「クーデター」
おはようございます。
公響サービス、代表のシンジです。
私は父の会社から愛人の専務を追い出そうと必死だった。内部告発が税務署に裏切られ失敗し、刑事告訴も失敗し、残された方法はこれしかなかった。「クーデター」。
もう、私は後戻りできる状況じゃなかったのだ。給与も下げられ、取締役を解任され、何かにつけて、私のせいにされた。逃げ出すことも出来ず、自分が壊れるか、追い出せるか?精神的にもギリギリのところにいた。ここまで来たら、もうなんだってやってやる!人を雇ってその女を殺せないか?まで考えた。まあ、人を殺すのは簡単じゃない。雇うったって、どんな人で、どこにいる。想像することは簡単だ。でも実際に行うことは、とても難しい。
そこで私は従業員全員で会社を辞めてしまうという方法を考えたのだ。その後、全員である必要はないが、ある程度の人数で退職金を資本金にして共同出資で会社を設立しようと考えたわけだ。そうすれば、会社からの横領はもうできないし、新しい会社で雇用も守れることになる。
業務上横領は、民法の規定で500万円以下の罰金、もしくは5年以下の懲役、どちらか、もしくは併科(両方)される。これは従業員の場合だ。100万円の横領でも、1億円の横領でもこの範囲の罰金とは、あまりに罰則が緩いと思う。
取締役が横領をするということは、会社の利益を上げなければならない役目と「利益相反」するため、会社法第960条の特別背任になる可能性が高い。元日産のカルロス・ゴーン被告が問われている罪だ。1,000万円以下の罰金、もしくは10年以下の懲役、どちらか、もしくは併科される。という2倍の罰則にはなるが、取締役が10億円横領しても、1,000万円の罰金とは、緩すぎると思う。
私は父と愛人がいない土曜日に、全従業員を集めることにした。7割ほどが集まってくれた。そこで、横領の事実を説明し、そのうえで一緒に新しい会社を創る提案まで一気に説明をした。そのうえで、皆の意見を聞いた。
あまりの内容に、みな驚いていたうえに、混乱もしていた。薄々気づいてはいたが、ここまでとは!という人もいた。色々な意見があった。
「横領していて、自分達がダシにつかわれていたのは許せないけれど、だからと言って勝てないでしょ?」
「横領していても会社は潰れなかったんだから、いまのままで良いのではないか?」
「そんな会社が多いのではないか?横領をやめさせても、オレらの給与は上がらないでしょ?」
「お客さんに何て言うのか?会社創っても仕事くれないんじゃないの?」「こんな会社に入社しなければ良かった」
「仕事ができない自分を雇ってくれた社長を裏切れません」こう言ってくれている人に限って、父からは嫌われている。残念なことだ。
多くの人が消極的でネガティブな意見を言った。将来の不安が更に増しただけだと、逆に責められた。多くの人は、知りたくない事実だった。ということだ。15人程集まってくれた中で、私の意見に賛同してくれた積極論者はたった一人だった。
70代の父と愛人。その後の年齢が私にまで30歳飛ぶ会社だ。皆30代40代の後輩たちだ。皆まだ子供が小さい。不安なのもよくわかる。だが、現状維持をしていても、どのみち父が10年後に死ねば、会社は維持できない可能性もある。なぜなら、株価が高くて、誰も買えない。相続税が高くて誰も払えない。普通に行けば、会社をつぶして、土地建物を売って、得た金で相続税を払って、残りは親族で山分け。ちょっとだけなら残るでしょう。というパターンが普通です。雇用なんて守らない。一般的に会社に関わっていない親族は、数百万円もらえれば、それだけで満足してしまう方が多い。そんなものです。会社の維持になど興味は全くないのです。
そんな事情など考えるまでもなく、社長が死んでも会社は存続し続け、自分の給与は下がらないだろう?そう思っているサラリーマンが大多数であることを知った。そして、その認識を変えるのに、犯罪の証拠では不十分であることもわかった。私の母や兄が臭い物にフタをしたように、事実から目を背ける従業員達が多かった。
人は弱い。現状がいつまでも続けばいいな。そういう希望的観測に乗ってしまう。そして、事実に向き合うことよりも、自分で作り上げた希望的観測を、自分が最も強く信じてしまうのだ。だから、人の忠告は聞こうとしない。自分が変化しなければならない未来は、ウソでも本当でも、信じる気はない。考えたくもない、ということだ。
こうして人望のない私のクーデター計画は一瞬にして「とん挫」したわけだ。もはや私には、打つ手はなくなったわけだが、逆にこのような従業員達をどこまでも守って行こうという気も、かなり萎えたことも事実だ。「泥船に乗っていたければ、沈むまでどうぞ」という気持ちが大きく芽生えた。だからこそ、私は父の会社を辞め、自分の会社を創る気になったのかもしれない。ある意味感謝だ。だって、私は一人になって、とても自由でとても楽しく生活できるようになったのだから。それでも、いつまでも一人でいてはいけないと思っている。以前に書いたように、一人で個人事業主として仕事をしていれば、私は一人で年間2,000万円以上を売り上げられる。一人悠々自適な生活も可能だ。だが、その気はないから、最初から株式会社にして、自分のお金と会社のお金は完全に分けている。なぜなら、「公に響く仕事をすることと、永代雇用」という理念を成し遂げるためだ。
いま借りているシェアオフィスの個室は、市の施設のため家賃が1万8,500円と安い。通信費、水道光熱費も込みだ。だが、ここにいつまでも甘えることはできない。ここを卒業できず、いつまでも幽霊のようにへばりついている個人事業主を見ると、ああはなりたくないと、強く思う。9月より従業員がもう一人増えるのを機に、8月より新事務所を借りる契約をした。本当の意味での独り立ちはこれからと言えるだろう。
いまのところ、クーデターの失敗は苦い過去の話だ。この話をいつでも披露できる笑い話に出来るか?言いたくない過去の傷にするかは、今後の私次第というわけだ。そのためには、父の会社より大きな会社にしなければならないと思っている。こうしてみなさんに告白することで、有言実行を目指したいと思っている。
いつも読んでいただき、ありがとうございます。本日も皆さんにとって良い一日でありますよう、祈っております。
シンジ