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KKV Neighborhood『Talkin bout MoshPit & DanceFloor & Living』開設にあたって

KKV Neighborhood #1 - 2020.05.05

KiliKiliVilla がスタートして5年が経ちました。「自分たちの納得できる形でレーベル運営をしたい」というアイデアを少しづつ実現しながらリリースを重ね、気がつけば品番が100を超え活動の幅も広がってきました。好きな音楽をフェアなスタイルでリリースしたいという、このわがままで実験的な試みが5年も続いたことについて、まずKiliKiliVilla からのリリースを受け入れてくれたバンド、ミュージシャンに感謝したいと思います。それと関わってくれたデザイナー、カメラマン、映像ディレクター、ライター、イベンターの方々、そしてなによりも僕らのリリースを聴き、ライブに足を運んでくれたみなさんに感謝したいと思います、ありがとうございます。

この5年のあいだに音楽を取り巻く状況も大きく変わってきました。音楽を伝える媒体はデジタルの比重が上がり、同時にアナログの大切さも大きくなっています。2015年に考えていた「音楽の話が通じる人たち」による小さなコミュニティーのようなレーベルというイメージは変わらず持っていますが、アーティストとの関わり方もリリースの形態も様々なヴァリエーションが生まれています。同時に僕たちの役割も変化しつつあります。いつか安孫子が言っていた「一緒に飲んで話したい人の音源をリリースしたい」という言葉はそのままに、バンドの成長や変化に応じた役割も担いたいと考えるようになりました。それは僕が90年代にイメージしていたインディー・レーベルのありかたを超えて、エージェントやマネージメントでもあり、PRカンパニーでも版権管理会社でもあるかもしれません。どんなかたちであれ、それが自分たちの気持ちに自然に従うのであればそれでいいと思います。そこで日毎に起きている出来事や新しい感覚を受け止め、僕たちがなにを感じ、なにを考えているのか、その時に浮かんだアイデアをすぐに伝えるための場所を作ることにしました。

実はこの3月からサイトのMAGAZINEのコーナーのリニューアルして、すごい量の情報が飛び交う日々のSNSの短いフレーズや映像ではなく、音楽を中心に漫画や映画を語り、自分が時々に感じたこと、社会で出会った疑問などの文章や記事を掲載できる場所にしたいと考え準備をしていました。基本のマインドは日々の雑感を一歩踏み込んで考えたことであり、友達同士でする音楽の話であり、友人に勧めたい音楽や本の話でいいと考えていました。世の中にミュージック・レビューは多いけれど、結局信頼できるのは友達からの情報だし、仲間には自分の好きな音楽を聴いてもらいたい、そんなシンプルな気持ちでした。が、この一ヶ月の新型コロナ感染症の広がりとそれに対応する日々の社会を目の当たりにして、もう一歩踏み込んで政治や社会のあり方まで、いま自分が感じ、考えていることも反映させたいと思いました。

たぶん後世、この2020年を境に以前、以後として語られる分岐点に僕らはいます。もう以前の状況は戻ってこないでしょう、そして多くの友人知人が政府の無策のせいで苦境に立たされてもいます。安倍政権の7年間のひどい事件の数々、それもなにひとつ糾弾されることなくここに至っての無策、というか強烈な嫌悪感しかない対策と振る舞い。それを日々目にする度、有権者である僕ら自身が招いたことだという痛烈な反省を込め自分の考えを発信しようと思います。いま大きな転換点にいるのであれば、これからをより良い状況にするためにできることと僕たちの視点から見えること、感じ考えたことを記録として残したいと思います。

今世界が置かれている状況に対する正しい答えはだれにもわかりませんが、少なくとも行き過ぎた資本主義、ネオ・リベラリズム、金融資本主義を変えることができる可能性はあります。各国で行われている現金の給付はモダン・マネタリー・セオリーの実践の端緒となるかもしれないし、この危機をきっかけにベーシック・インカムを導入する国が出てくるかもしれない。少なくとも経済最優先という価値観は大きな打撃を受けるでしょう、そこから確信を持って進むためにも、このページでは友達に話すように政治や社会や経済も話題にしていきたいと思います。

KKV Neighborhood『Talkin bout MoshPit & DanceFloor & Living』は編集に田中亮太氏を迎え、ライブやパーティーのフロアで感じたこと、心が動かされた音、映像、文章、日々の感想などをキリキリヴィラ の友人たちに自由に書いてもらう場所にしたいと思います。レビューやインタビューを中心に、毎週ひとつは何かしらの記事が更新されるようにします。みなさま、よろしくお願いします。

与田太郎


朝5時。今日も2450本のキュウリが植え付けられた2反5畝のビニールハウスを散策すれば、昨日すっかりキレイに採ったはずの実はまるで魔法にかかったみたいに元通りで、いやそれどころか昨日以上に樹には綺麗な緑で長ひょろく逞しい実がこれでもかとぶら下がっていて、枝もまるで遊んでいるかのように空に向かってさらに自由に手足を伸ばしている。本当に不思議だ。そして一日ってなんて愛しいものなんだろうとしみじみと思う。生命の計り知れなさを目の当たりにしてみて、やっぱり人間も不思議なものだと改めて感じ入る。一人一人、一つ一つの魂は当然だ。

令和2年。この4月から新規独立営農。以前の勤め先の牛乳屋(MILKイナ君のDELIVERY MANGAで描かれている仕事と一緒!)の同僚2人と共同での3人のキュウリ農園。自分的にはまるでバンドを組んだような気分でワクワクしている。

昨年暮れに突如舞い込んだハウス貸し出し話に食いついた。鉄骨はサビだらけでビニールは殆どがボロボロに朽ち果て、雑草はぼうぼうでまるでジャングルのようなおんぼろのハウスだったが一から自分達で形にしようと決めた。見切り発車は重々承知していて、実際沢山の農業者の人たちにこれじゃ無理だよと散々バカにされたが、それは余計に私達を燃えさせる事でしかなかった。奇跡が起きたかのように見違え、そのハウスは完成した。

変わっていく日の出の時間、天気や気温、風の向きや強さを受け取りながら日々を経由して行く。風景の変化に敏感になり植物と向き合いながら、それがせわしなさと重なり合いくたびれた身体と共にいつのまにか自分自身というものを忘れていく時間はなんだか心地がいい。

ある日、海無し県の圃場に鳴ったRAMONESの“Rockaway Beach”。昔から何度も夢中になって聴いた曲なのになぜだかその時はとてもホーリーに響いて強烈に感動し空を見上げて立ち尽くした。本当に音楽もつくづく不思議だ。

未だ収束が見えない新型コロナウイルスで揺れ動く世界。ただただ皆様の健康と安全を願うばかりです。どこかの誰かの静かな時間に、少しだけでもそっと寄り添えるようなMagazineになれたら幸いです。そしてまた皆さまと元気にお会いし、思いっきりおしゃべり出来る日を心より楽しみにしております。それぞれの願いと奮闘に想いを馳せながら。

安孫子真哉 / KiliKiliVilla 、吉里吉里農園


ポップとして語ったときに、こぼれおちてしまうもの。KillKiliVilla Neighborhoodは、音楽と日常の関わりのなかで起きる、ひとりひとりのささいな、それでいてかたくなな心の動きを言葉にしたいと思っています。音楽を聴くことが、きわめて個人的な体験であることを忘れない。そして、湧き出た気持ちや感情を、隣人に話すようなそぶりで伝えたい。わかったような気になるのではなく、理解できないままでともに考えたい。できるだけ正直に、目をつぶらずに。でも、ときに弱くなったって構わない。ライブハウスやクラブがそうであるように、嵐からの避難所でありたい。そうした態度を貫くことに、インディペンデントなメディアの矜持が宿るのではないでしょうか。モッシュピットとダンスフロア、そして日々の生活。KillKiliVilla Neighborhoodは、そこから言葉を発していきます。

田中亮太


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