあるのかな?

ナガサワ いや、めちゃくちゃあるよ! ほかのバンド、めちゃくちゃ聞くよ。

ミツヤス ヤマがすごいそういう感じで、同じ船に乗せて世話しようと思わないんだよね。

ヤマオカ 世話って(笑)。

ミツヤス そこまでやらない。「俺の船の横つけろ」みたいな。

―じゃあヤマオカさんは「思っても言わないようにしよう」ということはない? 演奏にしてもそうだし、バンド活動って雑務がいろいろあって、「自分のほうがやってることが多いな」「おればっかりやってるな」とか思う人もいるじゃないですか。

ヤマオカ うーん……それは、おれがやりたいことをやってるからね。

ナガサワ そういう気持ちもゼロではないと思うけど、「おれができるしおれがやる」って思ってると思う。実際でかいよ、負担は。


ナオキ 思ってることはあると思うよ。おれそれで「やばい」と思ってたまに物販とか座る。バンドのリーダー的な人ってアーティスト的なところだけの人もいるけど、ヤマオカくんが突出してるのはマネジメントもできてるっていう。

ヤマオカ 今日おれほめられる日なのかな?(笑)

―ヤマオカさんがさっき、「やりたいことやってるから」って言ってましたけど、それは「バンドをやるということが自分にとってのやりたいことだから」、なのか、「FOUR TOMORROWというバンドが自分のやりたいことを具現化しているから」の、どっちですか?

ナガサワ たぶんそれはヒロキくんにとってはイコールよ。同じ、同じ。

―FOUR TOMORROWはヤマオカさんがやりたいことを具現化してるバンドです、ってメンバーみんなが思っている感じですか?

ナガサワ ていうかヒロキくんがやりたいことは、「みんながやりたいことをやってるバンドをやること」だから。

ミツヤス 本人に聞いたほうがいいんじゃないの(笑)

ナガサワ ああ、まあそうか(笑)

ヤマオカ いやいや答えてくれていいよ!(笑)

ナガサワ おれなりの考えは、やりたいことと具現化って同じとこにあるから、やりたいことをただやってるだけ。負担が大きいのも、自分がやりたいことをやってるから。そこは同じで、我々が考えてるほど細分化されてないから。

ヤマオカ まあでも、1人で、ソロでやるよりバンドのほうがいいよね、っていうのは絶対あって。それはなぜかというと、本当にバンドで自分だけ売れたいんだとしたら、気に食わないところがあるんだったら気に食わないところを埋められる人にどんどんメンバーを変えていったらいいんだと思うけど、それはたぶん自分のやりたい姿じゃないんだなと。バンドであることがすごくおもしろいと思ってる。自分のやりたいようにやってるけど、one of themだと思ってるので。4人の中のね。結果的にそう言われることはあっても、リーダーとかも設定してないし。一人がなにかに反対したときっていうのは、たとえばナオキが「いやこの企画は納得いかないから自分は出たくない」とかいうと、「いや、それでも出たほうがいい」とかってかぶせることはない。

ナガサワ そうそうそう。一人がやだったらやめようって。だから嵐と同じスタイルだよ。

ヤマオカ 嵐もそうなんだ?

ナガサワ ニノより10年くらい前に同じこと言ってるんだよ。(笑)

2023年の再始動以降、練習の後には必ず南浦和の愛する居酒屋「初恋屋」でビールを飲むことが恒例となっている。同じく埼玉県民のアビコ(KiliKiliVilla)も高頻度で参加する、もちろん飲み会から笑

ヤマオカ だからそれは短期的に考えるよりも自分のやりたいことを具現化してるとはあんまり思ってないかな。ただFOUR TOMORROWっていうものは当然自分の息子のようにかわいがってはいるので。

ナガサワ おれが思うには、めちゃくちゃ理想としては、たぶん4人に曲を作ってほしいと思ってるんだよ。ミッチーとヒロキくんしか作ってない。曲は各々が作ったらいいと思ってる、各々が作ったのを、みんながいいねって演奏するのがいいと思ってる。おれとなおきはつくらないから、二人でもいいんじゃない、って思ってるんだよ、たぶん。

ヤマオカ うーん、曲に関してはそうは思ってなくて、誰が作っても、かっこいい曲だったらいいなって。当然FOUR TOMORROWって4人だから、対峙している全員が思っている、感じてくれていることがあって、その水準に達していないものは出したくないとは思ってる。

―それは誰が作ったものであっても、っていうことですよね。

ヤマオカ そうそう、自分でもそう。自分でも本当にこの曲でいいのかっていう、ボツ曲もいっぱいあるし。出してみて、いまいちリアクションよくねえな、とか。そういうのでも「自分で作った曲だから、出していきたい」っていうのは全然ない。

バンドとしては4人だけど、もっと大きなコミュニティとして捉えてる(ナガサワ)


―今まで聞いてきた、なんというかヤマオカさんのビジョンってあるじゃないですか。たとえばそれが「売れるためのビジョン」だったらわかりやすいと思うんですよ。でもそうじゃないなら、じゃあヤマオカさんの中にあるのは「なんのためのバンドのビジョン」なんですか?

ヤマオカ そうなんだよね。

ナガサワ いや、それはずっと言ってるよ。「生活を豊かにするため」よ。

―なるほど!

ナガサワ だから、売れるためのビジョンと同じよ、おれたちにとっては。売れるために何をどうするかの手順を踏んでるバンドにはすごいシンパシーを感じるもん。おれたちは生活を豊かにするための手順を踏んでるから、やってることは同じだなって思ってるから。

ヤマオカ そこをもうちょっと掘っておくと、ここ5年くらいコーチングをけっこう体系的に学んでいて、少し前に半年くらいしっかりしたコーチについてもらってガッツリOne On One受けていて。その人のおすすめで「ストレングスファインダー」を受けてみたんだよね。名前の通り「強みを発見する」ものなんだけど、140問ぐらいの俗に言う心理テストみたいなのを受けるとその人の強みと弱みと特性がわかるんだよね。回答だけじゃなくてその回答に至るまでのスピードまで加味して算出する。たとえば「探究心」とか「学習力」みたいなのが強い人は学者肌で、とか。結果をコーチに見てもらったら、1秒で「山岡さん、サラリーマン向いてないですよ」って。

一同 (笑)

ヤマオカ 何が強いかっていうと、「論理的思考能力」「戦略性」「着想」みたいなのが強い。着想だけだとポンポンアイデアが出てきて好きなこと言ってる、みたいな。そういう人はいっぱいいるんだけど、それを実行するために道筋が見えて、実際にそれをどんどんやる、みたいなタイプ。でも「達成欲」がない。これがポイントみたい。「達成欲」ドリブンの人って、この目標を達成したい、だから頑張る、なんだけど、おれは達成欲がないんだよね。

ナガサワ あー、わかるね。

ナオキ だから、わりと妥協はするタイプだよね。

ヤマオカ そうそうそう、妥協に見えるんだけど、妥協じゃない。たとえば売れたいっていう達成欲ではなくて、自分の思いついたこととか、発想とかアイデアを実現したいっていう欲求が強い。だからサラリーマンは向いていない、とのこと。(笑)

ナガサワ 確かに言われたらそうだな。

ヤマオカ おれもそれで「なるほど!」みたいな。(笑)

―いわゆるビジョンの話ってよく、ゴールがあってそこに行き着くためのビジョンみたいな言い方をするけど、ゴールはないけどビジョンだけある、みたいなことですか?

ヤマオカ そう。

ナガサワ でもね、すげー遠めのゴールはあると思うんだよね。具体的なゴールとして設定してるかわからないけど、ビジョンとしては「死ぬまで楽しく生きていきたい」ってのはあると思うんだよ。

―そういう話と関連するのかなとも思うんですけど、前から聞きたかったことがあって。グッズとかアートワークとかもそうですけど、前回のリリースに続いて解説を野澤くんが書いていたり、たとえば取材をするってなったときにインタビュアーとして私に声をかけてもらったり。それってこの界隈のバンドの王道ではないことをやってるじゃないですか。
(ヤマオカ注:「野澤くん」はFOUR TOMORROWのファーストアルバムに解説を寄稿してくれたメンバーの共通の友人。山岡は2001年春にインドを一人で旅行中、カジュラホという街で同じく一人旅をしていた野澤くんと出会い、以降2週間の間旅をともにした。バラナシでは赤痢で一緒に入院した間柄で彼が大学4年の時に休学して世界一周をしていた際、その様子をFOUR TOMORROWのHPで紀行文として発表してもらっていた)

ヤマオカ そうなの?

ナガサワ わかるよ、言わんとしてることは。でもそれがおれらにとっての王道なのよ。

―そうですよね、それがFOUR TOMORROWのFOUR TOMORROWらしさになってると思っていて。

ナガサワ それはおれもそう思う。

―今の話、ヤマオカさんの反応見ていると、そこのあんまり自覚はないんですかね?

ヤマオカ ……王道じゃないってどういうこと?

ナガサワ おれは自覚あるよ。

―たとえばこれまでのグッズ、ジャケのアートワークとかもそうですけど、もっと「この界隈のバンドっぽいこと」って、あると思うんですよ。わかりやすく言うとバンドの人に解説を書いてもらうとか、取材記事を作るにしてもみなさんが身近な音楽媒体で普段から書いているライターさんに頼むとか。そのほうが「わかりやすさ」がある。たとえば私は野澤くんのことを知っているけど、FOUR TOMORROWを見ている人のみんなが知っているわけではない人で……。

ヤマオカ ていうか一人も知らないよね(笑)

―そういうつながりや感覚を大切にするのと、でもたとえばset you freeに出るとか、Sprocket Wheelと一緒にライブをやる、KilliKilliVillaからリリースする、っていうこともとても大切にする。それを決して「バランスを取ろうとして」やってはいないじゃないですか。

ナガサワ でもそれはバランス感覚だと思うよ。打算はめちゃくちゃある。でも根底には「好き」があるから。たとえば企画やるときにさ、「集客しなきゃいけないから、集客できるバンドを呼ぼう」はあるけど、でもそのバンドも絶対に好きなバンドしか呼ばない。それを打算と呼ぶのかわからないけど、KilliKilliVillaから出すのも、野澤くんにライナー頼むのも、林さんにインタビュー頼むのも、我々の中ではもともとやってる地続きの価値観の中では同じところでやってる。

―なんかそういう意味でも、「生活」っていうのは、FOUR TOMORROWのキーワードだなって思って。生活とバンドが入り混じってる感じがすごくするんですよね。結構そこは切り分けてる人たちが多いと思うから、「シーンに近い人に依頼する」「シーンに近いバンドだけ呼ぶ」みたいなことが、もちろんそれも好きだからやってるんですけど、それが普通だと思ってやっている。そこにFOUR TOMORROWのみなさんは、そうじゃないものを平気で、普通のこととして、ポーンと入れてくるみたいな。

ヤマオカ たとえば野澤くんに今回解説を依頼したのは、野澤くんに解説を依頼するのが「我々のやりたいこと」と近いだろうなと思ったから。今の我々を、過去からの連続性の中で、言語化してもらって、その言語化がメンバー全員にとって、腑に落ちる人。たとえば「アメリカのナントカというバンドの影響を受け……」とかの解説じゃなく、もっと近くで見ていて同じ目線で同じ時代を生きている人の中で言語化するのに一番近い人なんだろうなと思って依頼してる。同時に、彼に依頼をして何かモノを作っていくみたいなことは、一緒に、全員何かしら持っているのではないかと思っている表現だったり、やりたいことっていうのを出せるし、出しているから、そこと単純につながっているだけなんだよね。シーンの中にいる人もいるだろうし、シーンから出ているけどそういうのに長けている、もしくは今の自分たちを一番引き出してくれてる人と一緒に。同じ時代を生きてる人で、依頼したときに一番いい人とやりたくて、その人たちはそれぞれの自分の時間の中での表現と合わせて出してくれるんだと思っていて。だからそういうのが合う人がいいなと思ってるかな。

2001年、ヤマオカと野澤氏の出会いの地、インドにて

ナガサワ たぶん、我々の「バンド」っていう考え方がもともとが違うんじゃない? もうちょっとコミュニティとして捉えてるんだよ、バンドを。バンドとしては4人だけど、範囲がもうちょっと大きい。

ヤマオカ そうだよ、1人でやるよりも4人でやったほうがおもろいことができるんだし、たまたまそれが音楽なだけで、もしかしたら同じように劇団とかやってる人もいるかもしれないけど、スタンスはそういうとこなんだよね。その中でパンク側に立ちたいっていうのは当然、あるんだけど。

ナガサワ 最少人数は4人だけど、リリースになったときは、ここまで巻き込むのがバンドのもともとの考え方なんだよね。

KKV-175VL

2023年に本格的に活動を再開し活動当初から変わらぬメロディックパンクを鳴らし続けたFOUR TOMORROWが待望の新曲をリリースする。"価値や意味"なんて気にせずに、クソみたいなものに対抗するシンガロング・ナンバー に感涙必至となる、新たな名盤が完成!

FOUR TOMORROW / Homeward Bound e.p.
7月26日発売

KKV-175VL
7インチ+DLコード
2,200円 税込
収録曲
Side A
1.The Corner
2.SBD vs LBH
Side B
1.Italia, it’s real
2.Four Hands
レーベル予約受付中

7月19日『Homeward Bound e.p. 』Pre-Sale Show 下北沢 LIVE HAUS


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