「ドン・ジョヴァンニ」

おはようございます。
公響サービス、代表のシンジです。

 今日は単なる私の趣味の話だ。私の好きなオペラについて書きたい。意味不明、興味なしの人はスルーされたし。
 ドン・ジョヴァンニとは、モーツァルトのオペラ「ドン・ジョヴァンニ」のことだ。私が最も好きなオペラだ。知らない方もおられるだろうからかいつまんであらすじを。
 貴族のドン・ジョヴァンニは、有名な女たらしでした。気にいる女は何人でも手を出しては、捨てていく。
 ある日、ドン・ジョヴァンニに心を奪われた女性の父親が、騎士長だったためドン・ジョヴァンニに決闘を申し込む。しかし、残念ながらドン・ジョヴァンニが勝って、父親の騎士長は死んでしまう。
 他にも、妻に手を出され、復讐を誓う他の貴族や新婚の妻に手を出された村人などが多く出てくる。男からは大変忌み嫌われるわけだ。ドン・ジョヴァンニの従者のレポレロは、主人が怖くて逃げることが出来ず、ぼやきながらもドン・ジョヴァンニに流されていく。
 結局、石像として現れた最初に殺された騎士長が亡霊としてドン・ジョヴァンニを地獄に引きずり下ろす。という荒唐無稽な内容だ。
 しかし、劇作家モーツァルトの演出と音楽は天才を極め、この平凡な非現実的な台本を、とてつもなく恐ろしい、しかも警句的なオペラに仕上げていることが秀逸だ。

 まず序曲がすごい。当時の序曲は、オペラが始まることを知らせるベルのような役割で、音楽が鳴り始めてから、客は席に着き始める。いまとは大違いだ。モーツァルトが一晩で書いたというのだから、まったく恐ろしい限りだ。
 最後の騎士長の場で使用する部分が全体のほぼ3分の1であり、モーツァルトには珍しい(レクイエムと同じ)ニ短調の荘厳な暗闇のせまるような音楽がゆっくりと進んでいく。後半は突然二長調に転調して、明るくモーツァルト的なスピード感のある曲調に変わる。その曲が終わるとすぐに、従者のレポレロがぼやきながら、おどけて登場する。その滑稽な雰囲気を音楽が特徴的に表現しており、ワーグナーの楽劇や映画音楽の先駆けと言えるのではないか。
 ドン・ジョヴァンニに復讐を誓っていた男達は、誓っているだけで、何も行動に出ず、女たちは捨てられても、心はドン・ジョヴァンニから離れず、まあ端役の人達は、自分の意志というものが欠如した人ばかりなのです。その結果が、自らに悲劇を招き、自分の配偶者を苦しめているということが分かっていない。男も女も。そんな現状に業を煮やした騎士長が、石像となってドン・ジョヴァンニへの復讐に来る。恐れるレポレロ。しかし、まったく動じず食卓に招くドン・ジョヴァンニ。やはり、悪いことをしていても、自分の意志がはっきりしている者は、ある程度、その場を支配できるということだ。
 しかし、とうとう石像となった騎士長に捕まり、その重さで地獄へと引きずり落とされていく。この「騎士長の場」の盛り上がりは、10分ほどだろうか?(20年前の記憶ですみません)騎士長と、ドン・ジョヴァンニと、レポレロのソロに、復讐を誓っていた者たちの合唱が伴奏となる素晴らしい場面だ。ここだけ抜き出しても、一つのソロ付き合唱曲として秀逸である。
 また、モーツァルト自身の作である「フィガロの結婚」の曲を使用する等、この頃には考えられないような曲にイメージ付けをした方法が取られている。いまでは曲が流れるだけで、ダースベイダーが現れる。と誰もがわかるようなことを、当時は行っていなかった。これもワーグナーが真似た方法だと思っている。
 レーザーディスクが動かなくなって20年見ていないが、まあよく覚えているものだ。10代の頃にはまった曲や作品は、一生忘れることはないのだろう?だからこそ、かけ算九九なども含め、脳が記憶しやすい時期に、ある程度の詰め込みは必要不可欠なのではないだろうか?
 正直、このオペラは主要登場人物が8人ほどいるのに、終始目立つのはドン・ジョヴァンニで2番目に目立つのがレポレロだ。最後は悪が滅ぼされるという、ハッピーエンドのような気もするが、それを行ったのが人ではないことや、誓っているだけで何も出来なかった夫婦たちが、そのまま上手くいく未来は見えない悲劇ともいえる。昨日の「悲劇」にも通じるが、自ら招いた悲劇だと思う。
 そういう意味では、良くも悪くも、ドン・ジョヴァンニのように、自分を貫いて生きる者の方が自分自身は幸せになれるのだろうと思う。だが更に、人は自分が幸せであることだけではダメなのだ、という示唆もある。自分以外の誰かを幸せに出来なければ、やはり良い人生にはならないのだろうと思う。約3時間のオペラだ。映画を見る気持ちで、一度ご覧あれ。240年ほど前に人々はこういう娯楽を楽しんでいたことを考えると、とても完成された娯楽が出来ていたと舌を巻くことだろう。

 いつも読んでいただき、ありがとうございます。本日も皆さんにとって良い一日でありますよう、祈っております。

シンジ

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