とよ田みのる『これ描いて死ね』1~6巻の感想
1巻
『ラブロマ』、『金剛寺さん』と、これまでヘテロ恋愛を突き抜けたマンガ表現で描いてきたとよ田みのる(敬称略)が、今度は漫画創作をテーマに王道の青春部活モノを描くとは!!
赤福さんのポジションがちょっと羨まし過ぎますね。当方、まったく創作の苦しみも理解せずに読みまくって好き勝手言いまくる「傲慢な読者」やらせてもらってますんで。そんなワタクシ(純読者)も漫画制作に欠かせない存在として迎え入れてもらったような気がして……つい評価が甘くなってしまいます♪ ←チョロい読者
メインの学生3人はなんだか『ちいかわ』の3人みたいでいいな。赤福=うさぎ……
2人ではなく3人というのがいいんだよな。
「ライバル」石龍さんも加わる次巻が楽しみ!
そして先生の存在がすばらしいですね。読切「ロストワールド」めっちゃ良かった。『金剛寺さん』より『ラブロマ』派なので、こんなところで制作秘話が……ッ!と感動してしまった。
「これ描いて死ね」なスタンスで青春期に漫画に向き合ってきた先生が、今は教師という立場から、自分とはまだまったく異なる漫画へのスタンスで青春を生きている子どもたちに、ときに空回りしながらも教え導いていく……この構造がまた、本作を奥深くしている。
今のところメインは女性しか出てきてない「百合」マンガだけれど、そこら辺の同ジャンル作品とはやはり一線を画すパワーと厚みがある。
とよ田みのる版『バクマン。』というか、フツーに漫画制作のハウツー描写も豊富でタメになる。
それから、伊豆大島を舞台にした風景描写も丁寧で、何気ない小さなコマの通学路の背景まで魅力的なのも良い。
2巻
お、おもしれぇ~~~~~~
いくらでも"前衛"をできる天才作家が"王道"に本気を出すとこうなるのか……
4人目の部員、石龍光ちゃんのキャラもめちゃくちゃ良い。心ちゃんのママ対策に即座にその場で宿の予約取るのとか。
赤福幸さんは相変わらず最高で、しれっと3人のペンネームのいちばんおいしいとこ持ってってて笑った。
手島先生の過去編「ロストワールド」も外伝の巻末おまけというよりは、本編の重要なストーリーラインの二本柱(のひとつ)といった趣になってきており、嬉しい。最後に特大の百合ぶっこまれてワロタ
光ちゃんのお母さんが「神」なんだろーな~
『映像研には手を出すな!』のマンガ版っぽさもある。どちらも王道青春部活モノ×創作×強い独自性
主人公の相さんが、自由で元気にぶっ飛んだ熱血天才系かと思いきや、ちゃんと王道に悩んで王道に嫉妬して王道に努力して……な、マジで王道の〈主人公〉をしてて応援したくなる。自分だけで描いたコピ本が身内5人に買われて完売するとこ泣いちゃったよ。せ、せんせぇ……!!
商業を目指しは本当にしないのだろうか……手島先生との約束はフリ?
3巻
「漫画に描きたい100のコト」の見開き、見開き史上トップクラスに感動した。ちょっとすごすぎる
このマンガ、どいつもこいつも誰かしら何かしらに巨大感情を持っているんだよな…… とにかく「愛」に溢れている。それは本作に限らず、とよ田みのるの作家性だろう。ヘテロ恋愛から同性愛や友愛、漫画への愛にすり替わっただけ。ラスボスは「自己愛」かな?
自分は読んで感想言うだけで基本サボっているだけなのに、幸がいないとコミティアにも文化祭にも出る踏ん切りがつかなかったしSNSへの投稿もできなかった。半分は部外者だからこそ無責任にそのボタンを軽やかに押せる、そんな赤福幸の役回りが実に見事だなぁと思う。
クーデレシスコン姉キャラは巷にありふれているが、おじさん構文使いは初めて見た……
光と幸、そこがカップリング組まされるのか……そっか……
世の90%の「普通」の側だからこそ赤福幸は友達が多く、いつも楽しそうに生きている。「普通」を全肯定する幸にへびちか先生(母)が恐れを抱き、娘・光は赤福師匠と呼ぶようになる……なるほど~。うーむ……良いといえば良いんだけど、ふたりとも好きなキャラなだけに、なーんか安直さは否めないな。光→幸 の惚れた感情が。幸はいい意味で友達に優劣をつけないフラットさ、〈愛〉からも自由であるところが魅力だと思っているので、幸→光 はそんなに強いわけではないのが救いだが。
というか、今更スタージョンの法則(の誤解流布ver.)を引用してきてこのようにガッツリ強キャラの思想に据えること自体が陳腐すぎる気はする。じっさい自分の中でへびちか先生の格がグッと下がってしまった。そんな凡庸("普通")でしょーもない考えを大切にして漫画家人生歩んできたんかこの人は……と。
愛に満ちた高校生たちのキラッキラの青春をたっぷりお届けされたあとに、若かりし☆野0先生が出てきてすべてを吹っ飛ばす痛さ(若さ)を披露してくれることで、毎巻マンガが "締まる" な…… さすがです先生!
4巻
“もう少しあなたの側にいさせてほしい。”
それはもう愛だよ……先生……
冒頭の15話のエピソードといい、零相の関係がほんと強い
商業入りしてプロを目指すのか否か。
今のところは絶妙なバランス感覚でもって、そのテーゼを止揚している。
この問いは、本作の青春部活モノとしての佇まいにとっても重要な問題であることは言うまでもない。プロを目指すのであればそれはもはや「青春」の一言で片付けられる話ではなくなる。しかしタイトルには紛れもなく「これ描いて死ね」と書かれている。青春の終わりではなく、人生の終わりまで漫画に付き合う(ような漫画にする)のか。いち読者である私自身は、この物語にどうなることを望んでいるのだろう。
アマチュアで売れっ子の光もいるし、正直プロルートに入らなくてもどうにでもなりそうな気はする、物語的に。
零の親友、七さんを主人公にした「ロストワールド4」も良かった。
零さんの主観と客観では見え方がまったく違う!
5巻
ヤスミンが漫画を私怨の侮辱に使ってしまって後悔する22話が良い。こういうのが好き
ヤスミンて案外ツッコミ役でもあってほんとバランス型だ。
ロストワールドも相変わらずの面白さ。泣ける
6巻
一巻まるごと新入部員キャラの掘り下げに使うとは。
新キャラをどう見せるか、をメタに描いていく
それと並行してマンガ甲子園の予選編へ
1ページ漫画ってめっちゃむずいですね……
ロストワールドの続きがいちばん楽しみ!