「下請けの責任」

おはようございます。
公響サービス、代表のシンジです。

 下請けの責任はどこまであるのだろうか?この民事訴訟は個人的に目が離せない。この判例で、下請の中小企業の身のほどこし方が決まると思う。みなさんも、自分事として考えて頂ければと思う。思考の勉強だと思って、自分の意見を持って欲しい。

【事の経緯】
 山梨県のスーパーで販売されたツナ缶にゴキブリの残骸が紛れ込んでいたということだ。スーパーから届けを受けた、「はごろもフーズ」の調査にて、すぐに製造過程でゴキブリが混入したことを突き止め、購入した山梨県の女性には謝罪をした。しかし、他に混入した疑いはないとして、「はごろもフーズ」は事実の公表を行わなかった。
 ところが「はごろもフーズ」は、ブランドイメージが毀損(キソン)したとして、製造を委託していた下請け業者に、8億9,700万円の損害賠償請求をしたのだ。
 地裁の一審にて、下請け業者に1億3,000万円の支払いを命じた。裁判所は「はごろもフーズ」のブランドイメージが毀損した、という主張を認めことになる。その判決に不服として、下請け業者は高裁での二審にて再考してもらうよう、控訴(コウソ)をした。つまり、決着は高裁に持ち越しということになる。

【個人的所見】
 食品にゴキブリの混入というミスは、確かに食品なので、あってはならないことだ。しかし、人の行う仕事で、絶対的な間違いがないということはあり得ないと思う。
 原因が、機械が老築化しているにも関わらず、下請事業者がメンテナンスを怠った。もしくは設備投資を惜しんだ。というのであれば、下請事業者が悪いだろう。
 上記のような事実は記事では確認できないため、無かった前提で話を進めると、「はごろもフーズ」と半世紀も取引があるという下請け業者とのこと。本来、並々ならぬ関係のはず、訴訟にまでなるというのは異常状態だ。きっと「はごろもフーズ」側に下請法違反などがあるように思う。そうでなければ、50年も取引をしている信頼関係のある下請け業者を訴えるとは思えない。話し合いで解決しなかったということは、「はごろもフーズ」側に何か後ろめたさがあるように思う。
 虫の混入をした客に謝罪をした後、事実を公表しなかったのはまずいと思う。他に同じ様な缶詰があった場合、隠ぺいの責任は重いと思う。公表し、何事もなければその方が良いのではないか?自主回収をしたくないことは理解できるが、今回の下請け業者が製造した個数だけでも、追って回収をすべきだと思う。
 数年前、ツナ缶は王者の地位を追われ、首位の座をサバ缶に明け渡している。そのような背景から、「はごろもフーズ」の焦りが見えるように思える。下請けを叩いて業績回復を狙っていたのではなかろうか?と想像ができる。
 2018年、2019年と2022年の決算書を比較してみた。2018年は業績が良かった。ちょうどサバ缶にツナ缶が抜かれたのが2018年頃だと思う。2019年までは創業家の弟さんが社長だった。2019年も利益は出ているが、営業利益率は1%と雀の涙だ。そして、2019年に社長が姉に交代して現在に至っている。弟さんは体調不良とのことで、取締役も外れている。2022年までに設備投資がかなり行われ、有利子負債も増えている。しかし、営業利益率も3%に上がっている。しかし、現在の方が、粗利率が悪いのだ。下請けをいじめているような数字は見当たらない。粗利が低いのに営業利益が高くなっているのは、販売管理費の大幅低下だ。賃金を疑ったが、平均給与はむしろ上がっている。ということは、無駄な損金(経費)を何かはわからないが、かなりカットしたと思われる。経営的には厳しいが、決算書からは、悪いことをしているようには見えなかった。
 下請け業者の責任はどの範囲になるのか?当然、製造物責任はあるだろう。しかし、消費者に対しての責任は、「はごろもフーズ」というメーカーの商品であり、故意に虫を混入したわけではない下請事業者に8億9,700万円の損害賠償請求をする根拠が希薄だ。値段算出方法が不明。相手にダメージを与えるための手法に思える。弁護士費用は、訴えられた損害賠償金額に応じて、率で決められるため、この訴訟では両社の弁護士が大儲けすることは確実だ。
 下請け業者と「はごろもフーズ」との契約がどうなっていたのか?50年以上前だと、きちんとした契約がなかった可能性もあるが、法的にはそこを確かめたくなる部分だ。

【結論】
 本件の訴状(ソジョウ)を見ていないし、双方の主張もすべてはわからないので、はっきりとは言えません。実際にどの程度の損害があったかも不明です。しかし、食品メーカーである「はごろもフーズ」が販売している商品で、虫の混入という不具合を出しているということは、一般消費者目線では責任は「はごろもフーズ」にあります。それを、下請事業者のせいにするという行為は、経営者としての責任感が不足していると思う。
 ブランドイメージが毀損した、という訴訟なのですが、そもそも事実隠ぺいをしていることで、ブランドイメージが毀損したとは言えない。むしろ、今回の裁判で事実が露呈しており、事実を隠ぺいしていた経営判断ミスまでも露呈している。その責任は「はごろもフーズ」の現経営者にあり、ブランドイメージの毀損につながる行為を行ったのは「はごろもフーズ」だ。それを下請事業者のせいにしているのは解せない。
 本件のような訴訟で、下請事業者に責任能力を問われるのであれば、下請事業者は親事業者の協力など出来なくなる。それに、ブランド責任まですべて負わせるのであれば、「はごろもフーズ」というメーカーの存在価値がない。自分で自社のブランドを否定している行為に感じる。

 ただし、裁判所の判決では、「はごろもフーズ」が勝訴(ショウソ)しているので、何か報道されていない事実があるのかもしれません。損害賠償金額が、1億3,000万円になった根拠もわからない。
 本件は高裁に持ち越したため、半年ほど結果は出ないだろう。この案件を最高裁が取り上げるとは思わない。次が最後の決着だろう。相手の主張のスキを考え、責める武器を持っているのか否か?個人的には下請け業者に、勝って頂きたいと思っている。
みなさんはどう思われたでしょうか?

 いつも読んでいただき、ありがとうございます。本日も皆さんにとって良い一日でありますよう、祈っております。

シンジ

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