ロリータ18号インタビュー
KKV Neighborhood #232 Interview - 2024.11.12
インタビュー、構成 内山ふみ
2024年にバンド結成35周年を迎えたロリータ18号。
バンドの夢でもあった日比谷野外大音楽堂でのワンマンライヴを11月24日(日)に控え、クラウドファンディングに初チャレンジするもバンドを待ち受けていたのは茨だらけの道だった。そこで諦めるほどヤワではないにしろ、石坂マサヨ(うた)と吉村由加(ドラム)の御二方に現在の状況をじっくり訊いてみた。
石坂マサヨ 今回、日比谷野外大音楽堂(以下、野音)で結成35周年ライヴをやることになりました!スゲー嬉しい!ずっと野音でやりたかったんですよ!ずっと!野音で!でも野音のキャパは2600人なんだって…ぶっちゃけ厳しいです、動員…。
ーなんと!これ、野音のチケットが売れることと、クラウドファンディングで目標達成することは別の話なんですよね?(10月30日125%達成)
マサヨ そうなの。でもたとえチケットが売れてなかったとしてもクラウドファンディングが達成できたら、来てくれた方が当日楽しめることは間違いないし、DVDを観てくれた方も勿論ワイワイできます。それは本当にクラウドファンディング有難い。だからご支援してくれる方もそうだし、周りの方にも本当に感謝の気持ちで…毎日いろんなところで『ありがとうございます!』ってお辞儀してたら遂には自動販売機にもお辞儀してた(笑)。
ー心配です(笑)。
マサヨ みなさんのお気持ちをダイレクトに頂いてるから、嬉しくて毎日泣きそうになるもん。そもそもアタシ、ライヴ以外ではできるだけ自分にピンスポットが当たらないように生きてきて…SNSとかで自分の事を伝えるのもなんかスゲー苦手だし。今まで人に何かをすることはあっても、してもらうことは結構避けてきた。だから人からの施しに慣れてなくて。バースデーイベントとかもすごく嬉しいけどなんか照れちゃって。でも今回クラウドファンディングをやったり、野音に向けての宣伝なんかでバンドマンや交友関係がある方々から沢山の応援を頂いて『あぁ、ロリータ18号はこんなにも沢山の方に愛されているバンドだったんだ』と恥ずかしながら改めて気が付きました、今頃で…申し訳ない。この皆さんから頂いたお気持ちを返せるとしたら、もう野音を成功させる事、それだけ。とにかくお客さんをできるだけ沢山入れて、来てくれた方に目一杯楽しんでもらって、ステージ上のメンバーがキラキラした顔でライヴやって、野音にいる全ての人の一生忘れられない1日にする!それしかないよね。
ーでもやるからには野音を満杯にしたいし、クラウドファンディングも100%いきたいですよね。そもそも、マサヨさんが野音でやりたかった理由、野音の好きなところはなんですか?
マサヨ 15~16歳の頃からずっと好きなアーティストを野音へ観に行ってたの。COBRAとかKENZI &THE TRIPSとか…バンドブームの頃っていろんなバンドが出るイベントを野音でたくさんやってたから八王子から通ってさ。その間にロリータを始めたので、やっぱり好きな人達が立ってるステージに『いつか自分も立ってみたい!』って、もう当たり前のように憧れて。今までに、例えば友達のバンドが野音やるからゲスト出演でヨロシク!みたいな話も1回もなかったし。だから結成35周年ライヴは野音でやりたいなと勝手に思ってた。日本武道館は、忌野清志郎さん30周年の時にロリータ呼んでもらって出たことがあったんだよね。
ー『ぼくの好きな先生』を演奏してる動画を観たことがあります。
マサヨ 他のゲストはとにかく凄い方達だらけでね。ロリータが出てきたらお客さんがちょっとざわついて…『え、誰???』って(笑)。まぁ、武道館はもう立ったので満足。
ー(笑)。
マサヨ で、野音ですが。まず当たり前だけど野外だし、ビルが周りにいっぱいあって、森があって、いつもライヴハウスとかホールで観てるバンドが全然違って見えるんですよ。カッコよさが100倍上がるっていうか。もちろん晴れでもいいけど、悪天候なんかでもそれはそれで良い思い出になる。KENZI &THE TRIPSの時なんて土砂降りでライヴ中断したけど『KENZIもびしょ濡れで歌ってるから、アタシも~!』って、着てたカッパをバーン!って脱いだり(笑)。客席もすごい自由な環境でお客さんもワイワイしながら酔っぱらってたり、知らない人同士でもすぐ友達になれる感じ。
吉村由加 たしかに、野音にしかない空気感みたいな所ってあるよね。
マサヨ そう、ちょっと異次元の空間。あの『野音だけしかない環境』っていう佇まいが大好きで。客席があんなにも楽しいなら、ステージの上ってどんな世界なんだろう?って。あんまり物事に憧れることもない、わりと覚めたタイプの人間なんだけど、野音だけはなんか特別だった。
吉村由加 私は札幌出身なんでマサヨちゃんほど野音に行った数は少ないけど、やっぱり野音で観るライヴはなんか違うよね。
マサヨ ただ、その気持ちと自分のやってる活動やお客さんのキャパのバランスが合わないから『出られるわけがない』って勝手に思い込んだままずっと今まで生きてたんです。それが昨年、改修工事ってことで物理的にもう出られないっていう決定打が出たから、諦め感…夢の喪失感みたいなのがすごく大きくて。その落ち込んだ気持ちのまま2ヶ月過ごしてたら急に『野音、やっぱまだやりま~す』ってニュースが飛び込んできて!その振幅がデカすぎて変なテンションになった。死んだと思ってた人が、生き返った!みたいな(笑)。それで誰にも相談しないで、昔の事務所の社長に夜中電話したんだよね。あ、BENTEN木村さんじゃないですよ、木村さんには怖くてそんな話できないので(笑)。そしたらその社長が『一応、話は聞きます』って次の日かな?吉祥寺で会ってくれて。ただその時に『やっぱり、ロリータではちょっとキャパが合わないと思いますよ。でもニューロティカが2年連続で野音やってるみたいだし、いっそニューロティカさんに相談した方が早くないですか?』って言われて…結局その時は自分達の身の丈とか何も関係なくアタシの気持ちだけで突っ走っちゃったんだよね。
吉村由加 『やるぞ!』って(笑)。
ー相談っていうのは具体的にどんな事を相談したんですか?
マサヨ 野音って公共の施設だから、会場を借りるだけならあの規模でも30数万円とかで借りられるんですよ、安いよね。だけどそこに機材を入れたり、音響や照明システムとか全部入れると、今まで自分達がやってきたライヴハウスの規模とひと桁変わってくる。さらにステージでやりたいことをどんどん入れてったら天井知らずになって、ロリータの今の動員から考えたらやっぱり難しいよね…って話をされてぐうの音も出なかった。
ーなるほど。
マサヨ でもまず、野音って抽選で当たらないとそもそもやる事が出来ないよ、って。じゃあわかりました、とにかく明日ニューロティカに相談しますって言って…あまりにも自分が思ってるよりも話が進まなかったからシュンとして『飲み足りないな、でも店に入ってたら終電なくなっちゃうな』くらいの時間だったから、コンビニ行って缶ビール1本買って飲みながら中央線の高尾行きに乗ろうと思ってドアが開いたら、3人掛けの席の真ん中にあっちゃんがスンッて座ってたんだよね(笑)。すごくない!?なにそれ。そんなことってないよ(笑)。
ー野音へのストーリーがもう始まってるじゃないですか(笑)。
マサヨ 『あっちゃーん!!』って…でもあっちゃんはまず、アタシが缶ビールを持ってたのが嫌だったみたいで『またそんなの持って』って(笑)。今さっき昔の社長に相談したこと、明日あっちゃんに連絡をしようと思ってた矢先にあっちゃんがここにいること、ロリータは野音ライヴを本気でやりたいと思ってること、そんな事を凄い勢いで『どう思いますか?』って訊いたら『いいんじゃない?』って軽い返事(笑)。めげずに電車の中でずっと質問攻めをしたら、あっちゃんは何の躊躇もなく良い事も悪い事もお金の事も、もう本当にすごい具体的に8割くらいのHOW TO野音話をしてくれて『じゃあね。バイバイ』みたいな。いつも通りのスーッて感じで風のように八王子で降りて。で、アタシが『どうしよ~どうしよ~』って悶々としながら自宅に帰ったらあっちゃんからLINEがきてて『ここで俺と会ったってことはきっと神様が「ロリータ18号、野音やれ」って言ってるんだろうからやった方がいいよ』って。
ーあっちゃんですね。
マサヨ そう。実はスゲーカッコ良い(笑)。で、すぐに社長に電話して『あの後、あっちゃんと偶然電車で会ったんですよ!』って伝えたら『え!それアツいっすね!』って。翌日の午前中には社長から『イベンターに相談しました。マサヨさん、色々背負う覚悟があるなら野音やりましょう!』って連絡が来たんだよね。アタシ物凄く嬉しくてね。前日はあんなにアタシのことを止めてたのに、あっちゃんと偶然会ったっていうことで…絶対ダメだと思ってたのに全部がひっくり返った。何か見えないチカラを感じたのかな。
ーシュンって落ち込んだ気持ちはどのくらい上がりました?
マサヨ 高尾山は超えてたよね(笑)。それで社長とも色々沢山話して、遂に腹を括って野音抽選の申し込みに行ったんです。その1週間後かな?抽選日。で、抽選はアタシとたこち2人で野音の事務所に行ったんだけど。抽選が始まって気がついたらアタシとたこちで手を繋いで、下を向きながらずっと震えてて…もう完全に不審者(笑)。そんな我々が当選しちゃって、2人で『わぁぁぁぁ!!!』って絶叫して号泣してたら『おめでとうございます!』って、野音事務局の方々はやさしかった(笑)。
吉村由加 野音延長のニュースを間に合うタイミングで拾って、抽選に行けて、当たって…っていうのが凄いよね(笑)。
マサヨ 『やっぱ野音やりたい!』ってところから抽選に当たったまでが2週間くらい、怒涛だったね。そこから社長にイベンターさんや舞台監督さんなどを紹介してもらって、よし!骨組みが見えてきた~って所でそもそも論の『ロリータ18号が2600人キャパって無理じゃね?』っていう原点に戻った(笑)。さあどうしようかって、またみんなで考えて。お客さんが入る入らないもそうなんだけど、せっかくやるんだったらある程度、お客さんが心配しないくらいの形にステージも作って、冥土の土産としてDVDとか何か形に残したほうがいいんじゃないかって。そしたら社長からクラウドファンディングを勧められたんだよね。人がやってるのは知ってたけど、まさか自分達がやるなんて想像もしてなかったから、またあっちゃんに相談して。で、バンド界のクラウドファンディング帝王ことmilktubのbambooくんを紹介してくれたんだよね。
ーあ、それまで面識はなかったんですね。
マサヨ ニューロティカの楽屋とか打ち上げで何度かご挨拶させてもらったことはあったけど、ほぼ初対面くらいな感じで。でも色々相談させてもらって『やりましょうか!』っていう話になったんです。bambooくんと社長とメンバーで色々考えながらもなんとか進めていってたんだけど8月20日くらいに社長が野音の制作を降りちゃったんだよね。
ーえ?
マサヨ ある日突然。 それまで本当に、凄く一生懸命やってくれてたんだよ。ただ…それがクラウドファンディングをスタートさせる前の週。
吉村由加 はっきりした理由はわからないけど…社長なりに何か感じたことがあったんだよね、きっと。
マサヨ だからクラウドファンディングをスタートするのが遅くなっちゃって。内部事情としては始められなかった、が正解。
吉村由加 周りにも『いつから?いつから?』って聞かれても答えられなくてね。
マサヨ 蕎麦屋の出前と一緒で『いま出ました』くらいの感じで(笑)。イベンターさんとのやり取りだとか具体的なことを全部社長におまかせしちゃってたから…何か重い鉄の扉が急に下りた音が聞こえたもんね、『ドーン!』って。
吉村由加 聞こえたね。
マサヨ しばらく空を仰いで…でもクラウドファンディングは元々bambooくんが帝王だから改めて相談したら『今までとはやり方も変わるし、厳しい戦いになりますけど大丈夫ですか?お客さんからお金を頂いてやることだから真摯に向き合ってお付き合いしていかなきゃいけないんですよ』っていう事と『あと野音まで3ヶ月しかないけどゼロから出来ますか?』…と。そこで、『できません』とは言えなかったし、言いたくなかった。
ーそうですね。
マサヨ とにかくクラウドファンディングもメンバー一丸となって一生懸命やる!そこしか道はない!ってみんなで話した。更にイベンターさんからは『イベンターとして全力を尽くしますが最終的に赤字になった時の全責任はマサヨさんになりますけど、それで大丈夫ですか?』と…ですよねぇ~。
ーですよねえ。
マサヨ でも、こんなヤバい状況にもかかわらずイベンターさんが降りなかった事は本当に有難かった。それがなければ野音キャンセルだったから。そして、社長に紹介してもらったスタッフの方々も引かざるを得ない状況にありつつ残って下さる方もいるし、引いた方もその後の事を心配して下さったり。更に、こんな状況下にある激厳ロリータ野音なのに新たに制作を引き受けて下さった方やスタッフの方々が…もう感謝しかないですよね。だから今、逆に最強な布陣なんです!
ー四面楚歌からの復活ですね!
マサヨ 実は、ロリータ35年やってきたけど、バンドを運営するにあたり特に儲かりもしないけど借金背負ったことは1回もないんだよね。
ーアントニオ猪木は『借金はあった方が生きる力が湧く』って言ってました!
マサヨ マサヨイズムは違う(笑)。でもマジな話、さすがにちょっと額が大き過ぎてこれはどうしたもんかなと思ったけど、アタシ昔からずっと野音でやりたかったんじゃん、あんなに。それを『借金を背負うからやめます』なんて言いたくなくて。だから今までに括ったことのない腹をここで括って…。
ー人ごとみたいになっちゃいますけど、やりたいなら絶対やった方がいいです。後悔しない選択をした方がいいです。
マサヨ クラウドファンディングの見え方も変わってきた。結局それまではお客さんからお金をもらうってことがどういう事なのかちょっとふわふわしてたかも。でも今は見えた。今までふわふわで駆け抜けてこれたのは、それはそれで幸せだったけど、今回のことで覚悟が変わった。
吉村由加 ここで1回つまずいたことで、私達も本腰入れないとあまりにもマサヨちゃんが可哀想。だけど、逆に今のタイミングでよかったよね。
マサヨ あっちゃんチルドレンっていうかさ…あっちゃんってどんなにしんどいことがあっても表に出さないじゃん。アタシはそのチルドレンだから、何があってもそういう話は今までしてこなかったんだよね。親が危篤でも何も言わずにライヴやってたし。今回の大変だった話もお客さんには関係ないし。
ーユーモアがあれば表に出すのもアリなんじゃないでしょうか。
マサヨ まぁね。だから今回は話したけど…ユーモアって難しいね。これを読んだお客さん達、引いてないかな(笑)。でも、きっとなんか良かったと思う。『野音をやろう』って最初に相談をして力を貸してくれて一緒に走ってきた人がいなくなったんで、ロリータ18号だけでやることになっちゃった。『なっちゃった』という話をしたらいろんな方が力を貸して下さった。アタシは阿呆だからこんなことがなければそういった方達の愛ある気持ちをわからなかっただろうし、感謝ってこういうことだと身をもって知れた。あ、ちょっとお伝えが遅くなったんですけど、ロリータ18号結成35周年にして今回の野音へ向けてメンバーが5人になりましたよ!ずっと4人でやってきたんだけどこのたび急に。しかもドラマーが2人っていう。
ーフレキシブルでいいと思います!
マサヨ よっちゃん(吉村由加)には、ずっと詐欺師みたいな感じでお願いしてきてね(笑)。
吉村由加 まつだっっ!!(SUPER JUNKY MONKEY/2018-2020ロリータ18号でDr.サポート)の後はどなたかに頼んだりしてたの?
マサヨ してない!毎日ピュアにバンドをやってるんで、メンバーから『辞めます』と言われてから初めて『マジっすか。どうしよどうしよ』みたいにずっとやってきた。
ー結構前ですけど、マサヨさんが『自分が抜けるから、あとはみんなでロリータ18号をやってください』って言ってたことありましたよね。
マサヨ あったっけ?まぁ、やらないよね(笑)。その後2018年にアタシが1人になって、スーパージャンキーモンキーのまつだっっ!!と毛皮のマリーズだったヒロTがサポートしてくれて、ギターは…ついにもりみ登場!
ーもりみさんがロリータのギタリストオーディションにきた時、私たまたまスタジオにいたんですよ。何人かオーディションしてる中で『あの子(もりみ)がいいと思う』って、たこちに言いましたもん!
マサヨ そうだったんだ。でも、その時のもりみは技術的にロリータについていくのが難しそうで。即ツアーへ行く状況だったんで本人的にもしんどいだろうなって思って『ごめんなさい』したんだよね。ただキャラクターとしてはすごい印象に残ってたの。アタシ1人になった時に何の迷いもなく『あの子とやりたい』って思って電話したもん。自分の中では『やります』って即答してくれた気がしてるんだけど思い出補正されてるかな(笑)。
ーそもそものウイキペディアに書いてある『メンバー全員解雇』についてお差し支えない範囲で教えていただけますか?
マサヨ 全員解雇ではないんですけどね…でも、あの時は完全にアタシが悪いの。っていうか、ホントはあの時だけじゃなくて。ずっと長い間、自分のやりたいことを強引にメンバーに伝えてやってきてた。それが当たり前だと思うくらいの感覚でね。なんならエナゾウやキム★リン時代の頃から多分そうだったと思う。
ーなるほど。
マサヨ バンドの中で自分は引っ張っていく人間だからそれが『いいことなんだ』って思ってやってた。曲を作ることだったり、スケジュールを調整することも、メンバーには決定事項のみ伝える、みたいな。みんな今までよくここまで何も言わないで、ずっとついてきてくれたなって思うもん。もちろん楽しい時はいっぱいあった。あったけど、結局大きい…音楽のところでは自分の『やりたい』が強すぎたんだよね。
ー舵をとる人がいなければ船は動かないので全部が全部マサヨさんが悪いとも思わないですが…。
マサヨ 違うことを違うって言いづらい環境、まさに昭和のパワハラ上司。自分がパワハラ部長になってるのも途中からわかってたんだけど、変わり方がわからなかった。ずっとそうしてきちゃってたから。
ー確かにハラスメント的というか圧は凄かったです(笑)。でもみんなロリータ18号が好きな気持ちが真剣だからこそぶつかるわけで。
マサヨ メンバーが『マサヨが楽しんでくれたらいい』と思って支えてくれてたことに、アタシがあぐらをかき始めたからおかしなことになったんだよね。ロリータ18号を愛してバンドに向かっていたメンバーの気持ちに気付けなかった。だから全世界のパワハラ部長に言いたい、『お前も変われるから、気付け!』と。誰も注意してくれないから自分自身で気が付かなければならないけどね。気が付けるタイミングは周りに誰もいなくなった時かも。でもそれがチャンス、自分を振り返ってみたら何でかわかる。で、自分と向き合って、本当に自分に大切なのは何か?よ~く考えればきっとわかる。そんで、またもう1回新しいスタートが切れたらラッキー。アタシは、たこちとまたやれることが出来たよ。
ー凄い。
マサヨ よっちゃんのことはずっと知ってて、ちょっとだけ喋ったことあったよね?
吉村由加 挨拶程度だけどね。近いところでは私がヌードルスで叩いてた時期があって、かな。
マサヨ 『直近に名古屋でパンクのイベントがあるんですけど1本だけお願い出来ないでしょうか!』って。
吉村由加 それも即答はしてないと思う(笑)。パンクロック的なリズム、ビートの経験がそんなになかったし、マサヨちゃんは女子パンクの代表なのに、後ろにニセモノがいる!って思われるんじゃないかなと思ってさ。そしたら『そんなに速い曲をやらないから大丈夫!』って言われて(笑)。
ーその時点でベースはどなたかいらっしゃったんですか?
吉村由加 中西智子さんと同時だったかな。中西さんは前から知ってたし、指弾きのベーシストだから私が思い描いてるパンク像ともちょっと違うスタイルだし楽しみに思えてきて『やります』って言ったの。
ー吉村さんは男性メンバーのバンドに所属する事も多かったと思いますけど、その辺も抵抗はなかったですか?
吉村由加 昔は『女性バンドは苦手』って思ってたけど。OOIOOは女性のバンドだったけど楽しかったし、もう若くもないのでそういう意識もだいぶなくなっていた頃にヌードルスで叩いて…からの、ロリータだったので。ロリータくらいのレベルに達すると『女子だから、男子だから』っていう力量の差も感じないし、むしろ女性の方がキモ座ってる、肝っ玉でっかいっていう(笑)。
ーあはは。『1本だけ』のライヴはどうでしたか?
吉村由加 『青雲』って曲がつらかった(笑)。『この曲だけ速い~!』みたいな。
マサヨ よっちゃんにはパンクの世界での当たり前のルールがないっていうのが良いよね。あと『Oi!』って言うのもね(笑)。
吉村由加 その『Oi!』ってどこで入るの!?裏なの?表なの?みたいな(笑)。
マサヨ こっちは裏と表とか考えて『Oi!』って言ってないから(笑)、まず共通言語を見出すっていうことから始まって。ロリータってね、パンクパンク言ってるけど、またちょっと特殊な…1、2、3、4だけでは進まない、こう…変則なことを曲の中にいっぱい入れちゃってるから、それが余計混乱させる原因でよっちゃんはスキルあるのに大変だったと思う。
吉村由加 3年経ってやっと自分の芯みたいなものが出来たのでよかった。ロリータの曲ってもの凄く愛情込めて作ってる、勢いだけじゃないっていうのが女子特有の感性としてちゃんと残ってるのがよくわかるから、それをちゃんと失わないように演奏しようっていうのが難しかったな。
マサヨ 1回だけライヴお願いしますって言ってから、はや3年。マジで詐欺師だよね(笑)。
吉村由加 ドラム叩いてて、お客さんがロリータを愛してるのがすごくわかるの。他のバンドにはないような情というか、優しさみたいな、そこに力を感じてるんだなぁって。
ー吉村さんがロリータのサポートを始めた頃のベースは中西さんで、現在はもともとメンバーだったたこちじゃないですか。プレイヤーとしてどんな違いがありますか?
吉村由加 中西さんは指で弾くので、アタックの位置を私がそこまでうまく拾えなくて、私がもっとカッコよければもっとカッコいいロリータに出来たのに、ってちょっと悔しい思いがあるかな。
マサヨ そんなことはないよ。
吉村由加 たこちのビートって私の中ではロリータ18号の正義。たこちはもう、ロリータの曲を作ったり歌ったりしながらやってきた人でしょ。信じるところにたこちがいるので。
マサヨ いいね。
吉村由加 バンドが前に進んでいく安心感がある。
マサヨ こうやってよっちゃんがちゃんと見ててくれる。アタシとたこちは物事を俯瞰で見られない、感性で突っ走るタイプだから、こういう目線で見守ってくれながら楽しんでくれるのが非常にありがたい。『1回だけ』って言ってごめん(笑)。でもこうやって一緒に、まさか野音まで出来るなんてね。もう1人のドラマー、BO-PEEPの中野良子ちゃんも今回一緒にやってくれることになって。もともとロリータと対バンしたり、知ってはいたんだけどまさか一緒にバンドやるって発想はなかったねえ。よっちゃんが家庭の都合で出られない時に良子ちゃんにツアー3本叩いてもらって、それもまた楽しかったんだよね。よっちゃんは3年、良子ちゃんは今年の1月からだけど、どっちか1人選ばなきゃいけないシステムなんですかこれ?っていうのをすごい思ったのね。バンドは4人じゃなきゃダメなのか?って。
ーギターが2~3人いるバンドもいますしね。
マサヨ ですよね。それでたこちともりみと話をして、2人に改めてお願いをしたんです。キャラクターは全員バラバラだけど、5人で野音でアー写撮影した時くらいに一体感を感じたんだよね…あと社長が制作から降りた時(笑)。
吉村由加 あの一件以来、みんな心を強くして『一緒に行こうぜ』ってなったよね。
マサヨ なんか、わはは!ってなるよね。もう、それはそれ。こんな状況だけど次はどうしていこうか!ってすぐに切り替えられた。アタシはパソコンがまるっきりダメだけど、よっちゃんと良子ちゃんが得意だったり、よっちゃんは営業も得意だし、たこちはSNSが得意、もりみはクラウドファンディングの提灯担当なんだけど…。
吉村由加 提灯の見積もりから発注までやってくれてね。
マサヨ 業者を探すとこから規格を全部調べて…失礼だけど、そういうことができるタイプだと思ってなくて。でも、もりみが一生懸命やってくれたお陰で今ウチに提灯100個あります(笑)。
ー適性が独特ですけど頼もしい(笑)。
マサヨ 適材適所で誰かしら手を挙げてくれる。今までは全部自分で抱えこんで、出来なくて投げるっていうのがアタシのいけなかったところ。挙げ句の果てにパワハラ部長じゃん?そりゃ辞めるわ。でもアタシ変わったよ。たこちがいなくなって変わった。
吉村由加 全然違うよね。
マサヨ 今までアタシが甘えてたメンバー達と離れて…自分でも離れた段階で自覚したの、自分が悪いって。だから次に会う人達に同じことは絶対にしたくないって。たこちが戻ってくるまでの約5年間でちょっと冷静になれたし、振り返ったら今までのメンバーみんな本当にちゃんと向かってくれてたんだなっていうことに気付けて、ちゃんと感謝の気持ちを持てた。野音では演奏も長めにやれるから、昔観てくれてた人にも喜んでもらえると思うし、最近しか知らない人にも『そんな時代があったんだ!これ同じバンド!?』って驚いてもらえるし、かなり全時代対応型のセットリストになってると思う。きっと最初で最後の野音だから、とにかく観てほしい。あと、チケットは早めに買って頂けるとメンバーの気持ちが落ち着きます(笑)。
ロリータ18号結成35周年記念日比谷野音ワンマンショウ
「ロリータ35年」
2024/11/24(日)日比谷野外大音楽堂
出演:ロリータ18号(ワンマン)
open 16:00 / start 17:00
adv ¥5500 / door ¥6000
チケット発売中:
https://www.red-hot.ne.jp/play/detail.php?pid=py25114
問い合わせ:HOT STUFF PROMOTION(050-5211-6077 http://www.red-hot.ne.jp/)
最新MV「ラブソング」公開中!!!
結成35周年を迎えたロリータ18号が、お世話になっているお忙しい方々に出演をお願いしたのはなんと…皆さまと一緒に暮らしているお猫さま達!!!
前代未聞、パンクバンドの猫MVがここに爆誕!!!
全員可愛すぎるので何度も観て下さい♥
(ロリータ18号 石坂マサヨ)
出演
●きな子 : 中野良子(BO-PEEP、ロリータ18号)
●BLU:(ブルー)、MALLOW(マロウ)、LILY(リリ)
● : うつみようこ(バンドマン、ボイストレーナー)
●ミカヅキ : 福岡晃子(accobin、チャットモンチー 済)
●ごみちゃん : KERA(有頂天、劇作家、映画監督)& 緒川たまき(俳優)
●シャム朗 : 和田ラヂヲ(漫画家)
●ふくこ、てんすけ : 三宅弘城(俳優、グループ魂、画鋲)
●ひじき : 上田ケンジ(ベーシスト、ex.KENZI&THE TRIPS)
●オヒア、レフア、ピカケ、イリマ、コクア : 春日弘(THE POGO、ex.MOSQUITO SPIRAL、ex.LAUGHIN' NOSE、ex.DESSERT)
●みつお(みーくん): KAZUKI(JUNIOR、CRACK The MARIAN)
●がんも : フミ(POLYSICS)
●クロスケ、オシオ : ジャイアン(ELECTRIC EEL SHOCK)
●ムギ:コウヘイ(gyouninven、BANANA SHAKES、SENTIMENTAL OF YOU、B.A.a.D)
●湯太郎、小次郎、寧々 : やよい(つしまみれ)
●ガジュ : tuffy(Cosmic Strip)
●こめ、むぎ : 小野島大(音楽評論家)
●リュウタ : THOR(Punk Bar H.O.D)
●てんちゃん : 菊池茂夫(写真家)
●ドーラ : 樋口尚文(映画評論家、映画監督)
●ゴロリン : ビーチくん(HELSINKI ON THE BEACH)
●サーストン、ヒゲくん : kubobon(meril)
●ちび : 前田夫妻(札幌コーヒーハウス ミルク)
●吉兵衛丸、ロンちゃん、又兵衛 : 五井家(石坂マサヨ 妹夫妻)
●萬吉 : 石坂マサヨ(ロリータ18号)& 石坂光代(マサヨ 母)
※順不同、敬称略
<企画・制作>
●chaos fever !
●ロリータ18号
<編集>
●前川和人(ELECTRIC EEL SHOCK)