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日本に大きな影響を与えた医薬品
みなさん、こんにちは~!
数ある記事の中から、ご覧いただきありがとうございます!新薬開発/薬剤師のからすまです。今日は「日本に大きな影響を与えた医薬品」について解説します!
<アリナミン>
販売会社:武田薬品工業株式会社
成分:ビタミンB誘導体であるフルスルチアミンをはじめ、たくさんのビタミンが含有
効果:疲労の回復や予防
まず最初は、CMでもお馴染みの「アリナミン」です。
かつて明治/大正時代「脚気」という病気が、毎年1-2万人の死者がでる国民病でした。ただ、脚気の原因解明には時間がかかりましたが、鈴木梅太郎博士が米ぬかから、脚気の予防因子を分離させ、後にビタミンB1(チアミン)と名づけられました。さらに研究が進み、ビタミンB1誘導体が開発され、アリナミンという薬が誕生しました。アリナミンの流通とともに、国民病だった脚気は激減し、今となっては脚気を知らない方も大勢いると思います。普段何気にCMしているアリナミンは、日本の医療にとってこのような重要なインパクトがありました。
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<初の抗PD-1抗体のオブジーボ(免疫チェックポイント阻害薬)>
販売会社:小野薬品工業
成分名:ニボルマブ(商品名:オブジーボ)
作用機序:癌細胞は、免疫細胞の働きを抑制します。その際、免疫細胞にあるPD-1という抗体が関わっており、ニボルマブはその抗体に抑制的に働きます。よって、癌細胞による免疫細胞へのブレーキは解除され、免疫細胞が癌細胞を攻撃できるようになります。
適応:悪性黒色腫、非小細胞性肺がん、胃がん、頭頚部がん、食道がん、など多数
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「ニボルマブ」は色んな意味合いで日本の医療業界を新しい風をもたらしました。
まず、免疫チェックポイント阻害の概念(PD-1抗体の機能)は、日本人の本庶佑先生により解明され、その偉大さから2018年にノーベル医学生理学賞を受賞しています。そして、世界で最初に免疫チェックポイント阻害薬として承認されたのが、この「ニボルマブ」です。また、既存薬と比べて、有効性も高い場合が多く、期待値の高い薬剤でした。(有効性については、別記事で解説します)
「ニボルマブ」が最初に適応を取得したのは、2014年に「悪性黒色腫」でした。悪性黒色腫は、メラノーマともいい、皮膚がんの一つです。患者数は日本で約5000人程と多くありません。2014年「ニボルマブ」は、非常に高額な薬価がついていました。(100mg製剤で1回72万) 小野薬品は、次々と異なる癌種でも承認を取得し、「非小細胞性肺がん」という非常に患者数が多い疾患で適応を取得しました。日本では、多くの人が医療費は3割負担ですみますが、残りの7割は社会保障費用で支払われています。「ニボルマブ」が現在の薬価で多くの患者さんに使用されると、日本の医療財政が破綻してしまうことが社会問題になりました。いろんな議論の末、「ニボルマブ」の薬価は、最初の価格と比べて80%近く低下しました。(小野薬品にとっては、悲しい話ですよね。。。)
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本日も読んで頂き、ありがとうございました!また、次回もよろしくお願いします!
からすま