「世論」
おはようございます。
公響サービス、代表のシンジです。
世論とは、世の中の論調のことをいう。政治家は世論を気にするものだが、経営者もしかりだ。世論とは異なる行為を行い、何か不具合が出ると、徹底的に叩かれる。それを恐れて、世論に合わせた方針を取ることもあるだろう。マスクの着用などが(私はほぼしないのだが)良い例だ。そして、その世論を扇動する者がいる。世論によって動く部分は、国によって異なる。
アメリカという国は世論を大切にしている。アメリカ国民が望むことを、政治家がくみ取り、政治家の活動は議会が監視している。官僚はそれに沿った実務を行う。だから、デモやスピーカーを持った個人が、とても有利になる。大統領でさえ、世論には逆らえない。そのため、テレビ討論や一流メディアへの露出は、とても重要かつ失敗が出来ないことになる。企業も同じだ。メディア対応を誤れば、どんな巨大企業でも世論から逃げることはできなくなる。そんな政治家や経営者向けに全米にはPR企業という企業が数千社もある。
日本も世論によって政策は動かされる。だが、その動きはとても遅い。しかも、人間の形をした世論は必ず排除される。特定の誰かの言葉は、納得しても聞く者はいない。政治家が決めた、という既成事実がなければ動かない国だ。だから日本の場合、全体的な雰囲気が醸成されなければ、事は動かぬ。デモなどしても1mmも動くことはない。日本は同調圧力という世論にだけ敏感な国だ。だからPR企業は1社もないということだ。
アメリカのPR企業は、記者会見のセッティングやアポイントメント取りから、スピーチ原稿まで、ありとあらゆることを用意する。政治家の対応では、他国の官僚や大使、場合によっては大臣にまで連絡を取る。
日本ではその役割をすべて官僚が行っている。そして、その対応のまずさは世界でも有名だ。より良いタイミングと良い発表を、効果的に伝える技術などが、日本の官僚は著しく低い。そもそもジュークの一つも言えない時点でアウトだ。欧米人はジョークの言えない者を心底信用することはない。日本の官僚の、メディア対応のまずさも目に余るものがある。世論を気にせず、政治家の顔色ばかり見ている時点で、アウトだ。
だが、PR企業の悪い点もある。湾岸戦争で米国の参戦の決め手となったナイラという少女に、米議会での偽証をさせたのはPR企業だ。その偽りの言葉に、世論は流され戦争を始めるという、誤ったことまで行われている。
ボスニアヘルツェゴビナとセルビアの民族紛争もそうだ。セルビア人を「黒」と決めつけ、ボスニアヘルツェゴビナのモスレム人は被害者というイメージ戦略も、アメリカのPR企業が仕掛けたものだ。結局NATOの空爆により、ボスニアヘルツェゴビナは豊かになり、セルビアは国連から追放され、経済制裁で国民は貧しさに苦しんでいる。そこに「白」「黒」は必要だったのだろうか?これも、世論が動かした歴史の汚点の一つだ。
1995年まで続いた内戦で、バルカン半島は疲弊した。ちょうど私がウィーンに住んでいた1997年頃は、旧ユーゴスラビアからの難民が多かった。片腕のクロアチア人。モスレム人。セルビア人。色々な人に会った。世論が間違った方向に行った時、戦争は起こるものなのだ。「戦争広告代理店」という本を読んで知った。NHKの記者が書いており、NHKスペシャルにもなったそうだ。
日本のように世論に力がない国は、世界でも力のない国だ。PR企業が育たない日本はPR戦略(情報戦争)で大きく後れを取っている。企業の不祥事やシステム不具合など多くあるが、たいていはその後の記者会見のやり方がまずい。保身に走った発言や他責にしたことで、企業存続や経営者の進退に関わる重大なミスをする人が多い。
政府や官僚も同様だ。不用意な発言をして、あとで謝罪をしたところで、付いたイメージは払拭できない。日本の官僚は御しやすく、民間と官僚を転職で行き来するアメリカ人には到底勝てない。日本の外交の下手さは英語の問題よりも、PR(パブリック・リレーション)戦略がないことと、精神的な弱さにあると思う。そんな日本を変えるのは、やはり経営者だと思っている。
私は、日本を変えるのは、企業経営者の考え方次第だと思っている。従業員への影響、社会経済への影響。それらを勘案すると、企業経営者の集団
(経団連はダメ)が、世論を動かして行ければ、良い国づくりができるのではないかと思っている。PR戦略を学んで、「世論」に力をつけ、情報戦争に勝つ必要があると思っている。
これを書いた後、参議院選挙2020が公示された。巨大政党もあるなか、PR戦略の巧拙(コウセツ)が大分違うと感じた。党の中で統一されてもいない。何が言いたいかもはっきりしない候補も多い。私は、政策が一目でわからない政党には票を入れる気はない。我が国のPR戦略の低さが、際立って理解できた。
いつも読んでいただき、ありがとうございます。本日も皆さんにとって良い一日でありますよう、祈っております。
シンジ