BLUEVALLEY ミナタニキクミ(Vo/G) &ミズウチカズキ(G)インタビュー
KKV Neighborhood #167 Interview - 2023.5.11
インタビュー、構成 by 小野肇久
何もかも初めての状態からミナタニキクミが始動させたBLUEVALLEY。“Lo-Fi DIY POP Grrrl” という指標を掲げながら様々な繋がりによって紡がれていったBLUEVALLEYのサウンドは、いつしか彼女の頭の中で鳴っていた理想の “オルタナティヴ・ミュージック” へと辿り着いていた。その現時点での集大成として2022年の9月にKiliKiliVilla/BOOTRECから発表された1stアルバム『BLUEVALLEY』は、BLUEVALLEYの“今の姿”が色濃く刻まれている。そのプリミティヴな衝動の根源を探るべく、ミナタニ(Vo/G)とミズウチ(G)に結成からこれまでの活動を振り返ってもらいながらインタビューを敢行。
また、この2人は活動の拠点にしている名古屋にバー&レコード・ショップ=CAN BUY RECORDSを今年の3月にオープン。今回のインタビューはそのお店でおこない、開店のいきさつなどについても聞いてきた。
―BLUEVALLEYは2019年の夏から活動をスタートさせましたが、最初はキクミさんのソロ名義という感じだったのでしょうか?
ミナタニ:はい、BLUEVALLEYを1人で名乗って活動していました。
―BLUEVALLEYを始める前も音楽活動はしていましたか?
ミナタニ:そうですね。高校生のときからバンドをやっていて、その頃はベースを担当していました。自分がメインのバンドはやったことはないんですけど、いろんなバンドに参加したりサポートとかしてましたね。
―その頃はどこでライヴを?
ミナタニ:出身が岐阜なので岐阜や名古屋でやることが多かったです。レーベルに所属しているバンドにも在籍していたことがあるので、東京や大阪へツアーで行くこともありました。
―では、BLUEVALLEYを始めるきっかけは何でしたか?
ミナタニ:メンバーで曲を持ち寄って作るバンドをやっているときに、自分の曲がバンドで形にできなくて…。私がうまく曲のイメージを口頭で伝えられなかったのもあるんですけど(笑)、それに対する葛藤や違和感みたいなものはありました。いろんな音楽を聴いてはいますけど、「こういうバンド・サウンドをやりたい」って主張して引っ張っていくタイプでもなく、あるときに自我が目覚めたというか(笑)。
―本当にやりたい音楽に気づいた?
ミナタニ:はい。そもそもベースで表現しようと思っていたのが間違いだったんだなって(笑)。それでギターを練習して、リズム・ボックスを使ってみたときに「ファズのギターと組み合わせたらバンド・サウンドみたいにできるんじゃないか」と気づいたんです。自分の中では「1人で活動する=アコースティック」なイメージがあったんですけど、それをバンド・ヴァージョンに変えるというか。それからライヴができるくらいの曲を作り始めました。で、本当はメンバーを集めてバンドとしてやっていきたいから、最初からバンド名のようなBLUEVALLEYという名前にしたんです。
―バンド名の由来は?
ミナタニ:「青いギターのミナタニ」を略した英語なんですけど、<BLUE=青>と<VALLEY=谷>から名づけました。
―活動を始めてから5ヵ月くらいで早くも7インチ「I LIKE WHAT I LIKE!!!!」を自主リリースします。最初の作品をアナログ盤でリリースするのってわりとハードルが高そうに感じるのですが。
「Yume no Uta」MV ※「I LIKE WHAT I LIKE!!!!」収録
ミナタニ:私主体のバンドを始めることや自分で歌うこと、曲を作ったりすることすべてが初めてだったので、それなら自分の好きなことだけでひとつの形にしたいなと思ったんです。あと、その頃にライヴが決まっていたので、作品がないっていうのはよろしくないなと。それに、せっかく曲を録るのにデモCDだと「なんかなぁ」っていう気持ちもあって、どうせシングルを制作するなら自分の好きなアナログ盤でリリースしちゃおうと。
―この1stシングル「I LIKE WHAT I LIKE!!!!」からギターでミズウチ君が参加します。
ミズウチ:ちょうど僕がやっていたバンドが活動できなくなってしまった頃で、BLUEVALLEYは続々とライヴが決まっていたから「どっかのライヴでギター弾こうか?」って。そのあとも何となく普通に参加するようになって、元々あった曲に僕がギター・リフをつけたりして。
ミナタニ:きっかけは、たしかレコーディングのときに「ギターで参加してほしい」ってお願いしたのが最初かも。その頃は2人でやっていくとか決めてなかったんですけど、意外とミズウチ君のギターがハマったんですよ、「そんな感じのギターも弾けるんだ」って(笑)。
ミズウチ:爆音じゃなくて弾けるんだって(笑)。
ミナタニ:私はそのとき「初めてイメージが伝わった!」って思ったんです。性格的にも、自分の意見を言わずにバンド活動をしていたことが多かったし、好きなバンドが同じ人たちとやったこともあまりなかったから、自分でバンドを始めざるを得ないって感じでした。それが、曲のイメージを伝えて、レベル・アップされた音源が戻ってきたときはすごく感動しました。頭の中にあった音が再現されてるって(笑)。
―このシングルは宅録じゃなくて、スタジオでレコーディングしてるんですね。
ミズウチ:あんなローファイな音像ですけど(笑)。
ミナタニ:よく言われるんですけどね(笑)。ちゃんとラインとアンプを使ってます。
ミズウチ:トラック数が少なそうに聴こえると思いますけど、そこそこあるんですよ、実は(笑)。
―失礼しました(笑)。ミックスは自分たちでやったんですか?
ミズウチ:豊田市にあるGEL Sound Productionの松石ゲルさんがエンジニアを担当してくれました。アナログ機材でもたくさんレコーディングしている方なので、こちらの希望を伝えると「例えばこういった方法もあるよ」とアドバイスをしてくれたり、作業も早くできました。
―作詞作曲はすべてキクミさんが担当しているんですか?
ミナタニ:そうですね。
ミズウチ:僕はギターのリフとかを作って「大丈夫ですかねぇ?」って社長にお伺いを立てるみたいに(笑)。
―その1stシングルから半年後、2020年6月に2ndシングル「Seaside Story / Person」を7インチで発表します。この作品からテッペイ君がドラムを叩いています。
「Seaside Story」MV
ミナタニ:私はテッペイ君とは面識がなかったんです。ミズウチ君はCount Phantomの頃から、テッペイ君が参加しているWBSBFKと繋がりがあって。それで、大須にあるレコード店のfile-underのイベントがHUCK FINNで開催されたときに初めてテッペイ君と会ったんですけど、彼はBLUEVALLEYのことを知っていてくれて「一度一緒にスタジオ入りましょう」って言ってくれたのがきっかけですね。
―そのスタジオでのフィーリングがよかったと。
ミナタニ:「WBSBFKもあるし、こっちはサポートって感じなのかな」って思ってたんですけど、テッペイ君が「本当はドラムの音がほしいんだろうなって思ってたし、僕もバンドの一員として考えてます」って言ってくれて。ミズウチ君も最初はサポートっていう雰囲気だったんですけど、みんなと一緒に演奏していくにつれて段々と3人のバンド・サウンドになっていって今に至るって感じですね。
―ベーシストもバンドに入れようという考えはなかったのでしょうか?
ミナタニ:あまりなかったですね。自分たちの曲にベースが入るってことが想像できなくて。
―キクミさんは以前ベースを担当していましたが、それは意外ですね。
ミナタニ:そうなんですけど(笑)。もう完成された曲って感じてしまって、わざわざベースを入れる必要性もないなぁと思ったんですよね。それと、一旦この3人のバンド・サウンドを突きつめてみたいっていうのもありました。
ミズウチ:とくに「ベースレスなバンド・サウンドが好き」っていうわけではないんです(笑)。
ミナタニ:そう、奇をてらっているとかではなく(笑)。
ミズウチ:ただ、ベースがいないってだけで。
―もし理想的なベーシストがいたら、それはOKという感じ?
ミナタニ:もちろんOKです。
ミズウチ:ウェルカムです(笑)。
―ちょうど2作目のシングルを発表した頃はコロナ禍で音楽活動にも影響があったと思いますが、自分たちで撮った映像をたくさんアップしていましたね。
ミナタニ:『Tiny Desk Concerts』がすごく好きで、そういう動画をいつか撮りたいと思っていたんです。この頃は新型コロナの影響で楽しみにしていたライヴやイベントがすべて中止になってしまって、しかも2020年の6月にはオーストラリアのバンド、Parsnipの来日公演のサポート・アクトが決まっていたんです。元々このバンドが大好きで、来日公演が決まって、さらに対バンにも抜擢されてすごく楽しみにしていたんですよ。この公演に向けて2ndシングルを作っていたというのもあって……だからこの頃はとっても辛かったですね。
ミズウチ:その来日公演は、自分たちも好きな名古屋の6EYESやDJにfile-underの山田さんも決まっていたし。
ミナタニ:いろいろショック過ぎて「絶対何かやりたい」と思って、それで『Tiny Desk Concerts』みたいな映像を考えたんです。わたしのソロ、ミズウチ君とのデュオ、テッペイ君も入った3人編成という構成で作りました。
―そして、2021年5月に3枚目のシングル「Society / Good bye」を7インチでリリースします。
「Society」MV
ミズウチ:コロナ禍でプレスが遅れたりして何回も延期しちゃったんですよね。
―ちょっと一旦話題を変えますが、名古屋の音楽シーンと自分たちの立ち位置についてはどのように捉えていますか?
ミズウチ:どこにも属していない感じ(笑)。
ミナタニ:そう(笑)、どこにもハマってないなぁって。
―それはサウンド面で?
ミズウチ:それなのか、はっきりとはわからないんですけどね。
―BLUEVALLEYは関東や関西、昨年は福岡でもライヴをやりましたが、そのときはどうでしたか?
ミナタニ:楽しかったです!
ミズウチ:音楽性が違っても受け入れられるというか。もはや、どこにフィットするのかがよくわからなくなってます(笑)。ただ、何となくなんですけど、KiliKiliVilla内にあるレーベルのBOOTRECが去年の7月に発表したコンピ作品『NU PSYCHIC TEEN SOUNDS!』にBLUEVALLEYも参加していて、収録されている他のバンドの方々や鈴木"KINK"均さんとかは「曲すごくよかったよ」と言ってくれたんですけど、あのコンピって、言葉にはしづらいけどそういった価値観が合ったバンドが集まっているなぁって思いました。すごく言語化しづらいニュアンス的な部分なんですけど。
ミナタニ:そのコンピのコンセプトがそういった意味合いも含んでいるのかなって感じました。
―音楽性とかではなくて、アティチュード的なところ?
ミズウチ:いや、そこまで重い感じではないんです。何というか、例えばThe Jesus and Mary Chainのことをシューゲイザーと捉える人もいるけど、僕たちはそういうふうには捉えてなくて。でもそれらをひっくるめた人たちが集まったような感じ。
ミナタニ:人によって見方はそれぞれ異なるっていうような。
―昨今の多様性とは少し違うところの、定義と再解釈のごった煮みたいな?
ミズウチ:ちょっと偏屈な感じというか、屈折しているというか。
ミナタニ:どうしてそうなってしまったのかはわからないんですけど…。
ミズウチ:『NU PSYCHIC TEEN SOUNDS!』に関しては、だからといって各バンドと価値観がものすごく合うってわけではないんです。このコンピのリリース後にどこかでそれらのバンドがまとまるわけでもなく、あいかわらずてんでバラバラに我が道を進んでいる。仲間っぽくもなく、界隈でもないみたいな。さっき話にあがったParsnipはオーストラリアのメルボルンのバンドなんですけど、そこの音楽シーンはちょっと特殊な土壌があって、僕らはそのシーンのバンドがすごく好きなんです。ParsnipもリリースしているAnti Fade Recordsというレーベルがあって、本当に音楽のジャンルがバラバラで、だけどどこかに一貫性を感じるんですね。みんなちょっと屈折してるというか(笑)。ああいう感じの憧れや影響はあるのかもしれません。
ミナタニ:確かにそうかも。
―ここ数年のライヴ・イベントは、とくに東京は音楽性よりも感度や感性が近いバンドがブッキングされていて、お客さんもそれを感じ取っているような気がします。
ミズウチ:昔ですけど、eastern youthが主催していた『極東最前線』がまさにそれでしたね。音楽性はバラバラなんですけど、すごく面白いなぁって思ってました。ナンバーガールがいてDMBQがいたり。
―では話を活動の方に戻して、2021年に3rdシングルを発表した頃から1stアルバムをリリースするっていう計画はあったのでしょうか?
ミナタニ:そうですね、シングルを3枚発表したら次はアルバムって考えていて、ひとつの区切りみたいな気持ちはありました。ちょうど、BOOTRECを担当している根本さんから「うちからアルバムをリリースしませんか?」ってお誘いを受けたこともあり。
―そのときはどんな心境でしたか?
ミズウチ:すごく嬉しかったです。その後も、KiliKiliVillaを通して松田“CHABE”岳二さんなどいろんな方々と繋がることができたので、とても感謝しています。
ミナタニ:本当に、メンバーすら見つけられずひとりぼっちの状態で始めたことを考えると信じられないです。根本さんとは面識がなかったのですが、とても丁寧な長文のメールを送ってくれて「ちゃんと音源を聴いて判断してくれているんだな」っていうのを強く感じましたし、私のやりたいことや考えがちゃんと伝わってるって……ホント、人生で起きたことがないことすぎて(笑)。
ミズウチ:そういえば、1stシングルを出したときに「聴いてください!」って面識もないのにKiliKiliVillaの安孫子さんに送ったんです。いろいろと忙しいと思うのに、すごく丁寧な返信をくれました。こうやってKiliKiliVillaからアルバムを発表できたことはとても感慨深いです。
―1stアルバム『BLUEVALLEY』を2022年9月にリリースします。これまで発表した7曲と新曲6曲の構成でセイム・タイトルとなっていますが、その時点までの活動の集大成的な感じにしたいという意図があったのでしょうか?
ミズウチ:それはありますね。コンセプチュアルなものではなくて、ここまでの区切りというか。
ミナタニ:今のそのまんまのBLUEVALLEYをちゃんと切り取った作品にしたかったんです。アルバムのために何かを変えたり加えたりというのはしたくなくて、「これが今の私たちです」っていう作品にしたかった。
―戦略的なことを考えるよりも、現時点の自分たちを記録することの方が重要だったと。
ミズウチ:個人的な感想で言うと、好きなものをそのまま表現したって感じが強いですね。さっき「コンセプチュアルではない」って言ったのも、聴き手のことを考えて曲を作ったり、アルバムのテーマがこうだからこうでっていうのは、これからでもできるなって思ったんです。
ミナタニ:それはある。
ミズウチ:でも何年か経ったら、こっ恥ずかしくなってるかもしれないですけど(笑)。
―1stシングルに収録されていた「Amethyst」や「Pinhole」、「Yume no Uta」などがリズム・ボックスからドラムに変わって録音され、生々しさやダイナミックさが伝わってきますね。
ミズウチ:もちろんリズム・ボックスのよさもありますけど、バンド・サウンドになってるのはいいなぁって、3人の音が鳴ってるなぁって感じました。僕らのギターの音像は、今っぽくないっていうのもちょっとおかしな言い方ですけど、質感がだいぶローになっているので。
ミナタニ:私は感動しましたね。ドラムって叩き方によってすごく曲のニュアンスが変わるし、「こう叩いてほしい」っていうのも伝えにくいから、ドラムに関しては結構時間がかかったんです。
―それはレコーディングに時間がかかったっていうこと?
ミナタニ:いえ、アレンジの段階ですね。基本的にはギターとリズム・ボックスで形にしてからバンド・サウンドへ移行させていたんですけど、そのリズム・ボックスのビートは私の中ではニュアンスでしかないんですよね。だからドラムのイメージを伝えるのが本当に難しくて…。でも、ドラムのテッペイ君もいろんな音楽を聴いているので、やっていくうちにどんどん共有できていって、だから完パケしたときの音源を聴いたときは感激しました。
―全体の楽曲についてはどのようなイメージの共有がありましたか?
ミズウチ:1stの7インチの頃から、お手本というわけではないですけど「ミックスはこんな感じがいい」というような話し合いはありました。
―それはオルタナティヴ・ロックの楽曲が多い感じですか?ローファイとか。
ミズウチ:わりとポスト・パンクやニュー・ウェイヴを参考にしました。ドラムはコンプのかけ方でだいぶ質感が変わってしまうので、ダイナミックに録れたものでも「キュッ」としたいとか。
ミナタニ:あとはSuperchunkや、Tiger Trapなど90年代のKレーベル作品とか。90年代っていろんなジャンルがひしめき合っていたと思うんですけど、その感覚はあるのかも。わたしは年代で音楽を聴かなくて、いろいろと掘って聴いていったら好きなものがあれもこれも90年代の作品だったんです。
―ミズウチ君のギターは、ただのインディ・ポップでは終わらせない中毒性のあるフレーズが印象的ですよね。
ミズウチ:クラウト・ロックやジャーマン・ニュー・ウェイヴなども大好きなので、同じような展開が続く曲だと嬉しくなっちゃうというか(笑)。それはテッペイ君も同じ気持ちだと思うんですけど、僕らの得意分野なので演ってて楽しいんです。同じフレーズを繰り返すのでずっと一緒の演奏になるけど、中毒性を出すために人力で頑張ってます(笑)。
―ギターのリフもクラウト・ロックみたいな反復性がありますね。
ミズウチ:リフはすごく重要視していて、一聴して頭に残るようなものを考えています。思いついたら携帯でそれを録ってあとで発展させたり、全然違うジャンルの誰もわからないような作品の中から引用してきたりとか。そういえばこの前、「何でこんなレコード買ったんだろう?」って思って眺めていたら付箋が貼ってあって「2曲目の、中盤の2回だけ鳴るリフがいい」って書いてありました(笑)。それで改めて聴いてみたんですけど、全然普通のリフだった(笑)。
―(笑)。同じフレーズを繰り返すことで起こるトリップ感もBLUEVALLEYの魅力ですよね。
ミズウチ:使っている機材もアナログ寄りなものが多いから、例えば「キラキラっぽさ」を出そうと思ってもその方法が全然違ってきてしまうので、独特な質感になるのかもしれませんね。
―ラスト曲「Boys & Girls」だけ雰囲気が異なりますが、いつ頃に作った曲なんですか?
ミナタニ:曲自体はBLUEVALLEYを始めた頃にできていたんですけど、バンドでやるイメージもなかったし、わたしのソロでも演ったことがなかったんです。でも、1stアルバムは現時点の集大成的なものにしたかったので、ちゃんと楽曲にして収録しました。
ミズウチ:急に後ろノリな感じになりますからね。
―BLUEVALLEYを始めた頃に比べて、やりたい音楽は変わってきたりしていますか?
ミズウチ:基本的にはあまり変わってないですね。ただ、キクミちゃんが買っているレコードとかを見て「最近はこんな感じのが好きなんだな」って思ったりはするので、もしかしたらアウトプットの仕方が少しずつ変わっていくのかも、質感だったり。
ミナタニ:根底のところに変化はないです。BLUEVALLEYのスタートが「自分のやりたい音楽を形にする」っていうことだったので。
―次作の展望はどんな感じでしょうか?
ミナタニ:これまでよりも音源でしかできないことを増やしたいです。
―今後のライヴの予定があれば教えてください。
ミナタニ:5月13日の土曜日に名古屋のDAYTRIPで『Contortions』というイベントに出演したり、あとはリズム・ボックスを使ったソロの予定がいくつか決まっています。
―それでは、今年の3月にオープンした、バーでレコードも取り扱うCAN BUY RECORDSについて聞かせてください。これは誰のアイデアですか?
ミナタニ:私です。
―もともとお店を持ちたいという思いがあったのでしょうか?
ミナタニ:私はずっとそうでしたね。でも、2人でそれを目標にしたのは去年なんです。そのときは3年後くらいのオープンを目指していたんですけど、いきなり理想に近い物件が出てきちゃって「今?」ってなって、やるしかないなと。
ミズウチ:ちなみに僕はちゃんと渋りましたよ(笑)。ホントに「このあいだの今日」みたいな感じのタイミングだったので。
―バーとレコード販売という業態ですが、そういうお店をやりたかった?
ミズウチ:キクミちゃんがお店をやりたいっていうのはもちろん知ってましたけど、僕の個人的なモチベーションはまだ低かったんです。で、去年の12月に福岡でライヴがあって、そのときにRecord Shop BAGISMへ行ったんですね。お酒とレコードがあって「すごくいい店だなぁ」って思って、3時間くらいそこでお酒を飲んでたんです(笑)、「いい共有の仕方だなぁ」って。世の中にこういうお店があるのは知っていましたけど、体感したことはなかったから。
ミナタニ:あと、偶然にもオーナーのカーターさんはKiliKiliVillaからリリースしているthe PRACTICEのメンバーだったんです。そういったこともあって、BAGISMへ行ったあとからミズウチ君のモードが変わった気がして、そうしたらここの物件が12月に出てきてしまったと。
ミズウチ:きっかけとしてはBAGISMが大きかったですね、いい出会いでした。たまたま話をしたらレーベル・メイトだったし、名古屋の今池にあるRecord Shop A-Zのカズキ君(編注:killerpassなどのメンバー)とも仲がいいらしく共通の知り合いもいるしで。それで、「KiliKiliVillaに所縁のある人が経営するお店って通常業態のものがないよね」って盛り上がったり(笑)。カズキ君もCAN BUY RECORDSのオープン日に来てくれてその話題になって「誰も普通のレコ屋をやれんのか!?」って(笑)。
―でもそれってすごくいい話ですよね。
ミズウチ:ホントたまたまなんですけど、その偶然もすごいなって(笑)。
―お店での役割分担はありますか?
ミズウチ:基本的に2人ともカウンターにいますけど、レコードの販売関連は僕の担当です。いろんな方が来ますし、前職のレコ屋の経験が長いので様々な音楽の話ができるのは自分の強みですね。フュージョンが大好きな年配の方ともよく話をします。
―店内のアンティークな装飾が印象的なのですが、これも当初からの計画?
ミズウチ:本当は「3年かけて集めよう」ってなってたんですけど(笑)。あと、僕はリサイクル・ショップが大好きなのでそこで買ったものもあります。
―中古レコードはどのようなコンセプトで展開しているんですか?
ミズウチ:自分が所有していたものが多いので当たり前なんですけど、個人的に面白いと感じるものだけを置くようにしています。あと、ここにあるレコードはすべて聴いているので、針が飛ぶこともありません。コメントもすべて手書きです。とにかく、その人にとって「よく知らない音楽」っていうのを売っていきたいですね。世間の流行とかは関係なく、楽しいものを取り扱っていきたいです。
―3月にオープンしてみて、どういった方々が来店されますか?
ミズウチ:店名の影響もありますけど、やっぱり音楽好きな人が多いですね。
―このお店をどのような場所にしていきたいですか?
ミズウチ:ここは、自分たちがこれまでいろんなところで見てきたかっこいいとか面白いって思ったモノやコトを凝縮させたようなお店なんですよね。だから、そういったエッセンスを持つような場所にしたいです。
ミナタニ:私はミズウチ君みたいに深い音楽知識がないので、人と話すときに共有できるネタが少ないからなかなかコミュニケーションが難しくて。でも、このお店だったらすべてのレコードが試聴できるから、聴きながらおしゃべりをすることもできます。あと、4月にお店で2010年以降の作品しばりのDJイベントを開催したんですけど、最近の音楽を聴く機会ってどうしてもサブスクが一番最初になってしまうことが多いじゃないですか。だから、アナログの音で新しい音楽と出会えるって場を作りたくて。レコメンド機能で知る音楽ではなく、人が選んだ曲として。私は自分が本当に好きな音楽に気づくのが遅かったので余計にそう思うのかも。だから、知識量とかは関係なく自分の感覚で聴いてほしいし、別に知らない音楽があってもいいじゃんって感じで、もっと気楽に音楽に触れてほしいなって、そんなお店にできたらと思っています。
―老若男女問わず、プラっと足を運んでほしいですね。
ミズウチ:そうですね、単純に楽しい場所にしたいですね。何も縛らず、囲わず、逆に縛られず、囲われずみたいな(笑)、自由に過ごしてほしいです。もちろん音楽に興味がなくても全然構いませんし、現に普通に飲みに来る方もいらっしゃいますので、気軽にお越しください。
デジタル配信のシェアリンクはこちら
https://big-up.style/TUwqshXRWL
KKV-146
CD
2,750円税込
収録曲
01.Mermaid
02.Seaside Story [album edit]
03.Society
04.Person
05.Pinhole
06.Amethyst
07.The Rain Season
08.Yume no Uta
09.Signal
10.High School
11.Summer
12.Good bye [album edit]
13.Boys & Girls
ミナタニキクミを中心に異なるバックグラウンドを持ったメンバーによる名古屋在住のベースレス・ローファイ・ポップ・グループ。
ノイジーでオルタナティヴ、チープでローファイ、キラキラでジャングリー。シンプルな言葉のリフレインとアンニュイで少し甘いVOICE。ベースレスというスタイルが持つ「欠けていることによる完成」というサウンドや叙情性と初期衝動が絶妙に入り混じった世界観は、体温は低いようでいて内面の熱量の行き場を探している2022年のリアリティを感じる。90〜00年代のオルタナティヴ/ローファイ/インディ・ポップからの影響が色濃く、60'sサイケデリックやクラウトロック的な匂いも感じとれるサウンドと、ポップ・ミュージックの歴史をサンプリングしたような軽快な自由さ、言葉を発して音を鳴らすという衝動が詰め込まれた1stアルバム。
CAN BUY RECORDS
Twitter Instagram
愛知県名古屋市千種区千種通5-20-2 第2ウイング大久手2F
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