「黒字倒産」
おはようございます。
公響サービス、代表のシンジです。
経営をしていて恐ろしいのは、表面的な損益計算書での利益を追求して、黒字倒産することだと思う。特に製造業、卸売業ではありがちだ。気づいたときに冷や汗をかいても、もう遅い。黒字倒産のシステムを理解していない経営者が結構いることに驚かされるのは、上場企業の倒産の半数が黒字倒産である事実からうかがえる。
黒字倒産とは、損益計算書では利益が出ているのに、倒産に至ることをいう。「利益が出ているのになぜ倒産するの?」と思っている人は、企業が「倒産」するのがいつなのかを知らないのだろうと思う。企業は「現金」がなくなると倒産するのだ。借金の多さではない。しかも、決算とはある時期で閉めた過去の結果でしかない。お金は常に流れ続けており、支払うお金がなくなったときが倒産です。過去の帳簿が、例え1ヶ月前に黒字でも「現金」がなくなったときが倒産です。どれだけ資産を持っていても意味がありません。土地や建物など、すぐに現金化出来ないものは、債権者からすれば価値がありません。
利益は売上から売上原価を引くことから計算できます。売れていない原価、つまり在庫は差し引かれないのです。税務上の原価は「全部原価方式」であることが大前提です。全部原価方式は、生産量を増やすと、売上が増えていないのに、利益が増えるという欠点があります。税務署が税金を取りやすいシステムと言えますね。経理部では当然この計算が行われます。期首棚卸高+原材料費+外注費+その他経費-期末棚卸高=売上原価という式のせいです。(税務署提出資料とは別に社内で製造原価を直接原価方式で計算し直さなければ見せかけの利益にだまされます。税理士さんも行ってくれませんので、あてに出来るのは自分だけ)
つまり、販売見込み量よりも生産を増やして在庫を増やすと、差し引かれる売上原価が減って利益が増えるのです。経営者的には、社員が頑張って生産したら利益が増えたような錯覚に陥ってしまいます。東芝が行っていたように、損益計算書は経営的に操作することが可能です。貸借対照表は長期間かけて育てていくので、粉飾は難しい。(逆に長期視点で計画を立てなければ、不要な資産に押しつぶされる肥満体質のB/Sになってしまう)
しかも、売れていない物が増えるということは、支払いも増えていきます。当然現金が減っていきます。その後、在庫が古くなり陳腐化したことで販売できなくなれば、その分も損してしまいます。流行りや季節商品、賞味期限がある場合には、致命的ですよね。
また、法人税は税引き前利益に対して支払います。在庫を増やして利益を増やすと、法人税も多く払わなければなりません。税金は決して待ってはくれませんし、手形払いなどもできません。法人税は一括ではなく、毎月予定納税をしていきますので、それが増えれば毎月の必要現金額が増えてしまいます。消費税の支払いもあります。販売が伸びていないのに、在庫を増やすことで黒字化させて、買掛金は増えて、待ってくれない法人税が払えなく資金ショートを起こして倒産するのです。
在庫を作る時の支払いを、支払手形にしていると最悪です。手形は1日として待ってはくれません。信用取引です。税金なら税務署に相談をして少し猶予をもらえば、延滞金を払わずに待ってくれますが、手形は決まったその日に、口座にお金がなければ不渡りです。不渡りは半年の間に2回起こすと、即倒産です。中小企業は、支払手形は決して発行してはならないものです。(そもそも手形取引を無くすべきです。私は決して受け取らない)
在庫を増やすのは簡単ですが、減らすのは非常に困難です。在庫が減れば利益が減るのですから、利益が大きな年にしか行なえないのです。借金の返済も利益からしか支払えません(経費にはなりません)から、会社に現金はほとんど残らないと考えるのが正しい。会社の利益が出ると、自分の給与が増えると勘違いをしている従業員には、会社がお金を残せない仕組みを理解してもらう必要があります。経営者は、正しくない利益が出ることの怖さも知らなければなりません。
いつも読んでいただき、ありがとうございます。本日も皆さんにとって良い一日でありますよう、祈っております。
シンジ