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最先端の経済指標!?ナウキャストのEconomic Research事業のこれまでとこれから

こんにちは。ナウキャストのBizDevを務めている大澤と申します。2021年3月にFinatext / ナウキャストに入社してから、初めての投稿となります!

※入社エントリーはこちら。

入社時より、Finatextのクライアントスペシャリストとしての業務だけでなく、ナウキャストにおけるビジネスデベロップメント業務も併せて担っており、現在はメインでナウキャストの業務に従事しています。

ナウキャストには「Investment Research」「Economic Research」「Marketing Support」の3つの事業がありますが、今回はその中でも、「Economic Research」事業(以下、ER事業)にフォーカスします。

ER事業を一言で表すと、オルタナティブデータに基づき、マクロ経済に関する最先端の分析サービスを提供する事業です。

このnoteでは、ER事業にて私が具体的にどのような業務を担っているのか、これからのナウキャストにとってER事業がどのような役割を果たしていくのか、じっくり解説します。

「ナウキャストって名前だけは聞いたことあるけど何の会社?」という方から、「JCB消費NOWや日経CPINowは知っているけど、ER事業って具体的に何をやっているの?」という方まで、ナウキャストのことが少しでも気になっている方に読んでいただきたいです。(少し長くなりましたので、ご興味あるところから読んでいただいてもかまいません。)

すべては「東大日次物価指数」から始まった

ナウキャストのER事業を語るには、会社の歴史を紐解く必要があります。

ナウキャストは元々、東京大学経済学部教授の渡辺努研究室が立ち上げたプロジェクトがスピンアウトし、POSデータを用いた日次物価指数「東大日次物価指数」を事業化したことから始まった東大経済学部発ベンチャーです。

90年代前半、買い物が商店街からスーパーヘとシフトする時期に、総務省の消費者物価指数(CPI)は物価の調査員を昔ながらの商店街に派遣していました。そういったことが結果的にデフレの傾向を早期に検知できないことにも繋がり、金融緩和に関する政策判断が遅れる自体となりました。

渡辺研究室は、デフレの原因を解明し、そこからの脱却の方法を提案するプロジェクトを2012年夏にスタートさせました。それが、「『長期デフレの解明』プロジェクト(UTokyo Price Project)」です。経済政策の羅針盤となることを目指して、日本経済新聞社が全国約300店舗のスーパーマーケットから収集したPOSデータを原データとして用い、日次で物価指数を配信しようという画期的な試みが始まったのです。

この指数が「東大日次物価指数」として有名になり、2013年5月から2015年末まで東京大学のホームページで公開されました。その後、事業化された「東大日次物価指数」は「日経CPINow」と名前を変え、現在も当社ナウキャストがER事業のプロダクトとして提供しています。90年代当時、日経CPINowがあったなら、日本銀行は3年ほど早く金融緩和を始めることができたはずとも言われています。

このあたりの歴史について、詳しくは下記のnoteをご覧ください。

ナウキャストの原点、Economic Research事業

こうして日次物価指数の提供からスタートしたナウキャストですが、さらに転機が訪れます。

2016年3月、デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社と野村證券株式会社の2社が幹事を務めるピッチイベント「Morning Pitch」に登壇したことをきっかけに、株式会社ジェーシービーとの協業が実現し、イベントからたった1年で、現在のER事業のもう一つのコアプロダクトである「JCB消費NOW」のプレスリリースを出すに至ります。

このように、ナウキャストの原点はEconomic Research事業であり、当時からいるメンバーもそうでないメンバーも「ビッグデータを、自社やクライアントだけでなく世の中の課題解決のために提供する」という創業期の想いを大切にしています。

ER事業は先ほど記載の通り、オルタナティブデータに基づいた、マクロ経済に関する最先端の分析サービスを提供する事業です。

従来のアンケートや現地調査により収集されたデータから計算した指数だけでなく、POSデータやクレジットカード決済データ等のビッグデータに基づいた指数を利用することで、迅速かつ正確に経済動向を知ることが可能で、官公庁や証券会社、シンクタンク等の景気分析や政策判断をサポートしています。

クレジットカードやPOSなど、消費に関わる様々なデータホルダーと関係性を築き、多様なデータを扱える当社のようなオルタナティブデータのプロバイダーは多くありません。

ナウキャストの強みは、このER事業を通して、指数開発やビジュアライズはもちろん、当社に所属するデータアナリストやデータエンジニアが、そうしたデータから読み取れるインサイトまで提供できるところにあります。

ER事業は、ナウキャストのコアバリューを生み出した非常に重要な事業なのです。

消費と物価の羅針盤、「JCB消費NOW」と「日経CPINow」

前述の通り、ER事業では大きく2つのプロダクト「JCB消費NOW」と「日経CPINow」を提供しています。

JCB消費NOW

JCB消費NOW」は、消費活動の“今”を知るための新しい指標です。日本各地のJCBグループカード会員から約1000万会員を無作為抽出し匿名加工情報を活用することにより、属性(居住地・年代・性別)に偏りが少ないサンプルを元に、指数算出を行っています。

伝統的な統計と比較して速報性に優れているのが大きな特徴で、当月のデータが利用可能になるまでに約1か月半のタイムラグがある総務省統計局の家計調査と異なり、「JCB消費NOW」は半月分のデータがわずか約2週間後に公表されます。

また、地域、年齢、性別区分のクロス集計も可能で、業種もマクロ業種・ミクロ業種に各々のEC決済を合わせて全66業種を提供しています。この網羅性も高評価いただいており、大手経済紙で取り上げていただくことも多いです。

クレジットカードの決済データをもとに消費指数を作る。簡単に聞こえるかもしれませんが、その作成プロセスには、ナウキャストの有するビッグデータ解析ノウハウが詰め込まれています。

例えば、クレジットカードデータゆえのバイアスの問題。消費に関する公的な指標(経済産業省の商業動態統計や、総務省の家計調査など)は、現金を含めたすべての決済での消費活動を表しています。ですが、クレジットカードデータを用いて消費活動を捉える場合、主に以下の 4 つのバイアスを考慮する必要があります。

  • 実際の人口動態対比でのカードユーザーの分布のバイアス

  • セクターごとの消費比率のバイアス

  • キャッシュレス化に伴う消費増加バイアス

  • 新規入会者・脱退者による消費増減バイアス

「JCB消費NOW」は、2017年の提供開始から今に至るまで、サンプル数の拡大、業種の拡充、地域別指数やFrom To指数の追加など、多数のアップデートを行なってきています。
今後もクライアントの声を聴きながら、データの精緻化やより細かいニーズに対応していく予定です。

なお、「JCB消費NOW」の一部指数の算出方法については、ナウキャストの技術顧問である東京大学の渡辺努教授とCEO辻中の編著「入門オルタナティブデータ 経済の今を読み解く」に詳しく載っていますので、ぜひお手に取ってみてください。

日経CPINow

もう一つのナウキャストのプロダクトが「日経CPINow」です。これは、前述の東大日次物価指数をアップグレードして有償化したプロダクトです。全国約1200店舗のスーパーマーケット等のPOS データをもとに、日次および月次の物価指数をポータルサイトで提供しています。1989年からのPOSデータを扱っており、バブル崩壊、消費税引き上げ、ITバブル、 リーマンショック等、日本の様々な経済事象を織り込んだ物価指数となっています。

指数の算出方法は公開もしておりますが、指数理論に照らして最も望ましい性質をもつ算式の一つであるトルンクビスト算式を採用し、ある商品のある日の価格とその商品の前年の同じ日における価格を用いてその商品の価格変化率を計算しています。

このnoteを書いている2022年5月現在、菓子パンや食用油、マヨネーズ、スナック菓子などの食品価格上昇が注目されていますが、実際の動向を日経CPINowで着実に追うことができています。

また、より深い分析のために、短期間の特売の影響を除いた指数や、前年と比べて売上高がどの程度変化したかを示す売上高指数なども「日経CPINow」上で提供しています。

「日経CPINow」は、総務省が公表するCPIよりも1ヶ月早く提供され、1,500以上ものデータ系列を提供していることに競合優位性があります。昨今の経済情勢を鑑みても、物価動向への注目は今後も高まっていくことが予想され、当社としてクライアントや世の中のニーズにしっかりと応えていきたいと思います。

ちなみに、総務省でCPIを開発し、渡辺先生の共同研究者として活躍していた今井も指数開発に関わっており、今井の半生とナウキャスト創業秘話は、以下の社員インタビューをご覧ください。

ER事業のカスタマーサクセスはデータ活用の伴走者

さて、私はBizDevとして、そんなER事業の営業やカスタマーサクセスを担っています。

ER事業におけるカスタマーサクセスは、データ活用を推進するためにその特徴をわかりやすくお伝えしていく必要があります。

クライアントは、金融・経済のアナリストやエコノミスト、官公庁、シンクタンク、さらには海外金融機関、国内事業会社のマーケティング担当や経営企画担当の方まで幅広くいらっしゃいます。個々のお客様によって統計や指数に対する理解度が異なるため、ご提供すべき情報の内容や粒度、お問い合わせへの回答内容も変わってきます。

ほとんどのお客様にとって、オルタナティブデータは初めて取り扱うデータです。それを市場分析や政策判断、経営判断に使っていただくわけですが、適切にお使いいただけるかはカスタマーサクセスにかかっています。そのためにも、知識を深め、社内のアナリストやエンジニアと一丸となりお客様のデータ活用に伴走するのが私の役割です。様々なお客様と接していて何度も感じるのは、ナウキャストは日本の経済・消費・物価の情報を、日本の経済に大きな影響を与える組織や人々に提供できる、稀有で素晴らしい環境だということです。

Economic Research事業のこれから

そんなナウキャストのER事業は、これから以下2点に注力していきます。

  1. 他事業への展開による、顧客セグメントの拡大

  2. 地方自治体や官公庁との連携強化

1. 他事業への展開による、顧客セグメントの拡大

冒頭で、ナウキャストにはER事業のほかに「Investment Research」事業(以下、IR事業)と「Marketing Support」事業があるとお伝えしましたが、ER事業にとって他事業との連携は欠かせません。。

例えば、IR事業は主に機関投資家向けにオルタナティブデータを用いたインサイトを提供する事業ですが、昨今の経済情勢変化によりER事業で提供している消費や物価指数へのニーズが高まっています。

そこで、IR事業で提供している投資分析プラットフォームサービス「AlternaData(オルタナデータ)」では、日経CPINowを用いた物価分析機能の提供を開始しました。

ER事業は、これまで「JCB消費NOW」と「日経CPINow」という2つのプロダクトを中心に拡大してきましたが、これからは付加価値をより高めるため、各データの掛け合わせや他事業のクライアントへの展開などの多角化にも注力していきます。

2. 地方自治体や官公庁との連携強化

自治体や官公庁向けのデータ利活用の取り組みも強化していきます。

既に、内閣府や日本銀行などの公的機関の資料等で「JCB消費NOW」や「日経CPINow」を引用いただくことが多くなっています。以下はほんの一例です。

さらに、昨年10月には、東京都がスタートアップとの協業によって都政課題を解決するため開催しているピッチイベント「UPGRADE with TOKYO(第15回)」でナウキャストが優勝し、オルタナティブデータを活用した新しい中小企業の景況サイトの実現に向けた共同プロジェクトも始まっています。

これまでデータの提供粒度の問題や技術的な問題で難しかった地方の経済分析などができるようにもなり、より自治体や官公庁に貢献できるデータ提供が可能になってきたと感じています。

さいごに

このように、ナウキャストの祖業であるER事業はまだまだ拡大中であり、市場分析・政策判断・経営判断にオルタナティブデータを活用するための支援、金融機関のアナリスト・エコノミストの方々との協働、さらには新しい指数を開発する取り組みなど、メンバーの活躍のフィールドもどんどんと広がっています。

ここまでお読みいただきましてありがとうございました!
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