見出し画像

FOUR TOMORROWインタビュー後編

KKV Neighborhood #225 Interview - 2024.7.18
インタビュー、構成 林さやか

2024年7月、FOUR TOMORROWが15年ぶりとなる単独音源をリリースする。結成25年。結成からコンスタントに活動をしてきたが、ギターのヤマオカの海外赴任のため9年間の実質的な活動休止を経て、2023年帰国とともに活動を再開し、現在は再び精力的に活動している。今回、盟友でもある安孫子氏の声かけにより、配信及び7インチでのリリースとなった。
リリースに際して、FOUR TOMORROW活動初期から現場を目撃し幾度となく打ち上げからカラオケまで参加してきた友人でもある林さやか(フリーランス編集者/編集室屋上)が6時間に及ぶインタビューを敢行した。新譜にまつわる話だけでなく、「FOUR TOMORROWっていったい何を考えているバンドなのか?」を紐解く内容となった。読んでから聴けば、きっと聴こえ方が変わるはず!

インタビューは前・中・後編の3回に分けて掲載。最終回となる後編で、話題はようやく(!)今回リリースの新譜の話に。新曲制作秘話から、25年目にして楽しくて仕方ないレコーディング、スタジオ後の飲み会をじっくり聞きつつ、これからの活動に関する壮大なイメージも話してもらった。

写真が上がってきたときに、(ジャケは)「これ以外ないかな」って思った(ミツヤス)


―今回のリリースの話を聞いていきたいんですけど、ジャケが写真なのってちょっと意外に思った部分もありました。

ナガサワノリアキ おれも最初はそう思ってた。

ヤマオカヒロキ 最初は「アー写をちゃんと撮ろう」って言うことで、撮ったんだよ。

―それが目的だったというか。

ヤマオカ うん。音源を出すってなったときに、もともとジャケは違うものを考えてたんだけど、写真とかジャケとかMVとか、取材してもらうとか、もっと色んな人と絡んでやっていきたいっていうのがあり、写真もちゃんと撮ろうっていうふうにして。だからそこでずっとライブも見てくれているみかんちゃん(mika miyamoto)にお願いしたんだけど。ジャケは最初は誰か描いてくれる人とかって考えてたんだけど、今のこの感じとか雰囲気とか空気感を表せる人がいなくて。だったらみかんちゃんが切り取ってくれてるのが一番よさそうだねっていう話になった感じかな。
ヤマオカ注釈:ジャケットに限らず、今回の7インチはすべての写真がみかんちゃん撮影。レコーディング風景や別カット、裏ジャケまでぜひ手に取ってほしいです。今の自分たちをとても表現してくれました。

ミツヤスタカヒロ ジャケを写真にしようっていう言い出したのはおれなんだけど。写真が上がってきて、それを見たときに「これ以外ないかな」って思った。

ヤマオカ 前のリリースとか活動から何年か間をあけた上での、「自分たちの今」みたいなのを表現する何かを探していて、誰かに何か絵を描いてもらったりとか、写真みたいなものもいろいろ検討したんだけど、結局それは比喩的になってしまう。

―でもそういう「比喩的なもの」も、嫌いじゃないですよね?

ヤマオカ たしかに嫌いじゃないけど、マッチするのが難しいというか。結局自分たちの顔だから一番マッチするんだな、と思った。みかんちゃんがすごいいい写真を撮ってくれたからとういのもある。いっぱい撮ってもらったあとに、「アー写を1枚選んで」ってみかんちゃんにお願いして、彼女から、「これが一番今のFOUR TOMORROWです」って言ってもらったときに、たぶん全員で「すごいいいね」ってなったんだけど。結局それが一番今のうちらを表しているし、じゃあジャケにしちゃったほうがいいよねって。

ワタナベナオキ あと社会的地位とか……。おれは職場にバンドやってるっていうのは言ってるけど、今までは、バンド名も言ってなかったし、見たところで別に、と思ってたんだけど。今このタイミングで、そういうことに対して「まあいいや」って思って。これでおれが顔出して、世に出て知れたところでなんも関係ないなっていうかさ。おれはこのバンドをやってるし仕事もやってる、っていうことが、ネガティブにならないっていうか、いいタイミングだったなと思って。

ヤマオカ うん、おもしろいね、おれもそうだよ。

ナオキ でしょ。おれもそれなんだよ。

2024年3月に行われたアー写の撮影風景。ジャケットに使われた写真以外にもたくさん撮ってもらっていて、それはまたどこかで出てくるはず。行儀良く靴を脱いで撮ってもらった関係でアクスタにしたら足を切らざるを得なかった(泣)

ー今回収録の4曲は、「Italia,it’s real」が新曲で、ほかの曲は結構前からオムニバスに入っていたり(「SBD vs LBH」)、そうでなくても結構前に作られたものだったりするんですよね?

ナガサワ 「Italia」以外は10年くらい前にできてる曲。

ミツヤス 10年は言いすぎじゃない? 8年前とかかな。

ナオキ 今回収録の曲では「The Corner」ができたのがだいぶ前で、そのときの最新だったんだけど、「Italia」は最近できた曲で、歌詞は相当いいです。「Italia」の歌詞はちょっと新しいっていうか、今だなって。

ヤマオカ いつ作ったどうのこうのってあんまり関係ないんじゃないかと思ってるんだけど。

ナオキ でもマジで、「Corner」より「Italia」のほうが今っぽい。おれ、歌詞見たときびっくりしたんだから。ヒロキくんが教えてくれたけど、「真実」っていうのは英語で三つの言い方があって、FactとTrueとReal、それが全部入ってるんだよ、って。

ナガサワ なるほど、ほんとだ。

ヤマオカ それを何て訳したらいいのか、ニュアンスの違いをどう表現するかは結構考えた。

―それは、聴く人に委ねている感じなんですか?

ヤマオカ 委ねてる。

ナオキ でも結構わかりやすいと思うけどな。

ヤマオカ 曲自体は少し前にできていても、今回改めて歌詞は、わりと最近の自分の感じていることから改めて今回書き下しているんだけど、割と現代的だと思う。ちょっと薄っぺらくなるけど、多様性とかもそうだけど。

―日本語の詞と英詞はどっちが先なんですか?

ヤマオカ 同時ぐらい。

ミツヤス あと、訳し方もあるよね。

ヤマオカ そうそう、その持っていきかたは結構考える。

ナオキ 「だいじょうぶ、まあ何とかなりますよ」ってね。

ヤマオカ 「Italia」の歌詞の「だいじょうぶ、まあ何とかなりますよ」(英詞:Everything is fucking alright./We’re still here,this is the truth.)って、なんでこういう日本語にしてるかっていうのはね。子どもと生活する中で自分の中でもいろいろ考えることがあって、ここ数年小児神経科医のVoicyをよく聴いてるのね。その人は子どもの成長とか可能性をすごく感じてる人で、2分くらいのVoicyを作ってるんだけど、その最後に必ず「だいじょうぶ、まあなんとかなりますよ」って言うんだよ。ここからとってるんだよね。

ナオキ 解説入れてくれよ、それ。

ナガサワ おれ、リリース前にその話聞いといてよかったわ。気合いが違う。それ聞くと思い入れが全然違う。

ナオキ 歌詞のthree little birdは要するにボブ・マーリーでさ、Sunset manはeastern youthの吉野(寿)さんだよね。

ヤマオカ そう。「だいじょうぶ、何とかなりますよ」「Don’t worry」みたいなことはあらゆる世代で歌われているけど、その中でも個人的に代表的なのがボブ・マーリーの「Three Little Birds」とeastern youthの「サンセットマン」がすごい大きいんだけど、音楽だけじゃなくてさっきの小児神経科医の人とか、そういうところからも出してくる人がいて。ド頭の「エビデンス」とかって最近すごい言われるワーディングで。「そこにエビデンスはあるのか、科学的にどうなのか」ってのはあるんだけど、とはいえ、2000年当時に「一生続くバンドをやる」なんて考えてる人はあまりいない、みたいなのも、当時の考えてることの非常識とは言わないけど……考えてることって常々世の中で変わっていくし。

ナオキ だから、なんていうかな、おれの捉え方なんだけどさ、誰がなんといおうが関係ない。いろんなことを言う人はいるけど、関係ない。これが僕たちの出した答えだから、君たちがなんというが、何事にもぼくらは属さないし、何にも影響されない。これが出した答えだから、っていう曲かな、って個人的には思ってて。

ヤマオカ いやそんなに大きく出てないけど(笑)

ナオキ いや、言ってるよ! 歌詞見たときにスタジオでびっくりしたんだから。

024年4月にレコーディング完パケを受けてレコーディングとミックス、マスタリングをしてくれたタイタイと。タイタイはファーストアルバム以降のすべての録音をしてくれているし、アメリカツアーにもいっしょに行ったし、大合奏会で流血ダイヴもしてくれている仲間(笑)

バンドが、楽しくてね……(ナオキ)


―今回のリリースは7インチと配信なんですよね。そのスタイルは、迷いなく決まった感じですか?

ヤマオカ 迷いはなかったと思うな。まず配信をやることについてネガティブな感情はないよね?

ナガサワ ないね。

ナオキ うちらみんな配信で聴いてるからね。

ヤマオカ で、個人的にフィジカルが好きだからそれは作りたいなと思って、どうせだったらレコードにしたい。曲がいっぱいあったら12インチがよかったんだけどね。

ナガサワ もともとは、ヒロキくんが中国にいたときから、セカンドアルバム出したいねって話をしてたんだよ。戻ってきたらアルバム録ろうって話をしてた。それで実際に日本に戻ってくるよってなって、すぐスタジオに入らないで、カラオケに行こうぜって言って、何回かカラオケ行ったり飲んだりして。

―なんですぐにスタジオ入らなかったんですか?

ナガサワ ヒロキくんが、「それは野暮よ」って言って(笑)。

ヤマオカ そうでしょ、4年も5年も離れてるのに、いきなりそんなさ。


ナガサワ そのときに話してたのは、アルバム録ろうって話が出てるけど「アルバム、聴く?」って。サブスクで配信されたアルバムを、まとめて12曲聴く? 限界で4曲じゃない?って。それで一番最初は配信だけで2曲ずつを3ヶ月4ヶ月連続でやらない?って話もあって、そうしようかなと言ってたなかで、「やっぱりフィジカルでリリースしたほうがおもしろいんじゃない? 2曲でもいいよね」って話も出てきて。結局どれができるかってなったときにどこかのタイミングで、先に2曲配信で出して、フィジカルで追いかけようか、じゃあ7インチで出そうか、じゃあ4曲出そうか、って決まっていった。だから最初はフィジカルで出すとかも言ってなかったんだよ。2022年の大晦日にヒロキくんが3~4年ぶりに日本に帰ってきたんだよね。「ちょっと1回飲もうか」ってなって、正式には決まってないんだけど、4月にたぶん日本に帰ることになりそう、来年からはバンドできるって言われて。

ヤマオカ 「どうする、やる?」って(笑)

―戻ってきて、じゃあまたFOUR TOMORROWをやろうかってなったときは、みんな何の迷いもなく。

ナガサワ もちろんもちろん。それはそうよ。

ナオキ バンドが、楽しくてね……。

―ナオキさん、Bollocksのインタビューでも言ってましたね、とにかく楽しいって。

ナガサワ いやでもそうよ、まじで楽しいよ。「そうそう、これこれ」と思って。

ヤマオカ 去年の忘年会のときだと思うんだけど、ミッチーはこういう性格だからそんなに言わないんだけど、この二人はさ、「この1年振り返ったら本当に楽しかったな」とか言って。

ナガサワ ヒロキくんが海外赴任行く前の15年くらいはさ、とくに休止とかもなく、ずっとひと月に平均2本くらいライブやってたのよ。週1とかでスタジオに入ってて。それでも、車で来てたこともあってスタジオのあとに4人で飲むってことはなかったの。それが中国から戻ってきたときに、我々の地元でやるようになって、終わったあとに飲もうかってなって。今までそんなこと1回もなかったのに、スタジオのあとに2時間くらい飲むことになったの。4人で集まって週1で必ず2時間飲むようになったら、めちゃくちゃ解像度上がるっていうか。

―バンドの話をしてるんですか?

ナガサワ バンドの話もするし、そうじゃない話もする。「おれさ、好きな子にさ……」みたいな話もするし、おもしろい映画があったとか、これ聴いたとか。

ヤマオカ まあ半分くらいバンドの話かな。毎週やってるんだよ、4人で。毎週よ。なんならスタジオ間に合わないのにその飲みには間に合うみたいな感じで来るんだよ。

―それは、楽しくなきゃ続かないですよね。

ヤマオカ まあそうだよね。

ナガサワ これが、すごい楽しくて。答え合わせっていうか、今まで知ってたけど、もうちょっと距離が近づく。そんなふうに考えてたんだな、離れてるとき、って。

ナオキ でも、おれは単純に音楽が楽しくてやってんだけどな。4人で飲んでるのは、めっちゃオマケよ。

一同 (笑)

ミツヤス ナオキ、いろんなエフェクター持ってくるんだから。

ヤマオカ いまさら。何年やってるんだよって。今回の音源でも25年目にして初めてソロ弾いたから。

ナオキのギターソロレコーディング風景。足元に広がるのはギターテックを手伝ってくれたまっちゃん(does it float / neko! / Life is water band)がたくさん持ってきてくれたエフェクター。でもエンジニアのタイタイからは「過去最悪の次に時間のかかるギタリストだった」という感想を頂いた。(笑)

ナガサワ このバランス感覚もウケるよね。こんなに長いことやってるのに、弦楽器一番弾けるのがミッチーっていう。バチ持ってる人が一番うまいんだから。

ミツヤス 今はもうそんなことないよ。

ナガサワ あるよ! ヒロキくんは、こんなにデキるやつなのに、「ギター上手」とは言われないタイプだから。

ヤマオカ それは全然上手じゃないから!

ナガサワ 言われないんだから、「ギターうまい」って。

ヤマオカ 言われたことない、1回もない。

ミツヤス トータルが強いんだよ。

ナガサワ そうそう。でも、そんなやついなくない? バンドで「トータルが強い」人って。すごいバンドよ。こんなに長くやってて、誰も楽器うまくないんだから。

ナオキ マジで関係ない。そういうこと。

ナガサワ こんなにキャリアあるのにこんなにライブで失敗してるバンドいないと思うんだよね。だいたい慣れてみんな上手になるじゃん。

―ナガサワさんは、ヤマオカさんがいない間にほかのバンド(FLATBOWL/bedgravity)も精力的にやっていたじゃないですか。それでもやっぱりそんなにFOUR TOMORROWが楽しいですか。

ナガサワ 超楽しいよ。だって、阿吽の呼吸だからさ。「そうだよね、それ言わなくてもいいよね」ってなる。それは、ほかのバンドに比べてキャリアが違うから当たり前だし、2バンドには2バンドともFOURTOMORROWとは違う面白さも当然あるけど。プラス、2バンドをやってみて今までになかった学びがあって、、練習したらきっちりできる感みたいな……。おれやっぱりFOUR TOMORROWではどこかでさ、怒られないのもあるし、歌ってるからベースちゃんとやらなくてもいいよなっていうのがちょっとあって。

―……あるんだ。

ヤマオカ わはは(笑)

ナガサワ あるのよ。いやベース大事だけど、もともとベースじゃないって言ってんだから。「ベースじゃないけどいいですか?」って言って入ってるんだから。でも15年くらい経って、歌わないバンドでベース弾き始めたときに、「ベースちゃんとやらなきゃな」と思って。今までできないところをできるようになったから、ほかのバンドに非常に感謝はしてるのよ。

ミツヤス ちょっとうまくなって帰ってきた。

ヤマオカ 音とかもね、こだわったりして。

ミツヤス 「このベースラインとこれと、どっちがいい?」とか言ってきたりするもんね。

―言わなかったんですね、それまで。

ヤマオカ 言わない。一択だったよねえ。

ナガサワ そうなんだよ。だからすごい感謝してるんだよ。

ヤマオカ バンド始めて最初にやるやつだけどな。

ナガサワ でもさ、それを今のタイミングでやっても成立するバンドってなかなかないんだから。すぐ怒られるんだから。それでクビになるんだから。「おれのこと、クビにしねえんだ、このバンドは」っていうのはある。

―ヤマオカさんにも、ほかの3人にも、「人をクビにする」っていう感覚はないですよね。

ヤマオカ ないよ、ない。

ナガサワ それはないけど、ほかのバンドはざらにある話だから。

ヤマオカ FOUR TOMORROWって、「元FOUR TOMORROW」が一人もいないんだよ。やめていく人が一人もいない。そこは誇りに思ってるし、そういうバンドをやりたいんだなと思ってる。
 

FOUR TOMORROWとして4枚ぐらいはアルバムを出したい(ヤマオカ)


 
―さっき、音楽をアルバムとして聞かなくなってるって話がありましたけど、これからパッケージングとしてアルバムという形が残っていくかもわからないですよね。

ナガサワ おれ個人では、アルバムが出たときに、アルバムとして聴く文化は全然まだあるんだけどね。そこはさ、さっきも言った、「今の段階でそんなふうに思ってないんだけどなー」っていうのはあるのよ。今は「そうでもないよな」って思ってけど、その形も面白いっていうか、たぶんそれが正解のもあるんだろうなって思ってる。

ヤマオカ ただアルバムっていう形でも出したいなって思ってるかな。ほかのやり方は否定しないし、聴いてくれる人が増えればいいと思ったけど、自分たちのまとまった形としてのアルバムは2枚目出したいなって思ってる。来年には出せたらいいかなあ。個人的に、FOUR TOMORROWとして4枚ぐらいはアルバムを出したいなと思ってて。

ナガサワ 25年やってて1枚しか出してないんだけど(笑)

ヤマオカ このペースだと4枚出すと100年になっちゃうんだけど(笑)。それと、今、できることが増えてる中で、バンドとしてのアウトプットとして出していくやり方は他にも結構いろいろあるんだろうなと思っていて。ちゃんとMVを作ってみるとかもそうだし、歌詞もそうだし、曲をリリースする以外にもできることがある。1曲1曲もっと大切にというか、想いがあるから。そういうのと絡めた活動の仕方をしていくのがいいかなと。俗に言う物販としての物販ではなくて、自分たちのバンドのあり方みたいなものを体現するようなものの作り方とか、それは自分たちで何か文字を書くとかもそうだし、今日みたいなインタビューをやってもらうとかもそうなんだけど、外に出していく何かを作っていくことが大切なんじゃないかなと思ってる。そこに楽曲とかフィジカル、アルバムとかがあるっていう理解を最近はしてるかな。

―そこに人を巻き込んでいきたいと。

ヤマオカ 自分たちだけだとできないから、同じ時代を生きている人たちの中で、誰と一緒にそういうのをやっていくとおもしろくて。そこが少しずつ広がっていく感じとか、日本だけじゃなくて、違う国にも広がっていく感じが再現できるとおもしろいなというのはあるかな。
 

ギターを弾きながら食っていけて、それに憧れる若い人の選択肢が増える(ヤマオカ)


 
―久しぶりのリリースを前にして、本格的にこれからやっていきたいこととか、考えていることとか、ありますか。

ヤマオカ 2週間ぐらい前にアメリカのロサンゼルスに行ったときに、2011年の夏にいっしょにカリフォルニアをツアーさせてもらったSHINOBUのボブとJoyce Manorのギターのチェイスといっしょに飯を食ったりしたんだよね。Joyce ManorってEpitaphからリリースしてて、たしかに人気のバンドなんだけど、「食ってる」んだよね、それだけで。SHINOBUのマイクも、Jeff Rosenstockっていう、今度日本にも来るアーティストのサポートギタリストで食ってるんだよ。それを聞いててね、何が違うんだろうって思ってて。いまKilliKilliVillaのみなさんにいろんなことを教えてもらってて。今の人たちの配信の聴き方とかを聞いてるんだけど、たとえばFOUR TOMORROWがSpotifyでみるとアクティブリスナーが例えば100人くらいですと。これが多いか少ないかは別としてね。日本でいろんなバンドがいて、あるとても有名な俺の好きなベテランバンドは4万人くらいなの。じゃあJoyce Manorは?というと、日本では全然メジャーじゃないけど、50万人いるんだよ。ロサンゼルスで普通に一緒に飯食ってる彼もそこから見られる世界って、すごい広い。結果的に彼はギターを弾きながら生活できていて、それを見た彼みたいな人に憧れる若い人は選択肢が増えるんだと思うんだよね。それは食っていくことが良い、とか、メジャーになれ、売れろ、っていうことではなくて。

―「選択肢が広がる」ということですね。

ヤマオカ そう。でも日本だと、そのバンドですら4万人っていうことを痛感してさ。そこがもっと広がっていけば、いろんな選択肢の発想が広がるんじゃないかな、って。このバンドやあのバンドはギリギリ食えるという状況はあっても、本当はもうちょっと下ぐらいまで食えてたほうが、選択肢が広がって、世の中面白くなるんだけど、そうはならなくて。それはやっぱりパイが小さいからで。そこをみんなでデカくしていく必要があって。

ナガサワ デカくするとなったら海外まで広げないとだもんね。

ヤマオカ 方法はいろいろあると思うんだけど、わかりやすいのは、東南アジアとか中国とか。実際にその辺りで9年生活して、そこに需要が広がっている実感があって、そこを広げていく、広げていく手伝いをするほうがいいんじゃないかと思っていて。そういうことを今はやってみたいと思っている。この年齢の自分たちの選択肢を増やすというよりも、そのやり方のアイデアをどんどんおもしろく試してみて、10年後、20年後、30年後にやってる人たちの選択肢がもっともっと広がっていると面白いだろうし。そういうことができるほうがいいのかなと。そこに付随して、たとえばMVとか作ってもらうことについても、今なら3万しか払えないけど、そこが30万になったら、そこでまた選択肢が広がっていくとかさ。

ナガサワ たしかに、全員でフックアップしていけば飯食うということの活性化にはなるよね。

ヤマオカ 世の中の流れとしてはそっちのほうがおもしろいし、個人個人が何かを持っていろんな人と繋がりながら生活をしていったり、発信したり、お金を得ていくみたいな世の中になる、それがこれからの流れなんじゃないかな、なんて思っていて。まさにそういう時代の転換点にいるから、そういうところでやりたいなっていうのは結構ある。中国にツアーに行くとか、インドネシアのレーベルとやり取りするとか。Spotifyなんか見てても、まだまだだけど、うちの音源を聴いてくれる人って海外の人けっこう多いんだよ。

ナガサワ そうなんだ!?

ヤマオカ そう。それは、(2011年に)アメリカツアーしたのがデカいと思う。日本で海外のバンドの前座やってるだけじゃなくて、日本を出ていくのがやっぱり良いんだと思う。たとえば中国とインドネシアだけで、潜在的なリスナーは15倍とかになるから、15倍のお客さんに聴いてもらえるようになると当然音源もTシャツも売れるし、映像を作ってもらっても予算がとれるしって、まわるから。KiliKiliVillaはそういう視点もしっかり持ち合わせていると感じている。

2011年8月に行われたアメリカ西海岸ツアーファイナルの集合写真、924 Gilmanにて。共演はSHINOBU、Joyce Manor、Big Kids、Tiny Lungs、Albert Square。最高の時間だった。

―そういう展開を考えるモチベーションも、やっぱりバンドを続けることと同じですか?

ヤマオカ それは、思いついたことを実行したいから。何かを達成したいわけじゃなくて。

―そっちのほうがおもしろそうだから?

ヤマオカ おもしろそう。もうちょっというと、コロナ前の2010年とかは欧米に出ていくことを考えていたし、アメリカとかイギリスに行きたいと思ってた。今はそっちよりこっちのほうがおもしろいんじゃないかと思ってる。

ナオキ なんか聴いてもらってなんぼっていうか、そういう意味でいっても、KilliKilliVillaからのリリースが今の自分たちにはピッタリだったのかもしれないよね。


KKV-175VL

2023年に本格的に活動を再開し活動当初から変わらぬメロディックパンクを鳴らし続けたFOUR TOMORROWが待望の新曲をリリースする。"価値や意味"なんて気にせずに、クソみたいなものに対抗するシンガロング・ナンバー に感涙必至となる、新たな名盤が完成!

FOUR TOMORROW / Homeward Bound e.p.
7月26日発売

KKV-175VL
7インチ+DLコード
2,200円 税込
収録曲
Side A
1.The Corner
2.SBD vs LBH
Side B
1.Italia, it’s real
2.Four Hands
レーベル予約受付中


7月19日 LIVE HAUS



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?